2014年1月25日土曜日

【光生命・異分野・産学官】革新的光技術「発電法」で地域社会からイノベーション創出を探る フューチャーセッションin瀬戸内 開催

2014年1月20日(月)広島県福山市

岡山大学の研究力における強みのひとつ、「光技術分野」をさらに強化し、地域活性につなげようと、岡山大学大学院自然科学研究科機能電子物理学研究室の池田直教授らは、1月20日、広島県福山市の田島・横島などを視察し、住民や企業関係者らと「フューチャーセッション(Future Session) in 瀬戸内」を開催しました。

日照が良く温暖な気候に恵まれている瀬戸内地方は、太陽発電を行う場として最適で、瀬戸内海の潮流は水力発電の利用にも有望な内海です。こうした特性を生かした地域活性策を考えようと、光技術である「発電法」に着目した本セッションを開催しました。

池田教授と狩野旬講師(同研究室)らが開発を進める酸化鉄化合物「グリーンフェライト」を用いた革新的発電法や、地域の移動を簡単で効率的に行える移動用電気機器を開発する、同研究科動力熱工学研究室の河原伸幸准教授らの「地域モビリティー構築プロジェクト」、大学院環境生命科学研究科環境振動エネルギー学研究室の比江島慎二准教授らの振り子の流力振動を利用した水流発電法(Hydro-VENUS)を紹介しました。研究者や地元住民、企業関係者ら約20人が参加し、岡山大学の優れた研究力を地域の活性につなげられないか、意見交換しました。
 
岡山大学では、「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」として、持てる研究力を地域に還元する取り組みを、随時行っていく予定です。また、文部科学省が来年度も実施予定の大型産学官連携事業「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」などを見据え、地域からのさまざまな提案を受け入れて、共に革新的イノベーション創出を目指すため行動しています。


※酸化鉄太陽電池技術研究組合(プロジェクトリーダー 池田直教授):http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id10.html
※振り子を用いた潮流発電法(比江島准教授):http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~hiejima/research/research.html

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会場となった瀬戸内。瀬戸内の資源を研究力で活かすには?

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対話前に現地を視察し、研究実装のイメージを練る参加者ら
 
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対話を進める参加者ら
 
 
国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

【情報発信】「高井反応」の高井和彦教授 「第66回日本化学会賞」受賞

2014年1月7日(火)

岡山大学大学院自然科学研究科の高井和彦教授が2014年1月7日、「第66回日本化学会賞」に選ばれました。

日本化学会賞は、公益社団法人日本化学会が、化学の基礎または応用に関する貴重な研究を行い、その業績が特に優秀な研究者を表彰するもので、高井教授は、「4-7族金属の特性を活かした有機合成反応の開拓」で功績を挙げたことが高く評価されました。

化学は分子を扱う学問ですが、なかでも有機分子は、複雑な炭素骨格と多くの官能基をもつ多様な化合物が知られています。高井教授は、そうした複雑な分子を合成するのに役立つ合成反応(炭素-炭素結合を形成する反応)を開発しました。チタン、クロムなどの金属を用いる反応で、世界中で数多くの天然物の全合成に使われ、「高井反応」や「NHK反応」として知られています。また、高井教授は、レニウムやマンガンの化合物を触媒として用いる新しい有機合成反応を開発し、それらを用いる有機機能性材料の合成も行っています。

また、高井教授は、
「岡山大学エネルギー環境新素材拠点」(拠点長:久保園芳博・同大学院自然科学研究科教授)の主任研究員を務めており、今回の受賞対象には、同拠点の他分野研究者らとの異分野融合研究活動の成果も含まれており、「総合大学:岡山大学」の強みを活かした異分野融合研究の成果のひとつとも言えます。

岡山大学は2013年8月に、
文部科学省の「研究大学強化促進事業」に採択されており、当事業の岡山大学における研究拠点である研究特区「グローバル最先端異分野融合研究機構」(G研究機構)では、研究の核(コア)として、「超伝導・有機エレクトロニクス研究コア」と「生体光変換システム研究コア」などが設けられています。

今後も高井教授らは、これらのコアを中心に本学が世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」となるために、積極的な研究活動を進めていきます。

第66回日本化学会賞:
http://www.chemistry.or.jp/news/information/H25prizelist.html
表彰式は3月28日、名古屋大学東山キャンパスで開催される予定で、前日の27日には、高井教授の受賞講演が行われる予定です。

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           日本化学会賞の受賞が決まった高井和彦教授

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

2014年1月24日金曜日

【産学官・異分野】イノベーションの未来を拓く処方箋7 ーシリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出現場(5.ドイツIndustry4.0の挑戦)ー

「岡山大学シーズ・ニーズ創出強化イノベーション対話プログラム2013」では、事業の名前が意味するように「イノベーション(Innovation)」がひとつの“鍵”となっています。しかし、「イノベーション」とはどのようなものでしょうか。「イノベーション」という言葉をヨーゼフ・シュンペーターが形作ってから1世紀が経過しましたが、その時間の中でイノベーションを創出する環境はさまざまに入れ替わりました。その環境の中でイノベーションの“鍵”となるキーワードついて対話を行う会「イノベーションの未来を拓く処方箋」(第7回)を本学津島キャンパスで開催しました。

話題提供者は、本事業実施責任者である岡山大学学長特命(研究担当)・URAの佐藤法仁が務めました。今回の対話は、「シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出現場(5.ドイツIndustry4.0の挑戦)」と題して行われました。

本対話のその1では「シリコンバレーのハブ機能」と題して、カリフォルニア州の北部ベイエリアにあるシリコンバレー(Silicon Valley)の取組について紹介し、その2では「シリコンビーチ台頭の兆し」と題して、南カリフォルニアのロサンゼルス周辺としたシリコンビーチ(Silicon Beach)のイノベーション創出環境について、その3では「イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動」と題して、中東に位置するイスラエルのイノベーション創出活動について、その4では、「ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦」と題してのアメリカ東海岸の大都市ニューヨークの活動について紹介。今回はEU圏の中核国に成長したドイツに注目し、「ドイツIndustry4.0の挑戦」と題しての会となりました。

話題提供者の佐藤法仁URAは、EU圏で大規模経済国として頭角を出し始めたドイツについて、2007年には世界的な金融危機の風が吹いたが、それからいち早く立ち直りを見せ、現在は2007年以前の経済状態に戻りつつある点をドイツ企業の時価総額データなどから紹介。特にドイツは、SAPシーメンスBASFバイエルンメルクなどの古くからドイツ経済を支えてきた老舗大企業が頑張っている点。またそれだけではなく、BMWダイムラーフォルクスワーゲンなど自動車産業や機械産業を支えている関連中小企業の台頭が経済の発展を下支えしていること。さらには数年前から議論を重ねてきた新産業創出の足掛かりとして2013年に「Industry4.0」(ドイツ語:Industrie4.0)を打ち出した点などを紹介しました。

佐藤URAは、「Industry4.0(インダストリー4.0)を日本語でどのように訳すかは定まっていないように、日本ではあまり知られていない。しかし紹介したように、ドイツのこの取組はこれまでにない新産業、イノベーションを起こそうとするドイツ政府と産業界の意気込だけではない、戦略に乗っ取った計画が見て取れる。2007年のサブプライムローン問題、翌年のリーマンショックなどの悪材料がある中であえいでいた経済を立て直しつつある中で、“更なる一手”としてIndustry4.0は重要なイノベーション政策であり、産業界へのカンフル剤にもなると考える。具体的にはインターネットなどのデジタルを介して、ヒトとモノを深く結びつけることで、今までにないイノベーションを興すことや、インターネットで集積されたデータを活用して迅速・新規の産業を創出することになる。特にデータについては、膨大なものとなるため、その処理技術やデータを扱える人材に対するマーケット拡大もかなり期待できる。この流れは前回の対話内容のアメリカ・ニューヨークでのeコマースの流れにも見れるように、2014年以降も急速に世界の大潮流となりつつある。今後、わが国もIndustry4.0の動向を見据えつつ、データの大波にうまく乗れる取組が期待される。それがイノベーション創出にも大きく役立つのではないか」と話し、EU圏をさらに牽引しつつあるドイツの国を挙げてのイノベーション創出の取組について、対話を行いました。

「Industry4.0」は、1.0が蒸気機関車などが発明された「第一次産業革命」を、2.0が電力で産業のオートメション化が飛躍的に進んだ「第二次産業革命」を、3.0は近年のコンピューターをはじめとするデジタルテクノロジーが飛躍的に発達した「第三次産業革命」の次に来るものとして「4.0」とされています。1.0から3.0の期間と3.0から4.0の期間は短くなっており、それだけ社会の流れが加速しているとも言えるかもしれません。そのような潮流の中で大学が乗り遅れないためには何が必要なのかを本対話でも深めました。


<過去開催>

第1回 オープンイノベーション(Open Innovation) 大学と企業の関係:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/09/open-innovation.html

第2回 大学発ベンチャーの“企業”としての自立化:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_25.html
第3回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(1.シリコンバレーのハブ機能):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_30.html
第4回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(2.シリコンビーチ台頭の兆し):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html
第5回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/3.html
第6回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(4.ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/4.html

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html