岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)の角拓人大学院生(当時)と宮竹貴久教授らの共同研究グループは、チョウ目の昆虫であるヤマトシジミに感染する昆虫共生細菌・ボルバキアの感染密度の季節変動を調べ、昆虫の細菌感染密度に季節変化があることを世界で初めて発見しました。本研究成果は4月12日米国東部時間午後2時(日本時間13日午前3時)、米国のオンラインジャーナル「 PLOS ONE」に掲載されます。
ボルバキアは、チョウや蚊などの昆虫類に広く感染し、宿主と共生しています。また、ボルバキアはウイルスの増殖を抑制させることが明らかになっており、最近はデング熱を媒介する蚊などの害虫集団に人為的にボルバキアを感染させて、デング熱を制御する試みが行われています。
本研究では、日本各地の生息地から異なる季節にヤマトシジミの成虫を採集し、感染したボルバキアの感染密度を比較。初夏には細菌の感染密度が高く、秋には感染密度が低下することを発見しました。本研究成果は、共生細菌を利用した害虫制御の効率化につながる画期的な発見と言えます。
<論文情報等>
掲載誌: PLOS ONE論文名:Wolbachia density changes seasonally amongst populations of the pale grass blue butterfly, Zizeeria maha (Lepidoptera: Lycaenidae)T著者:Takuto Sumi・Kazuki Miura・Takahisa Miyatake*DOI:10.1371/journal.pone.0175373<詳しい研究内容について>
昆虫の細菌感染密度に季節性 世界に先駆けて発見 <本件お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
教授 宮竹貴久
(電話番号) 086-251-8339
(FAX番号) 086-251-8388
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id459.html
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)の研究グループは、脳内出血による脳組織の障害メカニズムに、血腫によって神経細胞から放出されるタンパク質High Mobility Group Box-1 (HMGB1)が関与することを明らかにしました。本研究成果は4月10日、英国の科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されます。
脳卒中には3つのタイプとして、脳梗塞、クモ膜下出血と脳内出血があります。本研究グループは、ラットで作製された脳内出血モデルで、HMGB1の働きに注目。神経細胞から放出される細胞核内タンパク質HMGB1が、血液脳関門*の破綻と炎症性サイトカイン*産生の誘導に働くことを明らかにしました。また、HMGB1の働きを中和する抗HMGB1抗体は、HMGB1の放出を抑制するとともに抗炎症作用を発揮し、その結果、神経細胞死と麻痺症状を抑えることがわかりました。さらに、抗HMGB1抗体の治療開始を脳内出血後3時間で開始しても一定の効果があることも確認されました。
脳内出血は、脳卒中の中でも死亡率が高く、後遺症も重篤です。これまで、脳内出血による神経障害を抑制する薬物は開発されておらず、抗HMGB1抗体による治療法は実用化に向けた研究が期待されます。
<発表論文情報>
タイトル:Anti-high mobility group box-1 (HMGB1) antibody inhibits hemorrhage-induced brain injury and improved neurological deficits in rats.
著 者:Wang, D., Liu, K., Wake, H., Teshigawara, K., Mori, S., and Nishibori, M.
掲 載 誌:Scientific Reports
<詳しい研究内容について>
薬物治療がなかった急性期の脳内出血に治療薬の可能性 脳卒中の3タイプ全てにタンパク質HMGB1の関与を解明 <本件お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
薬理学 教授 西堀 正洋
(電話番号)086-235-7140
(FAX番号)086-235-7140
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id458.html