岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)の研究グループは、脳内出血による脳組織の障害メカニズムに、血腫によって神経細胞から放出されるタンパク質High Mobility Group Box-1 (HMGB1)が関与することを明らかにしました。本研究成果は4月10日、英国の科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されます。
脳卒中には3つのタイプとして、脳梗塞、クモ膜下出血と脳内出血があります。本研究グループは、ラットで作製された脳内出血モデルで、HMGB1の働きに注目。神経細胞から放出される細胞核内タンパク質HMGB1が、血液脳関門*の破綻と炎症性サイトカイン*産生の誘導に働くことを明らかにしました。また、HMGB1の働きを中和する抗HMGB1抗体は、HMGB1の放出を抑制するとともに抗炎症作用を発揮し、その結果、神経細胞死と麻痺症状を抑えることがわかりました。さらに、抗HMGB1抗体の治療開始を脳内出血後3時間で開始しても一定の効果があることも確認されました。
脳内出血は、脳卒中の中でも死亡率が高く、後遺症も重篤です。これまで、脳内出血による神経障害を抑制する薬物は開発されておらず、抗HMGB1抗体による治療法は実用化に向けた研究が期待されます。
<発表論文情報>
タイトル:Anti-high mobility group box-1 (HMGB1) antibody inhibits hemorrhage-induced brain injury and improved neurological deficits in rats.
著 者:Wang, D., Liu, K., Wake, H., Teshigawara, K., Mori, S., and Nishibori, M.
掲 載 誌:Scientific Reports
<詳しい研究内容について>
薬物治療がなかった急性期の脳内出血に治療薬の可能性 脳卒中の3タイプ全てにタンパク質HMGB1の関与を解明
<本件お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
薬理学 教授 西堀 正洋
(電話番号)086-235-7140
(FAX番号)086-235-7140
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id458.html
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