2017年12月2日土曜日

【情報発信】1兆分の1秒の時間分解能で液晶分子の動画を観測 -新しい測定・解析手法の確立-

ディスプレイなど非常に広く産業利用されている液晶分子について、これまでの概念を覆す新しい計測・解析手法を用いて、液晶分子に紫外線光を当て分子が動く様子を直接観察することに世界で初めて、岡山大学大学院自然科学研究科(工)の羽田真毅助教、林靖彦教授、京都大学大学院理学研究科の齊藤尚平准教授、筑波大学計算科学研究センターの重田育照教授、九州大学大学院理学研究院の恩田健教授らが成功しました。

これまで、液晶分子の立体構造を決定し、その機能の元となる分子運動を理解することで、より高精度かつ広範囲な液晶材料の開発が可能になると期待されていました。しかし、液晶中の炭素鎖に埋もれた分子骨格の高速な動的挙動を直接的に構造解析する手法は全く存在せず、液晶分子の運動を解析する新しい手法の確立が求められてきました。


本共同研究グループによる、時間分解電子線回折法と時間分解赤外分光法を組み合わせた液晶分子の構造解析と動的挙動の直接観察は、これまでの概念を覆す新しい計測・解析手法です。また、光照射後1~100ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)程度の時間スケールにおいて発現する励起状態芳香族性を観測し、理論計算でその妥当性を確認したことは、この物質を基にした光機能性分子材料の設計方針に重要な知見を与えるものになります。

本研究手法は、光応答性・機能性の液晶分子やソフトマテリアルの構造決定を革新する測定・解析手法として応用展開が期待されます。
本研究成果は10月16日、米国化学会雑誌「Journal of American Chemical Society」誌で公開されました。
図1 本研究で用いた光応答性液晶分子の構造
基底状態のπ-シクロオクタテトラエン分子はサドル型の構造をしています。青色は光を吸収して応答を起こすメソゲンを示しており、オレンジ色は光応答を生じない運動性や柔軟性に寄与する炭素鎖部分を示しています。
図2 岡山大学で開発した時間分解電子線回折装置
図3 九州大学で開発した時間分解赤外分光装
図4 明らかとなった液晶分子の構造変化


<論文情報等>
論文名:Structural Monitoring of the Onset of Excited-State Aromaticity in a Liquid Crystal Phase
「液晶相における励起状態芳香族性の発現過程の構造解析」
掲載誌: Journal of the American Chemical Society 著 者:Masaki Hada*, Shohei Saito*, Sei’ichi Tanaka, Ryuma Sato, Masahiko Yoshimura,
Kazuhiro Mouri, Kyohei Matsuo, Shigehiro Yamaguchi, Mitsuo Hara, Yasuhiko Hayashi,
Fynn Röhricht, Rainer Herges, Yasuteru Shigeta*, Ken Onda*, R. J. Dwayne Miller
D O I:10.1021/jacs.7b08021
発表論文はこちらからご確認いただけます。

<詳しい研究内容について>
1兆分の1秒の時間分解能で液晶分子の動画を観測
-新しい測定・解析手法の確立-



<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(工)
助教 羽田 真毅
(電話番号)086-251-8133
(FAX番号)086-251-8110

http://www.geocities.jp/yhayashi_okayamauniv/

https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id512.html

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