2014年1月25日土曜日

【情報発信】「高井反応」の高井和彦教授 「第66回日本化学会賞」受賞

2014年1月7日(火)

岡山大学大学院自然科学研究科の高井和彦教授が2014年1月7日、「第66回日本化学会賞」に選ばれました。

日本化学会賞は、公益社団法人日本化学会が、化学の基礎または応用に関する貴重な研究を行い、その業績が特に優秀な研究者を表彰するもので、高井教授は、「4-7族金属の特性を活かした有機合成反応の開拓」で功績を挙げたことが高く評価されました。

化学は分子を扱う学問ですが、なかでも有機分子は、複雑な炭素骨格と多くの官能基をもつ多様な化合物が知られています。高井教授は、そうした複雑な分子を合成するのに役立つ合成反応(炭素-炭素結合を形成する反応)を開発しました。チタン、クロムなどの金属を用いる反応で、世界中で数多くの天然物の全合成に使われ、「高井反応」や「NHK反応」として知られています。また、高井教授は、レニウムやマンガンの化合物を触媒として用いる新しい有機合成反応を開発し、それらを用いる有機機能性材料の合成も行っています。

また、高井教授は、
「岡山大学エネルギー環境新素材拠点」(拠点長:久保園芳博・同大学院自然科学研究科教授)の主任研究員を務めており、今回の受賞対象には、同拠点の他分野研究者らとの異分野融合研究活動の成果も含まれており、「総合大学:岡山大学」の強みを活かした異分野融合研究の成果のひとつとも言えます。

岡山大学は2013年8月に、
文部科学省の「研究大学強化促進事業」に採択されており、当事業の岡山大学における研究拠点である研究特区「グローバル最先端異分野融合研究機構」(G研究機構)では、研究の核(コア)として、「超伝導・有機エレクトロニクス研究コア」と「生体光変換システム研究コア」などが設けられています。

今後も高井教授らは、これらのコアを中心に本学が世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」となるために、積極的な研究活動を進めていきます。

第66回日本化学会賞:
http://www.chemistry.or.jp/news/information/H25prizelist.html
表彰式は3月28日、名古屋大学東山キャンパスで開催される予定で、前日の27日には、高井教授の受賞講演が行われる予定です。

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           日本化学会賞の受賞が決まった高井和彦教授

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

2014年1月24日金曜日

【産学官・異分野】イノベーションの未来を拓く処方箋7 ーシリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出現場(5.ドイツIndustry4.0の挑戦)ー

「岡山大学シーズ・ニーズ創出強化イノベーション対話プログラム2013」では、事業の名前が意味するように「イノベーション(Innovation)」がひとつの“鍵”となっています。しかし、「イノベーション」とはどのようなものでしょうか。「イノベーション」という言葉をヨーゼフ・シュンペーターが形作ってから1世紀が経過しましたが、その時間の中でイノベーションを創出する環境はさまざまに入れ替わりました。その環境の中でイノベーションの“鍵”となるキーワードついて対話を行う会「イノベーションの未来を拓く処方箋」(第7回)を本学津島キャンパスで開催しました。

話題提供者は、本事業実施責任者である岡山大学学長特命(研究担当)・URAの佐藤法仁が務めました。今回の対話は、「シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出現場(5.ドイツIndustry4.0の挑戦)」と題して行われました。

本対話のその1では「シリコンバレーのハブ機能」と題して、カリフォルニア州の北部ベイエリアにあるシリコンバレー(Silicon Valley)の取組について紹介し、その2では「シリコンビーチ台頭の兆し」と題して、南カリフォルニアのロサンゼルス周辺としたシリコンビーチ(Silicon Beach)のイノベーション創出環境について、その3では「イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動」と題して、中東に位置するイスラエルのイノベーション創出活動について、その4では、「ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦」と題してのアメリカ東海岸の大都市ニューヨークの活動について紹介。今回はEU圏の中核国に成長したドイツに注目し、「ドイツIndustry4.0の挑戦」と題しての会となりました。

話題提供者の佐藤法仁URAは、EU圏で大規模経済国として頭角を出し始めたドイツについて、2007年には世界的な金融危機の風が吹いたが、それからいち早く立ち直りを見せ、現在は2007年以前の経済状態に戻りつつある点をドイツ企業の時価総額データなどから紹介。特にドイツは、SAPシーメンスBASFバイエルンメルクなどの古くからドイツ経済を支えてきた老舗大企業が頑張っている点。またそれだけではなく、BMWダイムラーフォルクスワーゲンなど自動車産業や機械産業を支えている関連中小企業の台頭が経済の発展を下支えしていること。さらには数年前から議論を重ねてきた新産業創出の足掛かりとして2013年に「Industry4.0」(ドイツ語:Industrie4.0)を打ち出した点などを紹介しました。

佐藤URAは、「Industry4.0(インダストリー4.0)を日本語でどのように訳すかは定まっていないように、日本ではあまり知られていない。しかし紹介したように、ドイツのこの取組はこれまでにない新産業、イノベーションを起こそうとするドイツ政府と産業界の意気込だけではない、戦略に乗っ取った計画が見て取れる。2007年のサブプライムローン問題、翌年のリーマンショックなどの悪材料がある中であえいでいた経済を立て直しつつある中で、“更なる一手”としてIndustry4.0は重要なイノベーション政策であり、産業界へのカンフル剤にもなると考える。具体的にはインターネットなどのデジタルを介して、ヒトとモノを深く結びつけることで、今までにないイノベーションを興すことや、インターネットで集積されたデータを活用して迅速・新規の産業を創出することになる。特にデータについては、膨大なものとなるため、その処理技術やデータを扱える人材に対するマーケット拡大もかなり期待できる。この流れは前回の対話内容のアメリカ・ニューヨークでのeコマースの流れにも見れるように、2014年以降も急速に世界の大潮流となりつつある。今後、わが国もIndustry4.0の動向を見据えつつ、データの大波にうまく乗れる取組が期待される。それがイノベーション創出にも大きく役立つのではないか」と話し、EU圏をさらに牽引しつつあるドイツの国を挙げてのイノベーション創出の取組について、対話を行いました。

「Industry4.0」は、1.0が蒸気機関車などが発明された「第一次産業革命」を、2.0が電力で産業のオートメション化が飛躍的に進んだ「第二次産業革命」を、3.0は近年のコンピューターをはじめとするデジタルテクノロジーが飛躍的に発達した「第三次産業革命」の次に来るものとして「4.0」とされています。1.0から3.0の期間と3.0から4.0の期間は短くなっており、それだけ社会の流れが加速しているとも言えるかもしれません。そのような潮流の中で大学が乗り遅れないためには何が必要なのかを本対話でも深めました。


<過去開催>

第1回 オープンイノベーション(Open Innovation) 大学と企業の関係:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/09/open-innovation.html

第2回 大学発ベンチャーの“企業”としての自立化:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_25.html
第3回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(1.シリコンバレーのハブ機能):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_30.html
第4回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(2.シリコンビーチ台頭の兆し):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html
第5回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/3.html
第6回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(4.ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/4.html

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

2013年12月17日火曜日

【異分野・産学官】最先端の研究・技術成果を公開 2013年度岡山大学新技術説明会 開催

2013年12月17日(火)東京都千代田区

岡山大学は、本学で生まれた研究成果の実用化を促進するため、研究者自身が企業関係者らに実用化を展望した技術説明を行い、広く実施企業・共同研究パートナーを募る「2013年度岡山大学新技術説明会」を2013年12月17日(火)、独立行政法人科学技術振興機構(JST)と共催で、JST東京別館ホール(東京都千代田区)で開催しました。

本学からの参加研究者は、
内田哲也准教授(工学部)
木之下博准教授(工学部)押木俊之講師(工学部)西本俊介助教(環境理工学部)田仲持郎助教(歯学部)笠井智成助教(工学部)大原利章非常勤講師(医学部)高橋智准教授(工学部)ら8人の研究者が、セルロースナノファイバーや単層カーボンナノチューブに関して、結晶化を利用した全く新しいタイプの構造制御技術を適用した高性能高分子材料、耐熱・高絶 縁性C5樹脂(石油樹脂)を製造するルテニウム錯体触媒の大量合成技術、酸化チタン光触媒フィルターを用いた油水分離技術など、高機能・高性能材料について発表。微生物が生産した多孔質マイクロチューブ状酸化鉄を培地に用いた3次元細胞培養技術や、除鉄を応用した新規がん治療法など機能材料、機械、ライフサイエンス分野における計8件の新技術を紹介しました。

今回の新技術説明会には、延べ426人の企業関係者らが参加し、希望者とは個別相談を受けるなど、広く岡山大学発の技術を紹介しました。

※「2013年度岡山大学新技術説明会」のプログラムはこちらからご覧いただけます。http://jstshingi.jp/okayama/2013/program.html

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プレゼンテーションを熱心に説明を聞く企業関係者ら

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企業関係者らとの交流の様子

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

2013年12月12日木曜日

【光生命】革新的光技術で次世代グローバル研究シーズ・ニーズを探る 岡山大学フューチャーセッションinケベック 開催

2013年12月10日(火)~12日(木)カナダ・モントリオール

岡山大学の研究力の強みのひとつである、「光技術分野」をさらに強化し、国際展開の推進を図るため、2013年12月10~12日、岡山大学大学院自然科学研究科計測システム工学研究室の紀和利彦准教授と岡山大学リサーチ・アドミニストレーター(URA)執務室の佐藤法仁URAがカナダのケベック州モントリオール市を訪れ、光技術の革新的イノベーション創出について、世界の研究者らと「岡山大学フューチャーセッション(Future Session) in ケベック」を開催しました。

紀和准教授らは、レーザー研究で世界有数の研究施設と研究力を誇る
ケベック先端科学技術大学院大学(INRS:Institut national de la recherche scientifique)マギル大学(McGill University)などを視察。INRSでは、尾崎恒之教授(ALLS元所長)をはじめ、アジア、アフリカ、ヨーロッパなど世界各国から集まった研究者らとともに革新的光技術の創出について対話する「フューチャーセッション」を開催。岡山大学の光技術(テラヘルツ光)の研究応用を紹介するなど、光技術の革新的応用や本学との連携について熱心に対話を行いました。

岡山大学では、社会と共に革新的イノベーションや高付加価値産業を創出し、「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」につながる積極的な研究推進・研究力向上のため、精力的に研究ネットワークの拡大を行っています。

今回、紀和准教授らが対話した尾崎恒之INRS教授のフューチャーセッション「カナダAdvanced Laser Light Source(ALLS)とテラヘルツ強光子場科学」を2014年1月23日(木)、岡山大学津島キャンパス工学部3号館(3階e304会議室)15:30~16:30で開催する予定です。

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紀和利彦准教授(左)、尾崎恒之INRS教授、佐藤法仁URA

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現場対話を行う尾崎恒之INRS教授(右)と紀和利彦准教授

INRS研究者と紀和利彦准教授(左)

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岡山大学フューチャーセッションinケベックに参加したINRS研究者ら(一部)

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視察先のひとつであるマギル大学(モントリオール市)

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html
INRS:http://www.inrs.ca/english/homepage
マギル大学:http://www.mcgill.ca/

2013年12月6日金曜日

【光生命・異分野・産学官】テラヘルツ光と生命科学融合による革新的イノベーションワークショップ 開催

2013年12月5(木)~6日(金)岡山市北区

岡山大学の研究力の強みのひとつである「光技術と生命科学分野」をさらに強化し、社会と共に革新的イノベーションや高付加価値産業の創出を目指すための対話型ワークショップ「テラヘルツ光と生命科学融合による革新的イノベーションワークショップ」(主催者:紀和利彦・大学院自然科学研究科)を12月5~6日、岡山大学津島地区の本部棟で開催しました。

ワークショップのはじめに、川崎医療福祉大学の梶谷文彦特任教授(川崎医科大学名誉教授、岡山大学特命教授)が、過去の医療技術開発過程の例示や研究組織の戦略について「先端医療イノベーションへの期待」と題して基調講演。

続いて、本学の佐藤法仁リサーチ・アドミニストレーター(URA)が、文部科学省の
「研究大学強化促進事業」[New window]の支援機関に選定されている本学の取り組みやイノベーション対話促進策などを紹介しました。

基調講演後に行われたワークショップでは、大学・研究機関、企業などさまざまな立場の演者が光技術(テラヘルツ光)や生命科学に関する対話材料を提供。2日間で延べ150人以上の研究者、学生、企業人、公務員、一般の方などが参加し、それぞれの分野を超えて、わが国から光技術と生命科学融合による新たな革新的イノベーション創出の探索について熱心に対話を繰り広げました。

岡山大学では、これまでに強みである「光技術と生命科学分野」の
ネットワーク拡大のための対話型ワークショップを積み重ね、重点領域の絞り込みを進めています。今後も次世代の高付加価値産業創出を探るとともに、「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」につながる研究推進・向上を精力的に展開して行きます。
 


<補>テラヘルツ光とは、周波数にして1兆Hz付近の高周波電磁波のことです。レーザー工学・電子工学の発展とともに、そのアプリケーションに注目が世界的に集まっています。近年では、テラヘルツにより生命科学を解明する研究が数多く立ち上がっています。岡山大学でも、
紀和利彦准教授(大学院自然科学研究科・工学部)において独創的なテラヘルツ計測装置を開発し国内外から注目を集めています。

開催の挨拶をする山本進一・岡山大学理事(研究担当)・副学長

主催者の紀和利彦・大学院自然科学研究科准教授

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基調講演を行う梶谷文彦・川崎医療福祉大学特任教授

 岡山大学の研究力推進と向上の取り組みなどを紹介する佐藤法仁URA

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講演に聞き入る参加者ら

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対話するワークショップ参加者ら
 
国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html