光が創る新しい炭素材料 -酸化グラフェンの光による酸素除去メカニズムを解明-
- 酸化グラフェンに光を照射すると酸素が除去されるメカニズムを初めて明らかにしました。
- 光照射による物質の変化を1兆分の1秒の時間で追跡できる複数の計測手法と理論計算を駆使し、メカニズムの解明につなげました。
- センサーや蓄電池などのデバイス応用からドラッグデリバリーなどのバイオ応用まで、幅広く役立つ、新しい機能を持った炭素二次元シートの合成につながります。
筑波大学数理物質系(前所属・岡山大学大学院自然科学研究科)の羽田真毅准教授、岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太研究教授、九州大学大学院理学研究院の恩田健教授らは共同で、酸化グラフェンに光を照射することにより酸素が除去されるメカニズムを解明することに成功しました。
酸化グラフェンは、次世代材料として期待されている炭素二次元シート(炭素からなるナノメートルオーダーの厚みの材料)の原料物質です。安価で大量に入手しやすい黒鉛から合成できます。
しかし、酸化グラフェンはそのままでは電気を流さないため、電子デバイスなどに応用する際には、酸素を適切に除去する必要があります。除去には、光の照射や加熱が用いられますが、そのメカニズムは十分に解明されておらず、望みの機能を持った炭素二次元シートを作製する方法は定まっていませんでした。
加熱による酸素除去では、一酸化炭素や二酸化炭素の形で酸素が除去されるような複雑な化学反応が進行し、特定の酸素原子のみを除去することはできません。一方、光照射による酸素除去は、酸化グラフェン中にさまざまな形で結合している酸素原子のうち、特定の結合をしている酸素原子のみが除去されることが本研究により明らかになりました。このような光による選択的な酸素除去を活用すれば、望みの構造を持つ炭素二次元シートを効率的に合成することにつながると期待されます。
本研究成果は、米国東部標準時の8月27日午前0時(日本時間同日午後2時)付で、アメリカ化学会の学術誌「ACS Nano」で公開されました。
図1:黒鉛(左)と酸化グラフェン(中央)とグラフェン(右)の構造。黒鉛から酸化グラフェンが合成され、酸化グラフェンから酸素が除去されるとグラフェンに近い構造へと変化します。
■論文情報
論文名:Selective Reduction Mechanism of Graphene Oxide Driven by the Photon Mode , versus the Thermal Mode掲載紙:ACS Nano
著 者:羽田真毅*、宮田潔志、大村訓史、嵐田雄介、一柳光平、片山郁文、鈴木貴之、陳望、溝手翔太、佐和孝嘉、横谷尚睦、瀬木利夫、松尾二郎、徳永智春、伊東千尋、鶴田健二、深谷亮、野澤俊介、足立伸一、武田淳、恩田健*、腰原伸也、林靖彦、仁科勇太*D O I:10.1021/acsnano.9b03060
<詳しい研究内容について>
光が創る新しい炭素材料-酸化グラフェンの光による酸素除去メカニズムを解明-
<お問い合わせ>
羽田 真毅(はだ まさき)
筑波大学 数理物質系
エネルギー物質科学研究センター(准教授)
〒305-8572 茨城県つくば市天王台1-1-1
Tel: 029-853-5289
仁科 勇太(にしな ゆうた)
岡山大学 異分野融合先端研究コア(研究教授)
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1
Tel: 086-251-8718
恩田 健(おんだ けん)
九州大学大学院理学研究院(教授)
〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡744
Tel: 092-802-4170
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