<発表のポイント>
- 研究グループ独自のユニークな手法により、半導体材料の遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)のナノリボンと呼ばれる一次元構造の合成に成功しました。
- 酸化タングステンナノワイヤを成長し、その表面にTMDCを成長することで単層TMDCナノリボンの合成に成功しました。
- この手法の開発により、次世代のナノスケール光電子デバイスやIoE(Internet of Everything)の発展に大きく寄与します。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の岸淵美咲(研究当時
岡山大学大学院自然科学研究科博士前期課程2年、現ローム株式会社)と同大学学術研究院環境生命自然科学学域の鈴木弘朗助教、鶴田健二教授、林靖彦教授、三澤賢明(研究当時
岡山大学学術研究院自然科学学域 助教、現福岡工業大学
助教)の研究グループは東京都立大学大学院理学研究科物理学専攻の宮田耕充准教授、産業技術総合研究所の劉崢上級主任研究員らと共同で、酸化タングステンナノワイヤの成長を介した新しい化学気相成長法により、原子レベルに薄い半導体材料(遷移金属ダイカルコゲナイド、TMDC:Transition
Metal Dichalcogenide)の“ナノリボン”と呼ばれる一次元構造の合成に成功しました。
今回の研究成果は、2023年5月1日に米国化学会(American Chemical Society)発行の学術雑誌「ACS Nano」に掲載されました。
TMDCは原子3つ分の厚みの半導体特性をもつ原子層物質で、機械的柔軟性に加え、優れた電気・光学特性を持つことから、次世代のフレキシブル光電子デバイスへの応用が期待されています。このような原子層物質をナノリボンと呼ばれる一次元構造にすることで、新しい特性の発現が期待されます。
今回の研究では単層のTMDCナノリボンを合成するユニークな手法を提案しました。TMDCナノリボンは、今後次世代ナノスケール光電子デバイスやIoE(Internet of Everything)の発展に大きく寄与します。
図1. TMDCシートとTMDCナノリボンの模式図
図2. (a)
WxOyナノワイヤの成長を介したWS2ナノリボンの成長プロセス。合成したWS2ナノリボンの (b) 光学顕微鏡像および (b)
発光マップ。(d,e) 酸化タングステン上に成長したWS2ナノリボン断面の電子顕微鏡像。(f)
酸化タングステン上に成長したWS2ナノリボンの模式図
図3. WS2の酸化タングステン上における自己制限成長の模式図
図4. (a) WS2ナノリボンの単離プロセス。(b) WS2ナノリボン単体の電子顕微鏡像。(c) WS2ナノリボンを用いたFETの模式図。挿入図は表面形状像。(d) WS2ナノリボンFETの電気特性。挿入図はデバイス構造の模式図
◆研究者からひとこと
上手くいかないこともありましたが、たくさんの人に協力していただき、頑張ることができました。この研究が発表できて大変嬉しいです!(岸淵)
着任当初から取り組んできた研究がようやく論文になりとても嬉しいです。一生懸命実験してくれた学生の皆さんに感謝したいです。(鈴木)
◆論文情報
論 文 名:Self-limiting Growth of Monolayer Tungsten Disulfide Nanoribbons on Tungsten Oxide Nanowires
掲 載 紙:ACS Nano
著
者:Hiroo Suzuki, Misaki Kishibuchi, Masaaki Misawa, Kazuma Shimogami,
Soya Ochiai, Takahiro Kokura, Yijun Liu, Ryoki Hashimoto, Zheng Liu,
Kenji Tsuruta, Yasumitsu Miyata and Yasuhiko Hayashi
D O I: https://doi.org/10.1021/acsnano.3c01608
U R L: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.3c01608
◆研究資金
本研究は、JSPS科研費の若手研究(21K14497、20K14378)、学術変革領域研究(21H05232、21H05234)、基盤研究A(22H00283)、JST創発的研究支援事業(PMJFR213X)、2020年度住友基礎科学研究助成、2021年度笹川科学研究助成、2020年度矢崎科学技術振興記念財団、2022年度池谷科学技術振興財団研究助成の支援を受けて実施しました。
◆詳しいプレスリリースについて
原子層半導体の一次元構造化に成功~次世代ナノスケール光電子デバイスへの応用に期待~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230512-1.pdf
◆参 考
・岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(工)ナノデバイス・材料物性学研究室
https://hayashi-lab.org/
・岡山大学大学院 環境生命自然科学研究科
https://www.elst.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学 工学部
https://www.engr.okayama-u.ac.jp/
◆参考情報
・【岡山大学】ヤーヌス構造をもつ二次元半導体の生成と生成過程の解析に成功 ~二次元半導体の新しいデバイス応用展開に期待~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001426.000072793.html
・【岡山大学】閉じ込め空間を利用した原子レベルに薄い半導体の大面積・高品質合成に成功~次世代フレキシブル光電子デバイスの実現に期待~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000764.000072793.html
・【岡山大学】メモリスティブな振る舞いを持つ新規材料を発見 ~人間と同様の思考を持つコンピュータの実現に向けて~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000224.000072793.html
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 自然科学学域 助教 鈴木弘朗
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 工学部3号館
TEL:086-251-8133
FAX:086-251-8133
https://hayashi-lab.org/
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
「岡大TV」(YouTube):https://www.youtube.com/channel/UCi4hPHf_jZ1FXqJfsacUqaw
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2023年5月期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001398.000072793.html
岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
岡山大学『大学ブランド・イメージ調査2021~2022』「SDGsに積極的な大学」中国・四国1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学である岡山大学にご期待ください
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