2023年5月21日日曜日

【岡山大学】酪農を救う!! ウシの繁殖改善に新たな可能性 ~子宮内細菌叢が受胎に関与か?~

岡山大学とNOSAI北海道、北海道大学、麻布大学の共同研究成果プレスリリースです。


 



<発表のポイント>
  • ウシの子宮内膜組織生検のために採材した検体を用いて、ウシの子宮細菌叢(さいきんそう)解析を行いました。
  • 子宮内細菌叢は農場ごとの飼養管理の違いで異なる細菌叢を形成し、受胎性と関連して変動することを明らかにしました。
  • 研究が進むことで、低受胎の原因を診断するための新たなアプローチ方法として子宮マイクロバイオーム検査が確立され、畜産現場における繁殖管理の改善に寄与することが期待されます。


◆概 要
 NOSAI北海道の八木沢拓也係長と岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)の内山淳平准教授、北海道大学大学院獣医学研究院の市居修准教授、片桐成二教授、麻布大学獣医学部の村上裕信 准教授の研究グループは、ウシの子宮内細菌叢と受胎との関連性を見出しました。

 受胎性の低下は、ウシが分娩して搾乳がまた可能となるまでの期間が延長することで飼養コストの増大につながり、酪農家への経済的負担を大きくします。

 今回、農場の飼養管理の違いで子宮内細菌叢が異なること、また、受胎性に関連して子宮内細菌叢が変動することを明らかにしました。この研究成果は、ウシの低受胎を早期診断できる技術を開発できる可能性があり、受胎性の改善に向けた飼養管理方法の提案など、酪農の繁殖における諸問題の解決が期待されます。

 本研究成果は、2023年4月26日、アメリカ微生物学会の雑誌「Microbiology Spectrum」のResearch Articleとして掲載されました。

 

図.ウシの受胎性に関連した子宮内細菌叢解析で明らかになったこと。(A)給餌管理、飼養形態により子宮細菌叢の形成は異なる。(B)低受胎になると子宮内細菌叢において悪玉菌群が優勢となる

図.ウシの受胎性に関連した子宮内細菌叢解析で明らかになったこと。(A)給餌管理、飼養形態により子宮細菌叢の形成は異なる。(B)低受胎になると子宮内細菌叢において悪玉菌群が優勢となる



◆八木沢拓也係長と内山淳平准教授からのひとこと
 繁殖の仕事をしていると、牛の状態は臨床的には問題ないにもかかわらず、受胎しない個体が少なからずいます。「受胎しない牛はなぜ受胎しないのか?」この、畜産に関わる人間にとっての永遠の課題に対して、今回の研究では、農場ごとの飼養管理の違いで個々に形成された子宮内細菌叢が受胎に関係するという、新たな可能性を見出すことができました。この成果を形にしてくださった内山先生をはじめとする各大学の先生方、そして、快く研究に協力していただいた農家の皆様に改めて感謝申し上げます!(八木沢拓也係長)

 この研究は、3年前冬の北海道での学会の後の飲み会で、臨床獣医師である八木沢先生と熱く語り合ったのがきっかけでスタートしました。これまでに、多くの先生方の支援があり、ようやくここまで辿り着きました。関係者の方々本当にありがとうございました。
 最近、ヒトを含む動物種の間での子宮細菌叢の共通点や相違点が見えてきています。ワンヘルス的な観点からヒトや動物の生殖学と微生物学が融合し、新たな科学が切り開ければと考えています。共同研究に興味がある先生・医療関係者・獣医療関係者の方、お話を頂ければ幸いです。(内山淳平准教授)
 

八木沢拓也係長と内山淳平准教授(右)

八木沢拓也係長と内山淳平准教授(右)



◆論文情報
 論文名: Metataxonomic analysis of the uterine microbiota associated with low fertility in dairy cows using endometrial tissues prior to first artificial insemination
 邦題名:「初回授精前の乳牛における低受胎に関連した子宮内細菌叢の解析」
 掲載誌: Microbiology Spectrum
 著 者: Takuya Yagisawa, Jumpei Uchiyama, Iyo Takemura-Uchiyama, Shun Ando, Osamu Ichii, Hironobu Murakami, Osamu Matsushita, Seiji Katagiri
 D O I: 10.1128/spectrum.04764-22
 U R L: https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.04764-22


◆研究資金
 本研究は、令和2年度伊藤記念財団研究助成(研究代表:内山淳平)の支援を受けて実施しました。


◆詳しいプレスリリースについて
 酪農を救う!!ウシの繁殖改善に新たな可能性~子宮内細菌叢が受胎に関与か?~
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230517-1.pdf


◆参 考
・NOSAI北海道(北海道農業共済組合)
 https://www.nosai-do.or.jp/about/
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 病原細菌学分野
 http://www.okayama-u.ac.jp/user/saikin/member.html

 

岡山大学鹿田キャンパス(岡山市北区)

岡山大学鹿田キャンパス(岡山市北区)



◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(医)病原細菌学分野 准教授 内山淳平
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 岡山大学鹿田キャンパス 基礎研究棟
 TEL:086-235-7158
 FAX:086-235-7162
 http://www.okayama-u.ac.jp/user/saikin/index.html

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:086-235-7983
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
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国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学である岡山大学にご期待ください

 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001435.000072793.html

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