2024年12月8日日曜日

防鹿柵の設置はブナの成長低下と土壌微生物の多様性低下を防ぐ~シカの過採食による森林衰退を止める有効な手立てとして期待~〔九州大学, 宮崎大学, 岡山大学〕

九州大学と宮崎大学、岡山大学の共同研究成果プレスリリースです。


 

 

 

<発表のポイント>

  • 強度なシカの採食から森の地表部にある植生(下層植生)を保全するため、各地で防鹿柵の設置が進められています。しかし、柵の設置が下層植生以外の生物群集の保全にも役立つかは知見が限られています。

  • 熊本県の白髪岳において、防鹿柵の内外でブナの成長量と土壌微生物群集の多様性を比較しました。その結果、柵外では下層植生の消失と続く土壌侵食によってブナの成長や土壌真菌群集の多様性が低下しているのに対し、柵内ではそのような低下はみられませんでした。

  • 本研究成果は、防鹿柵による下層植生の保全が、その他の生物群集の保全にも有効なことを実証し、今後のシカ採食への対策を考える上で役立つことが期待されます。

 

 

◆概 要

 近年、全国的にニホンジカの個体数が増加し、森林生態系を大きく変化させています。強度なシカ採食は、下層植生を減少させ、土壌侵食を加速させます。最近の研究により、これらは樹木衰退や土壌微生物の多様性劣化など、様々な生物群集にも悪影響を及ぼすことが分かってきました。

 

 強度なシカ採食への対策として、各地で防鹿柵の設置が進んでいます。しかし、防鹿柵が下層植生以外の生物群集の保全にも役立つかは情報が不足しています。

 

 九州大学、宮崎大学、岡山大学からなる研究グループは、熊本県白髪岳のブナ林に設置された防鹿柵の内外で、ブナの成長と土壌微生物相を比較しました。

 

 ブナの成長量は、年輪解析を通じて比較し、柵外の個体はシカ採食の激化に伴い成長が低下していたのに対し、柵内の個体ではそのような成長低下は見られませんでした。

 

 土壌微生物相については、環境DNA分析を通じて比較し、柵内の土壌は真菌類など一部の微生物群の多様性が高い状態にあることが判明しました。

 

 これら柵設置による保全結果は、下層植生が土壌侵食を抑制し、ブナの成長に影響する樹木根系の露出や、土壌微生物に影響する土壌の物理化学特性の変化を抑止した結果であることも分かりました。

 

 以上の成果は、防鹿柵の設置が樹木衰退や土壌微生物相の劣化の防止にも有効なことを意味します。

 

 ブナの成長に関する研究成果は2024年11月1日に国際学術誌「Journal of Environment Management」で、土壌微生物相に関する研究成果は2024年5月30日に国際学術誌「Forest Ecology and Management」で公開されました。

 

 

 

 

 

 

◆研究者からひとこと

 本研究を行った白髪岳は、焼酎「白岳」の由来になるなど、地域住民に愛されてきた山です。ここでは熊本県あさぎり町、熊本南部森林管理署(林野庁九州森林局)、白髪岳を守る山の会の三者連携によって防鹿柵が設置・管理されてきました。三者の不断の協同によって防鹿柵が維持され続けた結果、本研究が実施でき、地域の生物多様性・自然環境に対する保全効果の実証に繋がりました。この知見が白髪岳における森林管理や山地保全に貢献することを願うと共に、私たち研究チームはシカ採食が森林生態系に与えるインパクトとその保全手段について引き続き研究を進めてまいります。

 

 

◆論文情報
 論文1:ブナの成長の比較に関する研究
 掲載誌:Journal of environmental management
 タイトル: Protection of understory vegetation by deer exclosure fences prevent the reduction of beech growth due to soil erosion
 著者: Hayato ABE*, Dongchuan FU, Tadamichi SATO, Yuji TOKUMOTO, Fujio HYODO. Ayumi KATAYAMA
 DOI:https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2024.123146

 論文2:土壌微生物相の比較に関する研究
 掲載誌:Forest Ecology and Management
 タイトル: Effects of deer-exclusion fences on soil microbial communities through understory environmental changes in a cool temperate deciduous forest in Southern Japan
 著者: Yuji TOKUMOTO, Yuki SAKURAI, Hayato ABE, Ayumi KATAYAMA
 DOI:https://doi.org/10.1016/j.foreco.2024.121993

 

 

◆謝辞
 本研究はJSPS科研費(JP22J20086, JP23K25047, JP22H03793, JP22H05729, JP22H05235)、日本生命財団 (2021–03)、および文部科学省 卓越研究員事業 (JPMXS0320200080)の助成を受けたものです。

 

 

◆詳しい研究内容について
 防鹿柵の設置はブナの成長低下と土壌微生物の多様性低下を防ぐ~シカの過採食による森林衰退を止める有効な手立てとして期待~

 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r6/press20241127-11.pdf

 

 

 

 

◆本件お問い合わせ先

<研究に関すること>
 論文1に関して
 九州大学大学院生物資源環境科学府 博士後期課程 阿部 隼人 (アベ ハヤト)
 TEL:092-948-3101

 論文2に関して
 宮崎大学 研究・産学地域連携推進機構 テニュアトラック推進室 徳本 雄史(トクモト ユウジ)
 TEL:0985-58-7865

 論文1と2に関して
 九州大学大学院農学研究院 准教授 片山 歩美 (カタヤマ アユミ)
 TEL:0983-38-1116

<報道に関すること>
 九州大学 広報課
 TEL:092-802-2130

 FAX:092-802-2139

 宮崎大学 企画総務部 総務広報課
 TEL:0985-58-7114

 岡山大学 総務・企画部 広報課
 TEL:086-251-7292

 

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

 

<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>

 岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部

 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階

 TEL:086-251-8745、086-251-8746
 FAX:086-251-8748

 E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp

     ※ ◎を@に置き換えて下さい

 https://fspp.kikibun.okayama-u.ac.jp/


<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>

 岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部

 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
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国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください

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    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html

 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002743.000072793.html

 

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