2018年4月24日火曜日

【情報発信】心筋梗塞予防の新しいターゲットを発見

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の高橋賢助教、成瀬恵治教授らの研究グループは、ラット心筋細胞を用いた実験によって、心臓細胞のイオンチャネルTRPM4※1の発現を抑制すると、細胞の活性を維持して心筋梗塞の進行を抑えられることを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は4月2日、米科学誌『PLoS ONE』に掲載されました。

心筋梗塞の新しいターゲットを発見した本研究成果は、心筋梗塞のメカニズム解明とその応用による新しい予防・治療法の開発につながると大いに期待されます。


<業 績>
心臓の細胞表面の細胞膜には、TRPM4と呼ばれるイオンの出入り口となるタンパク質が存在しています。これまでTRPM4は、心筋細胞(心臓の筋肉細胞)の電気活動に関わっていることが知られていました。
今回、本研究グループは、ラット心筋培養細胞を用いた実験でTRPM4の発現を抑制。急性心筋梗塞のときに放出される活性酸素による心筋細胞の細胞死が抑制されることを世界で初めて明らかにしました。

<背 景>
 心筋梗塞の予防・治療薬として既に臨床試験が進められているアデノシンなどの薬剤は、作用経路として心臓の細胞のミトコンドリアに存在するイオンチャネルKATP
※2を活動させるのが一般的です。心筋梗塞との併発が多い心不全や糖尿病などの病気では、ミトコンドリアの機能が低下していることが多く、KATPをターゲットにした治療の大きな問題でした。

<見込まれる成果>
本研究成果によって、TRPM4が心筋梗塞の予防・治療の新しいターゲットとなりうることが示されました。今後、TRPM4抑制をターゲットとした研究が進めば、ミトコンドリア内のKATPを作用経路としない、新しい心筋梗塞の予防と治療法の開発が大いに期待されます。

<原論文情報>
Transient Receptor Potential Melastatin-4 Is Involved in Hypoxia-Reoxygenation Injury in the Cardiomyocytes
Hulin Piao, Ken Takahashi, Yohei Yamaguchi, Chen Wang, Kexiang Liu, Keiji Naruse
PLoS ONE, 2015, DOI: 10.1371/journal.pone.0121703


発表論文はこちら
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0121703



<補足説明>
※1 TRPM4(一過性受容器電位チャネルサブタイプM4):
心臓や血管などの細胞表面に発現しているイオンチャネル蛋白質の一種。細胞死の原因の一つに細胞内へのナトリウムイオンの過剰な流入があり、TRPM4はこの過程に関与している。


※2 KATP(アデノシン3リン酸感受性カリウムチャネル):
カリウムイオンを選択的に通すイオンチャネル蛋白質で、細胞膜表面やミトコンドリア膜表面に存在する。ミトコンドリアKATPチャネルはミトコンドリア内外のイオン濃度勾配の維持に関与している。イオン濃度勾配が適正に保たれないと細胞死が起こる。

報道発表資料はこちらをご覧ください



<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
システム生理学分野 助教 高橋 賢
(電話番号)086-235-7119
(FAX番号)086-235-7430


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id289.html

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