<発表のポイント>
- 放線菌であるStreptomyces incarnatusが生産する核酸系抗生物質シネフンギンはSARSコロナやデング熱、猫ヘルペスなどの人畜感染ウイルスの細胞内増殖を強く抑制します。しかし、生産量が極微量であるために社会的に活用されていません。
- この研究では、機械学習Sparse解析で設計した変異コードを放線菌の転写装置に導入するゲノム編集技術を確立することにより、抗ウイルス薬シネフンギンの増産技術を開発しました。
- 抗ウイルス抗生物質は数多くの文献に報告されていますが、医薬品として実用化されたものは皆無です。この研究による遺伝子覚醒技術は抗ウイルス薬を社会で利用する路を切り開きます。
◆概 要
◆田村隆教授からのひとこと
◆論文情報
論 文 名: Multiple mutations in RNA polymerase β-subunit gene (rpoB) in Streptomyces incarnatus NRRL8089 enhance production of antiviral antibiotic sinefungin: modeling rif cluster region by density functional theory
邦 題 名: Streptomyces incarnatus NRRL8089のRNAポリメラーゼβサブユニット遺伝子rpoBの複数の変異は、抗ウイルス抗生物質sinefunginの産生を増強します:密度汎関数理論によるrifクラスター領域のモデリング
掲 載 誌: Bioscience, Biotechnology & Biochemistry (Oxford University Press出版)
著 者: Saori Ogawa, Hitomi Shimidzu, Koji Fukuda, Naoki Tsunekawa1,
Toshiyuki Hirano, Fumitoshi Sato, Kei Yura, Tomohisa Hasunuma, Kozo
Ochi, Michio Yamamoto, Wataru Sakamoto, Kentaro Hashimoto, Hiroyuki
Ogata, Tadayoshi Kanao, Michiko Nemoto, Kenji Inagaki, and Takashi
Tamura
D O I: https://doi.org/10.1093/bbb/zbab011
◆詳しいプレスリリースについて
機械学習(Sparse解析)とゲノム編集を活用した抗ウイルス活性物質の増産 ~眠れる宝の山、核酸系抗生物質の社会実装を目指す~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20210422-1.pdf
◆用語説明
1)核酸系抗生物質
放線菌が生産する抗生物質の中で、核酸と類似した構造をもつ抗生物質の総称。マクロライド系、ペプチド系ほど医薬品として利用されてはいないが、レトロウイルス、マラリア原虫などに効くものが多い。
2)Sparse解析
限られた実験データに対して大量のパラメータセットを参照して、実験値と相関をもつデータセットを探索する機械学習。20種類のアミノ酸の物理化学パラメータセットAAIndexは、アミノ酸残基の疎水性、局在性、親水性などの定量的パラメータである。RNAPに導入した変異残基がもたらす増産効果をAAIndexとの相関係数を算出しながら有用なIndexを探索した。
3)シネフンギン
放線菌Streptomyces incarnatusが生産する核酸系抗生物質。RNAウイルスの増殖に必須のRNAメチル化修飾を強く阻害する。メチル化を阻害されるとRNA分子は分解されるのでウイルスは細胞内で増殖することができなくなる。
4)RNAポリメラーゼ
RNAポリメラーゼは、遺伝子発現の中でDNAからmRNAへの転写の過程を触媒する。RNAポリメラーゼのβサブユニットをコードする遺伝子がrpoBである。
5)接合伝達
多くの放線菌は、外来遺伝子を受け入れる能力が乏しく、rpoB改変を検討する上で大きな障壁になる。接合伝達は、大腸菌細胞から放線菌に改変遺伝子を送り込む方法でこの問題を克服する上で有効な手段となる。
◆参考情報
・岡山大学農学部
https://www.okayama-u.ac.jp/user/agr/
・岡山大学大学院環境生命科学研究科
http://www.gels.okayama-u.ac.jp/
◆本件お問い合わせ先
<本研究に関するお問い合わせ先>
岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域(農)教授 田村隆
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1丁目1番1号 岡山大学津島キャンパス
TEL:086-251-8293
FAX:086-251-8388
<岡山大学の産学連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学連携・知的財産本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1丁目1番1号 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※◎を@に置き換えて下さい
TEL: 086-251-8463
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
岡山大学Image Movie (2020):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2021年4月期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000072793.html
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id828.html
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