2017年11月8日水曜日

【情報発信】高温超伝導転移直前に隠された電荷秩序を発見 ~高温超伝導発現機構解明へ重要な鍵~

岡山大学大学院自然科学研究科(理)の鄭国慶教授、川崎慎司准教授らの研究グループは、銅酸化物高温超伝導体において、未知の「電荷密度波秩序」が存在することを新たに発見しました。また、この秩序が、高温超伝導転移前の異常金属状態と関係があることを突き止めました。

電子は「スピン」と「電荷」という二大素性をもっています。高温超伝導は電子のスピンが関与する反強磁性秩序状態が抑制されてから発現するため、これまでの研究はスピンの役割の解明に集中していました[5]。本研究グループは、今回新たに電荷の役割を発見したのです。すなわち、超伝導発現し始めるところでは、スピン秩序に取って代わって電荷秩序が現れることを突き止めました。電荷秩序の臨界温度はスピン秩序温度の連続的な延伸であり、キャリア濃度の増加とともに減少します。

本研究成果は11月2日英国時間午前10時(日本時間午後6時)、英科学誌「Nature Communications 」に掲載されます。

高温超伝導は1986年に発見されましたが、現在も超伝導発現メカニズムは未解明です。本研究成果は、高温超伝導発見後30年余り続く謎を解く鍵を与えるもので、超伝導発現の機構を考える上で重要な手がかりを与え、今後の高温超伝導現象理解に進展をもたらすことが期待されます。


図1:Bi2Sr2-xLaxCuO6の結晶構造。銅酸化物において、高温超伝導は、銅(青丸)と酸素(赤丸)で構成されるCuO2面(水色)で生じることが知られています。

図2:(a) CuO2面で実現する、モット絶縁体。銅原子[青丸]上に電子スピン[赤矢印]が局在した様子を模式的に表しています。(b) モット絶縁体へ元素置換により空孔を導入(ドーピング)すると、電気伝導が生じ、高温超伝導が発現することが知られています。(c) 元素置換により超伝導が生じる過程において強磁場を加えると、超伝導転移前に電荷密度波秩序が生じることを発見しました。今回明らかになったCuO2面で生じる電荷密度波の空間変調の様子を模式図で示しています。


図3:本研究で得られた相図(当該論文より)。モット絶縁体に対し、元素置換と磁場印加を行うと、超伝導転移前に異常金属相「擬ギャップ(pseudogap)」が表れ、低温で「反強磁性(AF)」、「電荷密度波(CDW)」、「超伝導(SC)」が順番に表れます。今回、擬ギャップ温度と電荷秩序の転移温度が比例関係にあることも明らかになり、擬ギャップの起源解明にも繋がりうる成果となりました。

<発表論文情報>
論文名:Charge-density-wave order takes over antiferromagnetism in Bi2Sr2-xLaxCuO6 superconductors
掲載誌:Nature Communications
著者:S. Kawasaki, Z. Li, M. Kitahashi, C. T. Lin, P. L. Kuhns, A. P. Reyes, and Guo-qing Zheng

<詳しい研究内容について>
高温超伝導転移直前に隠された電荷秩序を発見
~高温超伝導発現機構解明へ重要な鍵~


<本件お問い合わせ>
大学院自然科学研究科
数理物理科学専攻(理学部物理学科)
准教授 川崎慎司
(電話番号)086-251-7803

http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id508.html

【情報発信】青色光と二酸化炭素による気孔開閉運動を制御する分子機構の解明

九州大学大学院システム生命科学府博士後期課程の樋山麻美大学院生・日本学術振興会特別研究員(当時)、九州大学大学院理学研究院の島崎研一郎教授(当時)(現:九州大学名誉教授)、山口大学大学院創成科学研究科理学系学域の武宮淳史准教授、京都大学、名古屋大学遺伝子実験施設の多田安臣教授、岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)の宗正晋太郎助教、村田芳行教授らの共同研究グループは、青色光と二酸化炭素に応答した気孔開閉運動を制御する分子機構の一端を明らかにしました。
 
本研究成果は11月3日英国時間午前10時(日本時間午後7時)、オンライン国際科学誌 「Nature Communications」に発表されます。


<発表論文情報>
論文名: Blue light and CO2 signals converge to regulate light-induced stomatal opening
発表雑誌: Nature Communications
著者: Asami Hiyama, Atsushi Takemiya, Shintaro Munemasa, Eiji Okuma, Naoyuki Sugiyama, Yasuomi Tada, Yoshiyuki Murata, Ken-ichiro Shimazaki
DOI: 10.1038/s41467-017-01237-5

<詳しい研究内容について>

青色光と二酸化炭素による気孔開閉運動を制御する分子機構の解明

<本件お問い合わせ>
大学院環境生命科学研究科(農)
教授 村田 芳行
(電話番号)086-251-8310


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id509.html

2017年11月6日月曜日

【情報発信】若手トップリサーチャー研究奨励賞 小塚准教授、菅准教授を表彰

岡山大学は、優れた業績を挙げた若手研究者を顕彰する「岡山大学若手トップリサーチャー研究奨励賞」の文系受賞者に大学院社会文化科学研究科(法)の小塚真啓准教授、理系受賞者に異分野基礎科学研究所の菅倫寛准教授を選び、10月31日に学長室で表彰式を行いました。

小塚准教授は、著書「税法上の配当概念の展開と課題」で公認会計士協会学術賞を受賞。またインターネットのトランスポート技術に関する研究開発でWIDE賞を受賞するなど、幅広い領域で活動していることが高く評価されました。
 

菅准教授は、光合成を司る二つの酵素の結晶構造を世界で初めて明らかにし、Nature誌とScience誌に論文発表。さらに文部科学大臣賞など数多くの賞を受賞したことが高く評価されました。

式では、槇野博史学長が表彰状と記念品を手渡し、「これを記念として、社会のため、世界で活躍できる国際人として、さらに研究に励んでほしい」と激励。

小塚准教授は「新しいことに挑戦したいという気持ちがあり、今後新たな分野を築いていきたい」、菅准教授は「本賞の受賞は大きな目標であった。この制度により、本学の若手研究活動がより一層活発になることを切望します」と感想を述べました。

同賞は国際的に活躍できる若手研究者の育成を図るため、平成19年度に創設。実績や外部資金獲得、将来性などを評価基準に、学内で慎重に審査し、受賞者を決定しています。



左から、竹内大二理事・副学長(研究担当)、槇野学長、小塚准教授、菅准教授、森川良孝研究推進本部長
 

2017年11月5日日曜日

【情報発信】Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.45 発行

岡山大学は10月30日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.45を発行しました。

2012年より本学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者等にニュースやトピックスを交えて配信し、本学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上などを推進しています。

OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、強みある医療系分野の更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)組織機能修復学分野の宝田剛志准教授らの、体内時計が血液脳関門の維持に重要であることを発見について取り上げています。

宝田准教授らの研究グループは、体内時計システムの構成因子の欠失が、脳血管周囲に存在する「ペリサイト」の機能破綻を起こすことで、血液脳関門の恒常性維持機能を減弱させることを見出しました。

睡眠・覚醒リズムや、成長ホルモン分泌のタイミングなどに代表されるように、多くの生命現象は約24時間周期のリズム(概日リズム)を刻みます。これらのリズムは、ほぼ全ての生物が体の中に備えている体内時計と呼ばれるシステムによって生み出されています。体内時計を動かしているのは、時計の部品ともいえる「時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子産物の活性のリズムであることが知られています。

一方で、いくつかの中枢神経疾患、例えば、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患や、うつ病や統合失調症等の精神疾患では、睡眠障害を合併することが多く知られています。このようなことから、中枢神経疾患(脳の恒常性維持機能の破綻)と、体内時計システムの障害との間には関連性が指摘されていましたが、因果関係を含め、その実態は不明でした。

今回、体内時計システム構成因子の欠失が、ペリサイトの機能破綻を招くことで血液脳関門の恒常性維持機能を減弱させることが明らかとなりました。体内時計システム構成因子と脳血管恒常性維持の関連性を見出した今回の研究成果は、中枢神経疾患の病態解明に重要な知見となると考えられます。特に、神経変性疾患であるアルツハイマー病では、血液脳関門の破綻やペリサイトの機能異常が報告されています。今後、時計遺伝子によるペリサイト制御メカニズムを明らかにすることで、新たな治療薬や治療方法の開発につながることが期待されます。

岡山大学は、平成25年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術として、より早く届けられるように研究開発を推進していきます。

なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.45:
Link between biological-clock disturbance and brain dysfunction uncovered

<Back Issues:Vol.38~Vol.44>
Vol.38:
Bioengineered tooth restoration in a large mammal (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)窪木拓男教授)
Vol.39:
Successful test of retinal prosthesis implanted in rats (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)松尾俊彦准教授、大学院自然科学研究科(工学系)内田哲也准教授)
Vol.40:
Antibodies prolong seizure latency in epileptic mice (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)西堀正洋教授)
Vol.41:
Inorganic biomaterials for soft-tissue adhesion (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)松本卓也教授)
Vol.42:
Potential drug for treating chronic pain with few side effects (自然生命科学研究支援センター 宮地孝明准教授)
Vol.43:
Potential origin of cancer-associated cells revealed (大学院自然科学研究科(工学系) 妹尾昌治教授)
Vol.44:
Protection from plant extracts (中性子医療研究センター小野俊朗教授)

<参考>
Okayama University e-Bulletin:
//www.okayama-u.ac.jp/user/kouhou/ebulletin/



本号で紹介した研究成果を担当した宝田剛志准教授


国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています

【情報発信】クリエイティビティーあふれる人材の育成へ 動画広報強化推進ワークショップ(第1回)開催

岡山大学は10月19日、広報活動における強化推進と教職員のクリエイティブ・マネジメント人材育成などを目的とした「動画広報強化推進ワークショップ(第1回)」を、本学創立五十周年記念館(津島キャンパス)で開催しました。

開催にあたり、本学広報情報戦略本部副本部長である佐藤法仁副理事・URAから「広報に関するツールがさまざまある中で、近年動画を用いた広報は専門的な技術を持つ人のものから、誰もが手軽に扱えるものに急速に変化している。動画広報の積極的な利用とともに、クリエイティブな視点を持ちつつ大学のブランドを強化できる学内人材を育成していきたい」とあいさつがありました。


ワークショップでは、電気通信大学のサンドゥー・アダルシュ学長補佐(国際広報担当)・教授を講師として招聘。午前の部では、国内外で制作されている動画を見ながら、大学や研究機関での動画広報について紹介。また、研究者インタビューのセッティング方法や質疑応答内容など、実際に動画広報を制作する際のノウハウについて詳しく説明しました。

午後の部では、一般的な家庭用動画機材を利用し、参加者らが実際に動画広報の制作実習に挑戦。カメラの位置や照明の度合い、画面上での人物配置など、午前の部で得た知識を基に実習を行いました。参加者らは、互いのアイデアを出し合いながらより良い動画制作が作れる楽しさを学び、動画広報を活用して岡山大学のブランディングを行っていく可能性などについて意見を交わしました。
 

岡山大学では、紙面ならびにweb上での広報物を数多く制作しています。またYouTubeに「岡山大学チャンネル」を開設し、積極的に動画広報を進めています。今後、広報における活動をより戦略的・効果的に行うために、必要なクリエイティビティーあふれる人材の育成にも力を入れていきます。

<参考>
岡山大学チャンネル(YouTube):
https://www.youtube.com/user/okayamaunivpr
岡山大学広報活動://www.okayama-u.ac.jp/tp/profile/pr-act.html


大学における動画制作のノウハウについて講義するサンドゥー教授


講義の様子


研究者インタビュー動画のノウハウ実習を受ける参加者ら
 

家庭用機材を用いて動画制作に取り組む参加者ら