2014年3月28日金曜日

【産学官・異分野】イノベーションの未来を拓く処方箋11 ー 共感から共創へ 夢を実現するクラウドファンディング(Crowdfunding)ー

「岡山大学シーズ・ニーズ創出強化イノベーション対話プログラム2013」では、事業の名前が意味するように「イノベーション(Innovation)」がひとつの“鍵”となっています。しかし、「イノベーション」とはどのようなものでしょうか。「イノベーション」という言葉をヨーゼフ・シュンペーターが形作ってから1世紀が経過しましたが、その時間の中でイノベーションを創出する環境はさまざまに入れ替わりました。その環境の中でイノベーションの“鍵”となるキーワードついて対話を行う会「イノベーションの未来を拓く処方箋」(第11回)を本学津島キャンパスで開催しました。

第11回目となる今回の対話のお題目は、「共感から共創へ 夢を実現するクラウドファンディング(Crowdfunding)”という方法と題して行われました。

「クラウドファンディング(Crowdfunding)」とは、「Crowd(大勢の人々)」と 「Funding(資金調達)」を組み合わせた造語です。その歴史は古く、欧米を中心に一般人や投資家、金融機関などからプロジェクトに合わせて資金を集める方法です。ソーシャル・ファンディング(Social-Funding)とも呼ばれていますが、日本では「クラウドファンディング」という名前が知られはじめています。主流はKickstarterなど、まだまだ欧米企業が現地で活動していますが、わが国でもReadyforMakuakeサーチフィールドKibidangoなど、いろいろな会社がクラウドファンディングの事業をはじめています。そのプロジェクトの中には、大学の教育や研究、国際活動などを対象にしたものも多くあります。今回の対話では、この「クラウドファンディング(Crowdfunding)」を中心に、今後クラウドファンディングがイノベーション創出への鍵となるのかについて対話する場となりました。

話題提供者は、本事業の実施責任者でもある本学学長特命(研究担当)・URAの佐藤法仁が務めました。佐藤URAは、クラウドファンディングの実施方法について、寄付型や購入型、投資型、貸付型などがある点。プロジェクトの達成方法として、All or Nothing(目標額に達成しないとプロジェクトが成立しない方法)かAll-In(集められた金額の額に限らず期間内に集められた資金でプロジェクトを成立させる方法)など、基本概要について説明。さらには、プロジェクトの成功の基本は、そのプロジェクトの魅力もさることながら「共感」を呼び、その共感として資金を投じるとともにプロジェクトを立てた人と一緒にプロジェクトを作り上げていく「共創」が重要なキーワードであることを紹介。研究力強化促進の面で、単純に研究室でやっている研究テーマをクラウドファンディングのプロジェクトにしても共感や共創を呼び込むことは難しく、「この研究をやりたいのでお金をください」ではなく、研究が社会や個人、環境などに対して「変化」をもたらし、それを感じさせることのできるテーマを絞り込むことが重要である点を紹介しました。

対話では、専門用語などの難しい言葉を使わずにプロジェクトの内容を伝えることの難しさや創薬などの完成までに長い道のりと大半が薬に結びつかない現実において、クラウドファンディングは有効な手段となりうるのかなどについて対話が盛り上がりました。
また知的財産面についての疑問が多く出されました。知財についての対話は今回の午後の部に急遽、引き続き第12回として開催することにし、課題の洗い出しを参加者らと行いました。


話題提供者の佐藤法仁URAは、「対話の中にも出てきた専門用語などの難しい言葉を使わずに相手に伝えるというのはスキルの部分でもある。例えば日頃、研究プレスリリースなどの広報をやっていない研究者にはそのスキルがない方も多い。これはバックオフィスである広報部署のサポートも重要であるが、日ごろから自分の研究をどのようにして社会に伝えて行くのか、その中で「共感」のポイントはどこに置けば、社会の人達が「共感から共創」へ心が動くのかという経験を積まなければならない。他方で、クラウドファンディングは大学の教育研究力強化促進の面でも有効な手段のひとつであることは確かだが、クラウドファンディングの資金を受け入れる大学側の財務、知財、契約などの諸々の整備も必要であり、今日の対話で洗い出された点は貴重なものだと思う」と(午前の部)の総括を行いました。

クラウドファンディングの可能性は大きいものであり、社会課題を解決することを目的として教育研究を行うことが多い大学では、親和性のある取組になるかもしれません。現在、クラウドファンディングはまだまだ一般的ではなく、そのシステムの理解が十分に社会に浸透しているとも言えません。このような状況の中で大学がいち早くクラウドファンディングの可能性を見つめ、その取り組みを実践するための、大学組織内の制度改革に取り組むことは、わがく国の寄付文化や投資文化のさらなる定着、そしてイノベーション創出の改善に大きくつながると思われます。

<過去開催>

第1回 オープンイノベーション(Open Innovation) 大学と企業の関係:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/09/open-innovation.html

第2回 大学発ベンチャーの“企業”としての自立化:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_25.html
第3回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(1.シリコンバレーのハブ機能):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_30.html
第4回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(2.シリコンビーチ台頭の兆し):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html
第5回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/3.html
第6回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(4.ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/4.html
第7回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(5.ドイツIndustry4.0の挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/01/5industrie40.html
第8回 共用スペース?いえ違います“コワーキングスペース”です:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/02/blog-post_37.html
第9回 社会問題をイノベーションで解決 “ソーシャル・イノベーション(Social Innovation)という方法:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/03/social-innovation.html
第10回 IPOやM&Aがゴールではない 持続可能なベンチャーを目指して:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/03/ipom.html

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

0 件のコメント:

コメントを投稿