2015年4月29日水曜日

【情報発信】文部科学省「感染症研究国際展開戦略プログラム」に採択

岡山大学は3月26日、文部科学省の平成27年度「感染症研究国際展開戦略プログラム」に採択されました。

大学院医歯薬学総合研究科(薬)の三好伸一教授を中心に、「インド国を拠点とした下痢症感染症の予防-診断-創薬における国際協同研究」という課題を設定。インドにある「岡山大学インド感染症共同研究センター」を拠点に、下痢症の積極的動向調査や安価な経口ワクチンの開発研究、コレラ菌の環境適応に関する研究、下痢原因微生物等の変異、病原性、薬剤耐性に関する研究などを進めていきます。




< 概 要 >
本プログラムは、感染症がグローバル社会に対する脅威となっている現在、日本のみならずアジア・アフリカに海外研究拠点を展開。各地で蔓延している感染症に対する疫学研究、診断治療薬などの開発に向けた基礎的研究を推進し、感染制御に向けた予防や診断治療に資する医薬品、技術の開発、高度専門人材の育成を図るものです。

岡山大学の研究は、医学系、歯学系、保健学系、環境理工学系、大学病院、研究推進産学官連携機構知的財産本部、リサーチ・アドミニストレーター1)(URA)執務室などの「オール岡山大学体制」で臨むほか、国立感染症研究所や創薬支援ネットワーク、他の採択機関校などと連携していきます。
また本年は「日印科学技術協力協定締結30周年」です。本学が採択されている文部科学省「研究大学強化促進事業」2)や「橋渡し研究加速ネットワークプログラム橋渡し研究支援拠点」3)、厚生労働省「臨床研究中核病院整備事業」4)などといった強みのある研究系コア事業との連携も含め、世界が求める医療・研究を先導し、人類の発展に全力で貢献していきます。

 

< 背 景 >
岡山大学は平成19年9月、文部科学省の「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム」に採択されており、インド西ベンガル州のコルカタ市にあるインド国立コレラ及び腸管感染症研究所(National Institute of Cholera and Enteric Diseases:NICED)に岡山大学インド感染症共同研究センターを設置。篠田純男センター長・特任教授をはじめ専任教員と事務職員を配置し、インド側研究者との密接な国際共同研究体制のもと、コレラや赤痢といった下痢症制圧プロジェクトを精力的に実施しています。

また、さらなる研究力の強化促進や両国の科学技術を通した友好促進のために、本学執行部が中核となりインド側と密な連携を取っています。3月14~23日には本学の山本進一研究担当理事・副学長、古矢修一研究担当副理事・リサーチ・アドミニストレーターらの訪問団がインドを歴訪。NICEDや首都ニューデリーにある国立トランスレーショナル健康科学技術研究所(Translational Health Science and Technology Institute:THSTI)、UNESCO支援生物工学センター(Regional Centre for Biotechnology:RCB)、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)ニューデリー事務所、ケーララ州トリバンドラム市にある国立ラジーヴ・ガンディー生物工学センター(Rajiv Gandhi Centre for Biotechnology:RGCB)などを訪れました。各研究機関の執行部、研究者らと共に感染症制圧に向けた具体的な情報・意見交換、研究シーズの日本-インド間橋渡しや知的財産を含めた国際共同研究の戦略などについて密な議論を実施しています5)

なお、本事業所管省庁の組織・制度改革により、平成27年4月1日から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)が事業運用を担います。



< 補 足 >
1)リサーチ・アドミニストレーター(University Research Administrator:URA):

「岡山大学におけるURA」は、学長直属として組織・配置され、研究担当理事・副学長と共に行動する執行部の研究ブレーン組織。「学長特命(研究担当)」として、研究面で学長を補佐し、本学の研究方針の策定や大学改革の推進など経営的判断に立って行動する高度専門人材・組織です。
http://ura.okayama-u.ac.jp/

2)研究大学強化促進事業:

平成25年8月に文部科学省が全国の大学・研究機関から選定されました。大学等における研究力強化を促進し、世界水準の優れた研究活動の支援を目的とした事業です。22の大学、大学共同利用機関法人が選定され、本学は研究の量、質において世界的に存在感のある「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」を目指しています。 
//www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id2681.html

 3)橋渡し研究加速ネットワークプログラム橋渡し研究支援拠点:
平成26年9月に文部科学省に拠点として採択されました。本事業は、生命科学分野の基礎研究の成果を実際の医療に活用するための橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)を推進。基礎研究から実用化まで一貫した流れのもと、日本発の革新的な医薬品などを創出する体制を構築するものです。本学は「健康寿命の延伸を目指した次世代医療橋渡し研究支援拠点」という課題名のもと、日本の高齢化による新たな医療分野での研究開発を視野に見据え、医学、歯学、介護などの多様なニーズへ適切に対応できる橋渡し研究拠点を確立させます。(リリース(平成26年9月10日):文部科学省「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」橋渡し研究支援拠点に採択
//www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id3832.html 

 4)臨床研究中核病院整備事業:

平成25年4月に厚生労働省に選定されました。本事業は、日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出等を目的に、国際水準の臨床研究、難病等の医師主導治験及び市販後臨床研究等の中心的役割を担う「臨床研究中核病院」の整備を目的としており、国内10機関が選定されています。岡山大学病院は、「臨床研究中核病院」として小児・稀少疾患難病等疾患別ネットワークを形成。医師主導治験でなければ実施困難な研究の支援や、国際水準の臨床研究において中心的役割を担います。
また、薬事開発の規制当局との高度な連携や、薬事承認を目指した研究を行う人材の育成、日本発の医薬品や医療機器の早期実用化、日本国内での医療産業化の加速を促し、社会に貢献できる体制を整備します。(リリース(平成25年4月23日):岡山大学病院が「臨床研究中核病院」に選定
 //www.okayama-u.ac.jp/tp/topix/topix_id252.html

 5)岡山大学ホームページ新着ニュース「研究担当理事らがインド歴訪 さらなる研究連携強化へ」(平成27年3月31日) 
//www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id4464.html


< 参 考 >
岡山大学インド感染症共同研究センター:
http://wwwcid.ccsv.okayama-u.ac.jp/
平成27年度「感染症研究国際展開戦略プログラム」(文部科学省):http://www.mext.go.jp/b_menu/boshu/detail/1356213.htm


報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)
教授 三好 伸一
(電話番号)086-251-7966

岡山大学インド感染症共同研究センター
センター長・特任教授 篠田 純男



http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id285.html

2015年4月26日日曜日

【情報発信】よく見える光学顕微鏡の開発へ ナノファンクショナルマテリアルセミナーを開催

機能性ナノ材料の最先端研究や、広範囲な異分野融合から革新的な新技術創出などに取り組む本学大学院自然科学研究科(工)石川篤助教らは4月15日、「第1回ナノファンクショナルマテリアルセミナー」を本学津島キャンパスで開きました。
 

大阪大学大学院工学研究科の藤田克昌准教授を招き、「超解像光学顕微鏡の進展」をテーマに開催。藤田准教授は講演で、蛍光分子の発光特性を活用した超解像光学顕微鏡などを紹介しました。また、自身で開発した飽和励起顕微鏡や、超解像光学顕微鏡に適した蛍光分子の新規開発についてもふれるなど、物理、生物、化学にわたる幅広い視点から解説しました。
講演後の質疑応答では、参加した教員、学生、企業などの関係者らとともに、熱心な議論を繰り広げました。

岡山大学は、平成25年8月に文部科学省が全国の大学・研究機関から選定した
「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)の一つであり、「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」としての高い研究力を有しています。同セミナーで得られた知見や人的ネットワークを最大限に利活用して、社会を革新する研究開発や学術の基幹を築いていく予定です。
なお同セミナーは、本学異分野融合研究育成支援事業の支援によって開催されました。

【本件問い合わせ先】
大学院自然科学研究科(工)助教 石川篤
TEL:086-251-8140
(15.04.24)



講演する藤田克昌准教授


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id4513.html

2015年4月24日金曜日

【情報発信】胃がんとピロリ菌:ピロリ菌成分は突然変異を引き起こす

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の有元佐賀惠准教授(医薬品安全性学)らの研究グループは、高感度検出系を用いてピロリ菌成分が突然変異を引き起こすこと、他の発がん物質の変異原性を増強することを発見しました。本研究成果は3月24日、英国の科学誌『Mutagenesis』オンライン版で公開されました。
がん発症とピロリ菌感染は強い相関があること、すべてのがん細胞のDNAには突然変異があることは知られています。本研究成果によって、胃上皮細胞変異と胃がん発症のメカニズムの解明が進めば、突然変異を阻害する薬の開発が見込まれ、胃がん予防につながると期待されます。
 
 
<業 績> 
本学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の有元准教授、岡山理科大学、京都府立医科大学、松下記念病院の共同研究グループは、ピロリ菌に感染したスナネズミで、通常は胃がんを起こさない低濃度のアルキル化剤系発がん物質投与でも胃発がんを起こすという報告があることに着目。突然変異を高感度に検出する方法を用いて、ピロリ菌成分を加えたネズミチフス菌、ヒト由来の培養細胞で突然変異が起こることを発見しました。

さらに、ピロリ菌成分とアルキル化剤系発がん物質の両方を加えた場合、アルキル化剤系発がん物質を単体で加えた場合よりも多くの突然変異を確認。ピロリ菌成分がアルキル化剤系発がん物質の変異原性を増強することも分かりました。なお、同じく消化管にいる大腸菌でも同実験を行ったところ、突然変異は確認できなかったため、ピロリ菌独特の成分と考えられます。
また、ピロリ菌成分を100℃で加熱したところ、変異原性が低下。ピロリ菌の持つ変異原性物質は熱不安定な低分子化合物で、菌体タンパクに付着して存在していると考えられることも分かりました。

<背 景>
これまで胃がん発症とピロリ菌感染は強い相関があること、すべてのがん細胞のDNAには突然変異があることは知られています。また、ピロリ菌が慢性感染すると胃上皮細胞の突然変異率が上昇するという報告もありました。しかし、ピロリ菌は突然変異を引き起こさないと報告もあり、ピロリ菌感染が突然変異を引き起こす機構はわかっていませんでした。



<見込まれる成果>
本研究成果によって、ピロリ菌の変異原性成分がピロリ菌の慢性感染による胃上皮細胞変異&胃がん発症に関与している可能性が示唆されました。今後、胃上皮細胞変異と胃がん発症のメカニズムの解明が進めば、突然変異を阻害する薬の開発が見込まれ、胃がん予防につながると期待されます。

本研究の一部は感染症研究国際ネットワーク推進プログラム(J-GRID)の援助を受けました。

<原論文情報>
タイトル:Mutagenicity and clastogenicity of extracts of Helicobacter pylori detected by the Ames test and in the micronucleus test using human lymphoblastoid cells

著  者:Sakae Arimoto-Kobayashi, Kaori Ohta, Yuta Yuhara, Yuka Ayabe, Tomoe Negishi, Keinosuke Okamoto, Yoshihiro Nakajima, Takeshi Ishikawa, Keiji Oguma and Takanao Otsuka掲載誌:Mutagenesis (2015) 
doi: 10.1093/mutage/gev016

発表論文はこちらからご確認いただけます。
(著者:有元佐賀惠1、太田香織2、湯原悠太1、綾部ゆか2、根岸友恵1、岡本敬の介1、中島善洋3、石川 剛4、小熊恵二1、大塚隆尚5 (1岡山大・院医歯薬、2岡山大・薬学部、3松下記念病院、4京都府立医大、5岡山理科大・工))

報道発表資料はこちらをご覧ください

<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)
准教授 有元 佐賀惠
(電話番号)086-251-7947
(FAX番号)086-251-7947


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id288.html

【情報発信】ユネスコが岡山大学ユネスコチェアの設置認可を更新

岡山大学は3月14日、ユネスコから「岡山大学ユネスコチェア:持続可能な開発のための研究と教育」の設置認可の更新を受けました。認可期間は2019年3月までの4年間。
 
岡山大学は2007年4月に、国連による「持続可能な開発のための教育(ESD)」の取組を推進することを目的とするアジアで唯一のユネスコチェアに選ばれており、2014年8月にユネスコ本部に対して認可更新の申請を行っていました。
今後も国内外の高等教育機関と連携しながら、ESDのさらなる促進に向けた教育研究活動を展開していきます。


<今後の取組>
 「国連ESDの10年」が2014年に終了し、その後継プログラムである「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」が2014年秋の第69回国連総会で採択され、2015年から開始されました。今後は、政府や岡山市のGAPを踏まえた新たなESD推進策検討の動きを考慮しながら、ESDのさらなる促進に向けた教育研究活動を展開します。
取組責任者であるチェアホルダーは、2007年から大学院環境生命科学研究科の阿部宏史教授(理事・副学長、日本ユネスコ国内委員会委員)が務めています。


 <背景>
ユネスコが1992年に開始したUNITWIN(University Twinning and Networking)/UNESCO Chairsプログラムは、世界の異なる地域の高等教育機関が連携し、相互の緊密なネットワーク形成を通じて知識移転を促進することにより、国際的な能力開発と人材育成に貢献することを目的としています。2013年9月時点で、世界134ヵ国の高等教育機関に763のユネスコチェアと69のUNITWINネットワークが設置されています。本学ユネスコチェアは、ESD推進を目的とするアジアで唯一のユネスコチェアとして、2007年に設置認可を受けました。
岡山地域は、「国連ESDの10年」(2005年~2014年)が始まった2005年6月、国連大学から「ESDに関する地域拠点RCE(Regional Centres of Expertise on ESD)」として、世界最初の7カ所の1つに認定されました。本学はユネスコチェア設置認可後、岡山市とESD推進に関する協定を締結し、RCE岡山の関係機関である行政、学校、NGO、NPOなどと連携したESD活動を進めてきました。岡山市はESDに関する先進的な取組が評価され、2014年秋の「ESDに関するユネスコ世界会議」では愛知県名古屋市とともに開催都市となり、5つの国際会議に世界97の国・地域から約3千人が参加しました。
岡山大学では、環境生命科学研究科と教育学研究科が中心となって、ESDを基盤とした高度専門人材の育成や教育・実践活動支援を行うとともに、HESDフォーラム(国内高等教育機関のESDネットワーク)、ProSPER.Net(国連大学のアジア・太平洋大学院ESDネットワーク)、ASPUnivNet(ユネスコスクール支援大学間ネットワーク)などに参画し、国内外の高等教育機関とのESD連携を進めています。


報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科
教授 阿部 宏史
(電話番号)086-251-8977
(FAX番号)086-251-7021

 
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id286.html

2015年4月19日日曜日

【情報発信】女性研究者のシーズ集完成 WTT教員の研究紹介

岡山大学ダイバーシティ推進本部男女共同参画室は、女性研究者の研究概要やコラムを掲載した「岡山大学女性研究者シーズ集 ―WTT教員編―」を3月に作成し、配布しています。

本室は“働きやすい岡山大学、魅力ある岡山大学”を目指し、ウーマン・テニュア・トラック(WTT)教員制度による女性教員の雇用、研究支援体制の充実、保育環境の整備などに取り組んでいます。

冊子は掲載された研究者にとって共同研究の芽になることを目的に制作。女性研究者14人の研究紹介や、人となりの分かるコラムを設けた見開きカラー誌面にまとめています。また、本学のWTT制度に関する情報や、ママとしてのWTT教員の活躍事例、本学保育施設などもあわせて紹介しています。

冊子のデータはこちら

【本件問い合わせ先】
ダイバーシティ推進本部男女共同参画室
TEL:086-251-7303

(15.04.17)


できあがった「岡山大学女性研究者シーズ集」

http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id4493.html

2015年4月18日土曜日

【情報発信】「岡山大学ロンドン事務所」開所

本学は4月1日、さらなるグローバル化推進を目的に、英国にロンドン事務所を開所しました。本事務所は欧州地域における初めての海外拠点。本学の広報活動を行いながら、英国の大学・研究機関等との関係構築、連携強化活動を展開し、学生、教職員間のグローバル化を加速させていきます。

また、これに先立ち3月26日、設置場所となるジャパングリーンメディカルセンターとの業務委託の調印が行われました。当日は本事務所開所に向けてサポートしていただいた英国総領事館の立ち会いのもと調印式が行われ、在英日本人向け、在英外国人向けの入試情報の確認や現地大学、研究機関との連携に向けた検討が行われました。


同センターは岡山大学の英国における窓口としての役割を担い、英国で20年以上事業を展開し現地事情に精通した強みを活かし、本学の知名度向上に向けて積極的な情報発信を行う予定です。

【本件問い合わせ先】
グローバル・パートナーズ事務室
TEL:086-251-7048

(15.04.01)



2015年4月15日水曜日

【情報発信】第48回岡大サイエンスカフェを開催

本学研究推進産学官連携機構は4月14日、本学の研究者が最新の科学を分かりやすく説明する「第48回岡大サイエンスカフェ」を創立五十周年記念館で開催しました。

大学院環境生命科学研究科の綾野克紀教授が「コンクリートの環境負荷低減とインフラの長寿命化」をテーマに講演。豊かな生活を支えているコンクリート製のインフラストラクチャーの問題や、将来起こりうる課題、対策などについて解説し、参加した101人の市民らは熱心に聞き入っていました。

 次回は6月15日。大学院社会文化科学研究科の北川博史教授が「世界でも有数の「住み良いまち」とは-リヴァブル・シティの特徴と形成過程-」と題し、住み良いまちづくりについて講演する予定です。


【本件問い合わせ先】
研究推進産学官連携機構 社会連携本部
TEL:086-251-7112
(15.04.14)

 

2015年4月11日土曜日

【情報発信】食道がんに対する放射線治療を併用した腫瘍融解ウイルス 「テロメライシン」の臨床研究の中間報告(第I報)

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学分野の藤原俊義教授、白川靖博准教授らの研究グループは、食道がんに対する腫瘍選択的融解ウイルス製剤「テロメライシン」を用いた放射線併用ウイルス療法の臨床研究を推進。7例の食道がん患者に治療を実施し、その安全性と有効性に関するデータを蓄積しました。本成果は4月19日、米国フィラデルフィアにて開催される第106回米国がん研究会議(AACR 2015)で発表します。

今回でレベル1(低容量)の投与群を終了し、今後、レベル2(中容量)、レベル3(高容量)へと進めていきます。また、岡山大学発ベンチャー オンコリスバイオファーマ(株)と医師主導治験への移行も検討中です。テロメライシンは、手術や標準的な抗がん剤治療が難しい高齢の食道がん患者などで、低侵襲で安全な治療法となることが期待されます。
 
テロメライシン(Telomelysin、OBP-301)は、岡山大学で開発された国産の抗がんウイルス製剤であり、感染したがん細胞を殺傷するとともに放射線に対する感受性を増強することが明らかとなっています。平成25年11月29日から、食道がん患者を対象に、テロメライシンの内視鏡的腫瘍内投与と放射線治療を併用する臨床研究が進んでいます。治療は、第1日目に局所麻酔下に内視鏡を用いて胸部食道の患部に0.2 mlずつ5ヶ所に計1 mlのテロメライシンを投与し、第4日目から週10Gyの放射線治療を6週間、計60Gy実施し、その間に第18日目と32日目にテロメライシンの腫瘍内投与を追加します。

レベル1(1×1010 virus particles(vp);低容量)では、53~92歳の食道がん患者7例に治療が実施され、有害事象としては発熱、食道炎、放射線肺臓炎、白血球減少などが40%以上でみられました。リンパ球減少は全例に認められましたが、放射線治療の中断などで回復がみられています。内視鏡的には7例中5例で腫瘍縮小が認められ、2例では組織検査でがん細胞が消失しました(CR)。本治療前に抗がん剤が使用された2例では、1例が不変(SD)、1例が進行(PD)で試験から脱落しました。


今後は、レベル2(1×1011 vp;中容量)、レベル3(1×1012 vp;高容量)へと進めていき、有効性を検証します。また、オンコリスバイオファーマ(株)と医師主導治験への移行も検討しています。


期待される効果:
がんは1981年以来、日本人の死亡原因の第1位を占めており、国民の健康と安全・安心な社会を確保するためには、既存の治療コンセプトとは異なる革新的な治療技術の開発が不可欠です。テロメライシンは、テロメラーゼ活性を標的とするがん治療を目的とした生物製剤であり、生体内で自立性を持って増殖することによる従来の抗がん剤にない抗腫瘍効果の作用機序を有しています。また、放射線によるがん細胞のDNA損傷の修復を阻害することで、放射線治療の感受性を格段に増強することができます。
今回の臨床研究が順調に進み、標準的な手術や抗がん剤治療が受けられない高齢の合併症を有する食道がんの患者にとって安全で有効な治療法であることが明らかになれば、今後、拡大していく高齢化社会において国民の健康増進や医療経済の節減にも役立つと期待されます。


テロメライシンについて:
 「テロメライシン」は、風邪ウイルスの一種であるアデノウイルスのE1領域に、多くのがん細胞で活性が上昇しているテロメラーゼという酵素のプロモーターを遺伝子改変によって組込み、がん細胞中で特異的に増殖してがん細胞を破壊することができるようにしたウイルス製剤です。「テロメライシン」がヒトのがん細胞に感染すると一日で10万~100万倍に増え、がん細胞を破壊します。一方、「テロメライシン」は正常組織細胞にも同様に感染はしますが、テロメラーゼ活性がないためウイルスは増殖せず、正常組織での損傷は少ないと考えられます。オンコリスバイオファーマ(株)が米国で実施した、がん患者に対する「テロメライシン」単独の臨床試験において、重篤な副作用は認められておらず、投与部位での腫瘍縮小効果などの有効性が認められました。


オンコリスバイオファーマ株式会社について:
オンコリスバイオファーマは、がんと感染症を克服するための新薬開発を行っている岡山大学発バイオベンチャー企業です。主要プロダクトである「テロメライシン」(開発コード:OBP-301)は、現在各種固形がんをターゲットとして米国での第Ⅰ相臨床治験を終了しています。
報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
消化器外科学分野
(電話番号)086-235-7257
(FAX番号)086-221-8775




図1 テロメライシンの作用機序



図2 テロメライシンの放射線増感作用



図3 テロメライシン投与と放射線治療スケジュール

http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id284.html

2015年4月8日水曜日

【情報発信】岡山大学・北海道大学発「リン酸化プルランを用いた世界初の多目的接着性人工骨を開発するベンチャー企業」を設立

岡山大学と北海道大学は、4月1日(水)にベンチャー企業「メディカルクラフトン株式会社」を設立しました。
 
北海道大学大学院歯学研究科吉田靖弘教授[元岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 准教授]は、平成24年からリン酸化プルランを用いた世界初の多目的人工骨の開発を推進。医療用多糖類のプルランから得られるリン酸化プルランとリン酸カルシウム(骨の類似成分)を混合することにより、歯や骨に強固に接着する人工骨の開発に成功しました。

今回設立したベンチャー企業は、本研究成果を用いて、新規人工骨の開発・実用化さらに医療分野における幅広い展開を目指します。
 
北海道大学大学院歯学研究科吉田靖弘教授[元岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 准教授]は、骨や歯などの生体硬組織に強固に接着する新規生体材料である多糖誘導体リン酸化プルランを主成分とする新しい人工骨の開発に成功。岡山大学が起業支援し、本研究成果を実用化するベンチャー企業(代表取締役:松尾健哉氏)を設立しました。

 
開発した人工骨は、高い接着力、圧縮強度の最適化、生体吸収性・骨置換速度の最適化を実現し、歯科領域以外に外科領域(整形外科や脳外科)への応用も期待できます。

 
今後は、設立したベンチャー企業を通じて、歯科領域、そして将来は整形外科領域を中心とした医科領域へと広く普及していく計画です。平成33年度を目途に歯科領域での製造販売業の取得を経て、製品の市販3年後には売上高6.5億円を目指します。

本ベンチャー企業は、岡山大学が科学技術振興機構(JST)から受託していた研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)本格研究開発ステージ起業挑戦タイプの研究開発課題「リン酸化プルランを用いた世界初の多目的人工骨の開発」の研究開発成果を事業展開したものです。

本件に関しては、JST、日本医療研究開発機構(AMED)、北海道大学から文部科学記者会、科学記者会、北海道庁教育記者クラブに同様の内容について、プレスリリースされています。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20150408/index.html

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学研究推進産学官連携機構産学官連携本部
産学官連携コーディネーター  齋藤 晃一
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1
 Tel:086-251-8465   Fax:086-251-8467

http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id283.html


2015年4月7日火曜日

【情報発信】世界初 脳死・生体肺同時の“ハイブリッド移植”に成功

岡山大学病院は4日、特発性間質性肺炎を患う男性への両肺移植手術で、左肺に脳死した人からの肺、右肺に生きている人の肺(右肺下部の「下葉」)を同時に移植する手術に成功しました。脳死・生体肺同時の“ハイブリッド移植”は、世界初です。

手術は同日、呼吸器外科の大藤剛宏肺移植チーフを執刀医とするチームが担当。約10時間かけて、脳死ドナーから提供された肺と生体ドナーから提供された肺の一部を移植しました。

手術後の会見で大藤教授は、「機能の優れた生体肺も使うことで、一つの命を救うことができた。医学的理由で使用が断念される肺が利用されるのは意義深い。使われない肺を少しでも減らしたい」と説明しました。

【本件問い合わせ先】
 岡山大学病院 病院長室 
 TEL:086-235-6749

(15.04.06)


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id4469.html