2019年7月27日土曜日

【情報発信】大学と企業の「組織」対「組織」の産学共創を集中的にマネジメント! 社会に新たな価値を生む共創活動の中核組織として「岡山大学オープンイノベーション機構」を設置

岡山大学は、企業等との「組織」対「組織」の事業創出や大型共同研究などから、社会に新たな価値を生み出すため、専門的な人材によって集中的にマネジメントする中核組織として、学長直轄組織「岡山大学オープンイノベーション機構」(略称:岡大OI機構)を6月26日に設置しました。
 
岡大OI機構では、主に競争領域の大型共同研究の共創・推進、さらに競争領域※1と非競争領域※2の狭間での新規事業創出モデルの構築などを通じて、社会課題の解決やSociety5.0社会におけるより良い生活環境の提供などを共感と挑戦を持って取り組みます。
 
また、大学における財政基盤や研究力の強化、人材育成などの大学改革をも加速させ、社会に対して新たな価値を提供し続けられる大学としての存在感の強化を進めます。


■概要
1.岡山大学オープンイノベーション機構で取り組むことの意義と目的
政府の「未来投資戦略2018」(平成30年6月15日閣議決定)において、2025年までに企業から大学、国立研究開発法人等への投資を3倍増(2014年比)とすることを目指すことが決定しています。また、文部科学省においても、「組織」対「組織」の本格的な産学官連携が推進されています。産業構造が資本集約型から知識集約型に大きく転換する中で、企業は自前主義から脱却し、大学等の総合力を活用した多様性のある活動の重要性が高まっています。


こうした社会的状況をふまえ、本学では6月26日、企業等との「組織」対「組織」の事業創出や大型共同研究などから、社会に新たな価値を生み出すため、専門的な人材によって集中的にマネジメントする中核組織「岡山大学オープンイノベーション機構」を設置しました。

岡大OI機構は、企業の研究開発部門との産学連携のみならず、製造部門や事業部門も含めた各階層における企業との「組織」対「組織」の共創によって、大型共同研究を推進します。


また、非競争領域と競争領域の狭間での新規事業創出モデルの構築などの早い段階からの共創マネジメントも強化します。これらの活動を通じて大型共同研究の共創・推進し、社会課題の解決やSociety5.0社会におけるより良い生活環境の提供などを共感と挑戦を持って取り組みます。

さらに本学における財政基盤や研究力の強化、人材育成などの大学改革をも加速させ、社会に新たな価値を提供し続けられる大学としての存在感の強化を進めます。

2.岡大OI機構の体制
岡大OI機構は、那須保友(なす やすとも)理事(研究担当)・副学長を機構長に、大型共同研究を行う研究開発プロジェクトを置く「プロジェクトマネジメント部門」、プロジェクトの法務、知財、財務、人事等の業務を支援する「プロジェクトサポート部門」、これらを統括する「事業統括部門」の3部門で構成。事業統括部門では、事業全体を指揮する統括クリエイティブマネージャー(略称:統括CM)として、長年企業で医薬品開発に携わり、代表取締役社長の経験もある神川邦久(かみかわ くにひさ)大学院医歯薬学総合研究科教授が担当します。


岡大OI機構は、学長直轄による迅速で大胆な取組が可能な「出島」として扱い、統括CMが個々のプロジェクトを横断的にマネジメントします。岡大OI機構で扱う大型産学共創は、従来の財務会計データを基にした「管理会計システム」を取り入れ、そのプロジェクトにかかる資金フローと業績測定を行い、プロジェクト全体のアウトプットを経営トップの学長に届けます。


岡大OI機構では、管理会計システムを組織内コミュニケーションツールや横断的評価のための予算管理システムとして位置づけ、ここから得られる情報をもとに、大型産学共創研究の進捗管理と、将来の社会実装に向けた経営トップの意思決定を行う予定です。

また、既存の組織との連携として、研究力強化促進や非競争領域における企業連携マネジメントを担う研究推進機構や、学部・研究所・研究科と連携し、競争領域における大型共同研究をマネジメントします。


運営経費は、企業からの共同研究費(間接経費)や新たに導入する戦略的産学連携経費、ライセンス収入等から捻出し、大学におけるプロフィットセンターを目指します。


3.岡大OI機構でまず取り組む分野
岡大OI機構では、「すべての人にWell-being※3を!~快適な人生100年時代を歩むための価値転換と健康寿命延伸を支える新産業拡大を実現するオープンイノベーション機構~」という野心的な変革ビジョンの下、まず取り組む領域として、(1)未病・予防を支える「精密ケア医療分野」、(2)口腔から全身の健康寿命延伸に着目した「オーラルヘルスケア分野」、(3)ライフサイクルの変革をもたらす「Well-beingサイエンス分野※4」の3つのコア分野を設定し、研究領域や学部等を横断したプロジェクトを展開する予定です。


(1)精密ケア医療分野
・バイオバンク・ゲノム医療プロジェクト
・分子イメージングプロジェクト
・ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)プロジェクト
・再生・遺伝子医薬・細胞医薬・医療機器開発プロジェクト


(2)オーラルヘルスケア分野
・歯科材料プロジェクト


(3)Well-beingサイエンス分野
・スポーツ・生殖・ヒューマンテクノロジープロジェクト


これらの分野は、特定の産業界・企業だけではなく、新規参入や中小・ベンチャー企業、特にきらりと光るテクノロジーを持つスタートアップ企業などと共に進めていきます。

とりわけ、スタートアップ企業等は大学病院や研究室などと提携を始めるのが困難であると感じたり、共創活動に壁を感じたりすることなどが多いですが、岡大OI機構では積極的にスタートアップ企業等の参画を進め、失敗を容認し次につなげるポジティブな挑戦的活動を重視していきます。

また、岡大OI機構の拡大を進めるにあたり、将来的には上記3分野以外にも拡大していく予定であり、この拡大にはさまざまなステークホルダーと共に進めていきます。


今後、岡大OI機構における大きな産学共創プロジェクトをいくつか準備しています。ぜひ岡大OI機構の活動にご注目ください。


■補足・用語説明
1)競争領域
企業の事業戦略に深く関わる領域、あるいは大学と企業等で、企業の研究開発部門のみならず製造部門・事業部門も含めたクローズの共同研究が実施される研究領域を想定しています。


2)非競争領域
学術論文の発表が可能で、大学等や複数の民間企業において研究開発成果に関する情報の共有が可能な基礎的・基盤的研究領域を想定しています。


3)Well-being
Well-being(ウェルビーイング)は、「Happiness」、「Wellness」、「Medicine」、「Care」を俯瞰し、身体的、精神的、社会的な豊かさです。誰もが望み、人類全体の幸福追求でもあります。「人生100年時代」と言われる今日、その生を終える時まで持続するものです。国連主導で、わが国も注力する「持続可能な開発目標(SDGs)」もWell-beingを最重要としています。
 
4)Well-beingサイエンス分野Well-beingを進める中で、きらりと光るテクノロジーの活用により、従来の商品・サービスと劇的に変わるものを提供することが可能です。しかし、技術先行型であったり、人に寄り添うヒューマン・テクノロジーに適さないものなどもあり、使用者が利用するのに億劫になったり、疲労を感じる場合もあります。「苦」に起因する価値を「わくわく」へと転換する際に、利用者視点重視のもとWell-beingとサイエンス(技術)の適切な融合を進める挑戦的な分野です。

 
<お問い合わせ>
岡山大学 研究協力部長 坂口浩司
(電話番号)086-251-8410

(FAX番号)086-251-7114

岡山大学 副理事(経営力強化担当)・URA 佐藤法仁(東京オフィス勤務)
(電話番号)03-6225-2905

(FAX番号)03-6225-2906

http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id645.html

【情報発信】片頭痛治療を目指した卵円孔開存のカテーテル閉鎖術:国内初の医師主導治験を開始

◆発表のポイント
  • 前兆のある片頭痛と、卵円孔(心臓の左右の心房間の隙間)開存の関連性が指摘されてきましたが、片頭痛の治療として卵円孔閉鎖術の有効性は科学的に証明されていません。
  • 岡山大学病院では、薬を用いても十分な改善の得られない前兆のある片頭痛の患者さんに対し、新しい卵円孔閉鎖栓を用いた国内初の医師主導治験を8月から開始します。


片頭痛とは、ズキズキとした拍動性の痛みが特徴の強い頭痛です。わが国では片頭痛のために年間約3000億円の経済的損失が発生していると言われ、社会的に大きな影響を与えています。

これまでの研究で、前兆のある片頭痛の方は約50%に卵円孔があると言われており、卵円孔開存のある方は通常の方と比べると3.2倍の確率で前兆のある片頭痛があることが報告されています。このため前兆のある片頭痛と卵円孔開存の関連性があるのではないかと考えられていますが、卵円孔を閉じて前兆のある片頭痛が改善するかどうか、科学的に証明されていません。

もしも卵円孔を通過する物質が何らかの片頭痛の引き金の物質を放出し、最終的に片頭痛が起こるのであれば、卵円孔を閉鎖することでこの物質が脳に到達することを防ぎ、頭痛の引き金となる神経伝達物質の放出を抑制し、最終的に片頭痛の頻度が低下するのではないかと推測しています。

そこで岡山大学病院では、薬を用いても十分な改善の得られない前兆のある片頭痛の患者さんに対し、新しい卵円孔閉鎖栓を用いた国内初の医師主導治験を8月より開始します。


◆研究者からのひとこと
岡山大学では2015年から、自由診療として片頭痛の治療を目的とした卵円孔のカテーテル閉鎖術を行ってきました。この成果をもとに、治療の対象を前兆のある片頭痛の方に絞って、治験を実施することになりました。患者さんにとっても医療スタッフにとっても厳しい治験になりますが、片頭痛に悩む患者さんにとって有効な新しい治療法をお届けしたいと思っています。
赤木准教授



<詳しい研究内容について>
片頭痛治療を目指した卵円孔開存のカテーテル閉鎖術:国内初の医師主導治験を開始

添付資料1
添付資料2
添付資料3

<お問い合わせ>
岡山大学病院 循環器内科
准教授 赤木禎治 (あかぎ ていじ)
(電話番号)086-235-7351
(FAX)086-235-7353




http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id648.html


【情報発信】岡山大学が「次世代医療機器連携拠点整備等事業」に採択

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の平成31年(令和元年)度「次世代医療機器連携拠点整備等事業」に、岡山大学が採択されました。

本事業は、平成26年度より5年間実施した国産医療機器創出促進基盤整備等事業等の成果を活用しつつ、医療機器を開発する企業の人材育成拠点を増やし、更に各医療機関ならではの特色を活かした、医療機器産業の振興につながる魅力あふれる拠点を整備することを目的とするものです。本学を含め14施設が採択されました。

本学は「オープンイノベーションと事業化推進を目指した医療機器開発中核拠点整備」を整備目標として掲げています。岡山大学病院と連携5病院で構成するメガホスピタルのスケールメリットを生かし、医学のみならず看護、介護、リハビリテーション、歯科領域、在宅医療など幅広い医療ニーズの収集システムを構築するとともに、大学、行政、産業界が緊密に連携することで、価値あるビジネスモデルの創出、企業マッチング、事業化をシームレスに実施していきます。

本事業採択を受け、これまでの5年間の実績をもとに医療機器開発人材の育成と、更なる医療の発展を目指していきます。

●AMED平成31年(令和元年)度 「次世代医療機器連携拠点整備等事業」の採択についてはこちら


【本件問い合わせ先】
岡山大学病院 研究推進課
TEL:086-235-6088


岡山大学研究推進機構 医療系本部
TEL:086-235-6979



http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id8663.html


【情報発信】中国浙江大学医学部生が来学し「岡山大学夏期プログラム」を受講

7月22~25日、中国浙江省浙江大学の医学部生40人が来学し、本学の医学教育の一端を体験する「岡山大学夏期プログラム」を受講しました。

本プログラムは、日中両国の大学交流を推進する特定非営利活動法人・日中留学推進機構の協力のもと実施しており、今年度で2回目となります。

伊達勲医学科長が「浙江大学の皆さんの来訪を熱烈に歓迎します」とあいさつ。本学や岡山地域の紹介を行い、プログラムがスタートしました。医学系の特別講義もあり、大学院医歯薬学総合研究科(医)の中尾篤典教授が「救命救急・災害医学」、鵜殿平一郎教授が「腫瘍免疫学」、黄鵬助教が「遺伝子治療、日本の医療制度、医学教育」、王登莉助教が「脳出血の抗体治療」、森松博史教授が「周術期管理」、岡山大学病院総合内科・総合診療科の原田洸医師が「身体診察」、医療技術部(臨床工学部門)の平山隆浩臨床工学技士が「日本の臨床工学技士」について講義。その他にも医療教育センターやヘリポートの見学など、盛りだくさんの内容を提供しました。プログラムの最後には、伊達医学科長から修了書の授与を行いました。

学生たちは、大阪、京都などで日本文化を体験した後、帰国します。

今回の訪問により、浙江大学と本学の関係がさらに深まり、教職員間や学生間で交流が発展していくことや、医療系キャンパスのさらなるグローバル化につながることが期待されます。

【本件問い合わせ先】
大学院医歯薬学総合研究科等学務課
TEL:086-235-7020





http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id8670.html


2019年7月26日金曜日

【情報発信】口の中のアセトアルデヒド濃度に影響する舌表面の細菌の特徴を解明!

◆発表のポイント

  • 口の中において、発がん性物質であるアセトアルデヒドの濃度が高い人は、舌表面の細菌の数や種類が多いことがわかりました。
  • 口の中のアセトアルデヒド濃度が高い人の舌表面には、Genella sanguinis、Veillonella parvula、Neisseria flavescensと呼ばれる細菌が多く存在することを解明しました。
  • 口の中の細菌の種類とがんとの関係を明らかにする研究に役立つ可能性が示されました。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)の森田学教授と横井彩医員、岡山大学病院新医療研究開発センターの丸山貴之助教、同病院医療支援歯科治療部の山中玲子助教、および北海道がんセンターの秦浩信歯科口腔外科医長らのグループは、口の中のアセトアルデヒド濃度に影響する舌表面の細菌の特徴を解明しました。
 
舌表面に生息する細菌の数や種類が多くみられる人、さらに、Genella sanguinis、Veillonella parvula、Neisseria flavescensと呼ばれる細菌の占める割合が高い人は、口の中のアセトアルデヒド濃度が高いことを発見しました。これらの研究成果は6月13日、ブラジルの歯学雑誌「Journal of Applied Oral Science」に掲載されました。
 
アセトアルデヒドは発がん性があるため、舌表面にこれらの細菌が多く認められることは、舌がんをはじめとする口腔がんの発症に影響するかもしれません。今後は、がん患者や、飲酒・喫煙者などを対象に舌上の細菌の特徴を解明していきます。

◆研究者からのひとこと
私たちの舌表面には多くの細菌が存在しています。その種類は700以上あり、複雑なネットワークを築いています。人に悪影響を及ぼす細菌が増えて、口の中の環境破壊を引き起こさないよう、人と細菌とが共生できる社会(口腔内環境)を目指していきます。
横井医員

■論文情報
論 文 名:Relationship between acetaldehyde concentration in mouth air and characteristics of microbiota of tongue dorsum in Japanese healthy adults: a cross-sectional study
邦題名「健康な日本人における口の中のアセトアルデヒド濃度と舌表面における細菌叢の特徴について(横断研究)」
掲 載 紙:Journal of Applied Oral Science
著  者:Aya Yokoi, Daisuke Ekuni, Hironobu Hata, Mayu Yamane-Takeuchi, Takayuki Maruyama, Reiko Yamanaka, Manabu Morita
D O I:10.1590/1678-7757-2018-0635.


<詳しい研究内容について>

口の中のアセトアルデヒド濃度に影響する舌表面の細菌の特徴を解明!

<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
教授 森田 学
(電話番号)086-235-6712
(FAX)086-235-6714




http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id647.html

【情報発信】ビールやパンの製造にも使われる出芽酵母を用いて、食品成分のがん細胞増殖抑制作用に関わる鍵分子を同定

◆発表のポイント
  • 独自に開発した出芽酵母遺伝子マルチコピーライブラリーを用いて、食品成分のがん細胞増殖抑制作用に関わる分子を同定しました。
  • 同定された分子の一つMis12を介した、パパイヤやクレソンに由来する辛味成分BITCによるがん細胞の増殖抑制メカニズムも明らかにしました。
  • 食品成分のもつ機能性/安全性への理解に貢献するだけでなく、本研究で明らかとなったがん細胞の増殖を抑制する機構に基づいた新たな薬剤の開発が期待されます。
 
岡山大学大学院環境生命科学研究科の中村宜督教授、守屋央朗准教授、同大学院ヘルスシステム統合科学研究科の佐藤あやの准教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部の叶奈緒美助教(岡山大学大学院環境生命科学研究科博士後期課程修了、元日本学術振興会特別研究員)らの研究グループは、ビールやパンの製造にも使われる出芽酵母の全遺伝子を1種類ずつ複数コピー発現させる独自のライブラリーを用いて、食品成分ベンジルイソチオシアネート(BITC)のがん細胞増殖抑制作用に関わる分子を複数個同定しました。
 
さらに、同定された分子の一つMis12が、食品成分ベンジルイソチオシアネート(BITC)による細胞周期進行の遅延を介した増殖抑制において重要な役割を果たすことを明らかにしました。
 
本研究で明らかとなったがん細胞の増殖を制御するメカニズムは、がん治療の新しい薬剤の開発に貢献することが期待されます。また、本研究の成果は食品成分のもつ健康機能や安全性の科学的理解に大きく貢献することが期待されます。
 
さらに、本研究により確立された出芽酵母スクリーニングシステムは、安価かつ容易に選択性の高い結果が得られるため、今後、さまざまな機能性食品成分を対象に、標的遺伝子の同定や遺伝子制御ネットワークに関する研究にも広く使用されることが期待されます。
 
本研究成果は、6月20日に英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)に掲載されました。

■論文情報等
論文名:Yeast screening system reveals the inhibitory mechanism of cancer cell proliferation by benzyl isothiocyanate through downregulation of Mis12
邦題名「酵母スクリーニングシステムから発見されたベンジルイソチオシアネートのMis12下方調節を介したがん細胞増殖抑制機構」
掲載誌:Scientific Reports
著者:Naomi Abe-Kanoh, Narumi Kunisue, Takumi Myojin, Ayako Chino, Shintaro Munemasa, Yoshiyuki Murata, Ayano Satoh, Hisao Moriya & Yoshimasa Nakamura
DOI: 10.1038/s41598-019-45248-2

発表論文はこちらからご確認できます。

 
<詳しい研究内容について>
ビールやパンの製造にも使われる出芽酵母を用いて、食品成分のがん細胞増殖抑制作用に関わる鍵分子を同定

<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
教授 中村 宜督
(電話番号)086-251-8300 (FAX番号)086-251-8388


徳島大学大学院医歯薬学研究部 実践栄養学分野
助教 叶 奈緒美
(電話番号)088-633-7450 (FAX番号)088-633-9427




http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id646.html


【情報発信】「がん患者だって子どもを持ちたい」生殖機能温存・妊孕性温存についてのがん患者向けパンフレットが完成

◆発表のポイント
  • がんの化学療法や放射線療法により、将来、子どもを持つための能力(妊孕性)が低下してしまうことがあります。このため、がん治療前に精子や卵子、卵巣などを凍結保存しておく「生殖機能温存・妊孕性温存」が行われています。
  • その可能性と限界を知ってもらうため、「がん治療を受ける患者さん」へ向けての冊子を作成しがん診療を行う医療施設への配布を始めました。

女性が妊娠するには、卵巣や子宮が重要な役割を果たします。また、男性が子どもを持つためには、精巣の中で作られる精子が必要です。がんの治療である化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法を行うと、これらの妊娠に必要な臓器がダメージを受け、機能が低下してしまう場合があります。

これからがんの治療を受ける患者やそのご家族は、がん治療のことで頭がいっぱいとなり、将来の子どものことまで考えられないかもしれません。しかし、生殖医療技術の発達とともに、卵子・精子・胚(受精卵)の凍結保存や、卵巣自体の凍結保存により、生殖機能・妊孕性を温存することが可能になっています。

近年、医学の進歩とともに、がんを克服し、その後に子どもを持つことを希望する方々が増えています。もちろん、生殖機能温存・妊孕性温存の方法にも限界があり、全てのがん患者が行うことができるわけではありません。しかし、このような方法があること自体を知らないまま、妊孕性を失ってしまったことを後悔する方もあります。

今回、岡山大学病院リプロダクションセンター、岡山大学大学院保健学研究科では、がんの治療に向かう患者とご家族のために、パンフレット「将来、子どもを持つことについて知りたい方とその家族へ がん治療の前に知っておきたい生殖機能温存・妊孕性温存治療のこと」を作成しました。がん診療を行う医療施設への配布を始めています。

このパンフレットが、生殖機能温存・妊孕性温存について知るきっかけとなり、悔いなくがん治療に向かうこと、また、一部には、がん克服後に子どもを持つことにつながればと思います。また、がん治療に関わる医師や看護スタッフにも、がん患者の妊孕性温存について知っていただければと思います。

◆研究者からのひとこと
岡山大学病院リプロダクションセンターでは、がん患者の妊孕性温存治療を行うとともに、この治療を広く知っていただくための活動をしています。
この冊子は、岡山県妊孕性温存治療に関する研修事業と岡山大学SDGs(持続可能な開発目標)推進事業の助成により作成しました。
「がんと生殖医療ネットワークOKAYAMA」代表
  岡山大学病院リプロダクションセンター センター長
  岡山県不妊専門相談センター センター長
中塚幹也


<詳しい研究内容について>
「がん患者だって子どもを持ちたい」生殖機能温存・妊孕性温存についてのがん患者向けパンフレットが完成

<お問い合わせ>
岡山大学大学院保健学研究科 中塚研究室 教授
岡山大学生殖補助医療技術教育研究(ART)センター
中塚幹也
(電話番号)086-235-6538(FAX兼)


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id644.html

【情報発信】高強度レーザーで天王星内部の“金属の水”の性質を解明

◆発表のポイント
  • 仏日の国際協力により、世界を代表する高強度レーザー施設を相補的に使った実験を行いました。
  • 水を主成分とする惑星模擬試料をレーザーで圧縮したところ、光を反射する金属状態になりました。また、試料が炭素を含む場合に反射率が上昇することがわかりました。
  • 天王星や海王星の強い磁場は、このような金属的な流体中の電流が起源だと考えられます。
 
太陽系の惑星のうち最も外側にある天王星と海王星は、水を主な成分としており、そこに炭素や窒素を含む分子(メタンやアンモニア)が少し混じっていると考えられています。これらの惑星は、地球の数十倍の強さの磁場をつくる源を内部に持っていますが、その発生のメカニズムは大きな謎でした。
 
岡山大学惑星物質研究所の奥地拓生准教授、大阪大学大学院工学研究科の尾崎典雅准教授らの研究グループは、仏日を代表する二つの高強度レーザー施設を相補的に使って、この謎を解くための実験を行いました。
 
実験では、水を主成分として、炭素や窒素を含む三種類の液体を混合した試料を、レーザーを使って強く圧縮しました。この手法で300万気圧に達する惑星内部の圧力をうまく発生できるのですが、それはナノ秒という短い時間しか維持されません。独自の計測技術により、液体試料の性質をこの短時間のうちに計測したところ、それらは光を反射する金属の状態になっていました。
 
また、炭素を含む場合に反射率は顕著に上昇しました。この結果から、惑星内部にある磁場の源が“金属の水”に流れる電流であり、そこに含まれるメタンが分解して生成した炭素イオンが水の性質に影響を与えていることがわかりました。
 
本研究成果は7月12日英国時間午前10時(日本時間12日午後6時)に、英国の学術誌「Scientific Reports」のOnline Publicationとして掲載されました。


◆研究者からのひとこと
惑星のことを知りたいという気持ちには国境がありませんでした。アイディアを駆使すれば、45億kmも離れた惑星の内部を地球で調べられることに、学生たちも興奮していました。日本と欧州のたくさんの国の人たちと一緒に、同じ目標の研究をすることができて、とても楽しかったです。
奥地准教授


■論文情報
論 文 名:Laser-driven shock compression of "synthetic planetary mixtures" of water, ethanol, and ammonia掲 載 紙:Scientific Reports著  者:Marco Guarguaglini, Jean-Alexis Hernandez, Takuo Okuchi, Patrice Barroso, Alessandra Benuzzi-Mounaix, Mandy Bethkenhagen, Riccardo Bolis, Erik Brambrink, Martin French, Yohei Fujimoto, Ryosuke Kodama, Michel Koenig, Frederic Lefevre, Kohei Miyanishi, Norimasa Ozaki, Ronald Redmer, Takayoshi Sano, Yuhei Umeda, Tommaso Vinci, and Alessandra RavasioD O I:10.1038/s41598-019-46561-6U R L:https://www.nature.com/articles/s41598-019-46561-6

<詳しい研究内容について>
高強度レーザーで天王星内部の“金属の水”の性質を解明

<お問い合わせ>
岡山大学 惑星物質研究所
准教授 奥地拓生
(電話番号)0858-43-1215
(FAX)0858-43-2184

大阪大学 大学院工学研究科
准教授 尾崎典雅
(電話番号)06-6879-7760



http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id641.html


【情報発信】創立70周年記念国際シンポジウム 「持続可能な開発目標(SDGs)のための日米若手人材育成交流に向けて」を開催

岡山大学は今年度、全米トップクラスの大学生・院生が日本語と日本文化を集中的に学ぶ、米国務省の「重要言語奨学金(CLS)プログラム」の受入先に国立大学として初めて選ばれました。これを受け7月6日、本学創立70周年記念行事の一環として、「持続可能な開発目標(SDGs)のための日米若手人材育成交流に向けて」と題した国際シンポジウム(主催:岡山大学、共催:米国・ミシガン大学日本研究センター)を本学創立五十周年記念館で開催しました。

槇野博史学長のあいさつ後、CLSプログラムを運営する米国アメリカン・カウンシルズのデビッド・パットン理事長が「次世代のリーダーを育成する-国際教育を通じた持続可能な開発目標の推進」、米国ミシガン大学日本研究センターの筒井清輝所長が「ミシガン大学日本研究センターと岡山フィールドステーション」と題して基調講演を行いました。

続いて、6人のパネリストによるパネルディスカッション1、2を実施。パネルディスカッション1は横井篤文副学長(特命(海外戦略)担当)をファシリテーターとして、槇野学長、パットン理事長、平下文康文部科学省文部科学戦略官(国際)・日本ユネスコ国内委員会副事務総長、CLSプログラム学生2人、岡山大学学生1人が登壇し、「日米交流における人材育成について」と題して、日米双方で、これからのSDGsを推進する人材育成と交流の在り方について意見を交換しました。パネルディスカッション2は、大原美術館の大原あかね理事長がファシリテーターを務め、伊原木隆太岡山県知事、筒井所長、CLSプログラムアシスタントディレクターのアンドリュー・マックロウ氏、CLSプログラム学生2人、岡山大学学生1人が、「地域に学ぶ人材育成について」をテーマに、地域に焦点を当てた活発な議論を行いました。

最後に本学の佐野寛理事(教学担当)・総括副学長があいさつ。高校生、大学生をはじめ企業関係者、行政関係者、大学関係者など約200人が参加しました。

またシンポジウムに先立ち、パネリストのパットン理事長及びマックロウ氏が槇野学長を表敬訪問しました。槇野学長、佐野理事、横井副学長、木村邦生副学長(国際担当)、グローバル人材育成院の横井博文教授らとシンポジウムのテーマであるSDGsのための若手人材育成交流について意見交換。パネリストらは、槇野学長が紹介した本学で行われているSDGsの取り組みに強い関心を示していました。

本シンポジウムは、戦後、アメリカの日本人と日本文化を理解するための日本研究拠点として、国内では唯一岡山に設置された「米ミシガン大学日本研究センター岡山分室(Okayama Field Station)」の開設70周年(2020年)を間近に控えていることを受け、新たな日米の両国関係と相互理解を深化発展させるために、SDGsを枠組みとする岡山地域のフィールドを活かした次世代人材育成や研究交流、地域交流に視点を置き開催されたものです。今回のシンポジウム、訪問を通して、本学並びに地域におけるSDGsについての理解を深めるとともに、取り組みがさらに活性化していくことが期待されます。

【本件問い合わせ先】
国際部国際企画課
TEL: 086-251-7048




http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id8635.html


【情報発信】プレート内大陸-海洋境界部でのマグマ発生メカニズムを解明:マントルプルームなしのプレート内火山形成モデル

◆発表のポイント
  • 世界の主要な火山は、①プレート拡大部(海嶺)、②プレート収束部(海溝)、③プレート内部のマントルプルームが上昇する場、で形成されています。
  • アフリカ大陸西部沖大西洋に分布するプレート内火山の発生が、過去のアフリカ大陸の分裂時に生じた地下構造に原因があることを発見しました。
  • 大陸の分裂によって形成されたプレート内の大陸-海洋境界が、世界の第4の火山形成の場として重要であることを提案しました。
 
Belay I.G.博士(岡山大学大学院自然科学研究科博士課程地球惑星物質科学専攻単位取得退学)、田中亮吏教授、北川宙助教、小林桂教授、中村栄三教授の研究チーム(参考:https://pml.misasa.okayama-u.ac.jp)は、過去の大陸分裂によって生じた大陸-海洋境界部における火山形成モデルを提案しました。本研究結果はArticleとして7月9日の英国時間午前10時(日本時間午後6時)、英国国際科学雑誌「Nature Communications 」に掲載されました。
 
火山形成の場は、プレート境界部、プレート拡大部、プレート内ホットスポット火山地域に分類されます。ホットスポット火山のうち、ハワイなどの海洋島火山は、外核-マントル境界などから上昇した熱いマントルプルームによって形成されたと考えられています。本研究では、アフリカ西部沖大西洋に分布する、カメルーン火山列、カナリア諸島、カーボベルデ諸島などの海洋島火山が、マントルプルームによって形成されたのではなく、過去にアフリカ大陸と南アメリカ大陸が分裂した際に形成された、アフリカ大陸縁辺部の地下構造に起因した小規模なマントル対流によってできたことを明らかにしました。
 
この結果は、プレート内の大陸-海洋境界が世界の第4の火山形成の場であることを示す重要な成果です。


◆研究者からのひとこと
本研究成果は、惑星物質研究所で長年にわたって築き上げられた、世界的にもユニークな「地球惑星物質総合解析システム」を駆使することによって導かれました。本システムの開発に携わってきた全ての方々に感謝します。(Belay 博士・田中教授)
Belay 博士・田中教授


■論文情報
論文名:Origin of ocean island basalts in the West African passive margin without mantle plume involvement掲載誌:Nature Communications著者:Iyasu Getachew Belay, Ryoji Tanaka, Hiroshi Kitagawa, Katsura Kobayashi, Eizo NakamuraDOI: 10.1038/s41467-019-10832-7URL: https://www.nature.com/ncomms/

<詳しい研究内容について>
プレート内大陸-海洋境界部でのマグマ発生メカニズムを解明:マントルプルームなしのプレート内火山形成モデル


<お問い合わせ>
岡山大学 惑星物質研究所
教授 田中亮吏
(電話番号)0858-43-3748(直通) (FAX)0858-43-2184




http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id640.html


【情報発信】関東圏同窓会会合「岡大懇話会」(令和元年度第1回)を開催

岡山大学の全学同窓会組織「岡山大学Alumni」活動の一つとして、関東圏同窓生有志で構成される「岡大懇話会」の令和元年度第1回目の会合が5月31日、東京都千代田区で開催されました。

同会は、「いつか会」と同様に、本学東京オフィスの協力のもとAlumni東京支部が主催しています。同支部の活動の輪を広げていく上で、各学部同窓会メンバーを中心に学部を超えて同窓生が集い、情報交流を行う場です。本年度1回目となる今回は、さまざまな学部・大学院から初参加者2人を含めた21人の同窓生が参加しました。

幹事役を務める長谷川伸城氏(法学部卒)の司会により進行。はじめに、文経学部同窓会東京支部長を務める中門弘氏による乾杯が行われました。その後、本学の宮道力准教授・東京オフィスマネージャー(法学部卒)が、東京オフィスの近況について紹介。東京駐在の佐藤法仁副理事・URA(歯学部卒)が、5月19日に岡山で開催された「岡山大学創立70周年記念式典」や大学の近況などを、「岡山大学MONTHLY DIGEST」を示しながら報告しました。

参加者の近況報告では、小長啓一Alumni会長(法文学部 現法学部卒)が、現在表面化している米中貿易摩擦問題や国内の政治情勢の見方などについての私見を述べました。

最後に、Alumni東京支部前幹事である土岐彰氏(前医学部同窓会東京支部長)の「岡大懇話会の交流を深めつつ、岡山大学を盛り上げていきましょう」という呼び掛けに参加者全員が賛同し、創立70周年となる記念すべき日の31日に開催された、「令和」初の岡大懇話会は閉会となりました。

同会は、本学同窓生ならば出身学部・研究科を問わず、どなたでも参加することができます。次回は9月上旬(会場:23区内を予定)に開催する予定です(お問い合わせは東京オフィスまでお願い申し上げます)。

◯参考ニュース
 ・
関東圏同窓会会合「岡大懇話会」(平成30年度4回)を開催(2019年2月8日)


【本件問い合わせ先】
岡山大学東京オフィス オフィスマネージャー・准教授 宮道力
TEL:03-6225-2905




http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id8655.html

【情報発信】岡山大学・アメリカ国務省「重要言語奨学金(CLS)プログラム」歓迎式典を挙行

岡山大学は、アメリカ国務省「重要言語奨学金(CLS)プログラム」の派遣先に国立大学として初めて採択され、6月14日から8月10日までの8週間、米国務省により選抜された全米トップクラスの大学生・大学院生26人が本学で日本語と日本文化を集中的に学びます。そのスタートとして6月17日、本学国際交流会館で歓迎式典を挙行しました。

歓迎式典では、槇野博史学長は自身が留学経験によって楽天的になれ、日本文化を見つめ直すことができたことを紹介し、「期待と不安があるかと思いますが、どうか一歩踏み出して積極的に学んでください」と式辞。CLS学生一人ひとりが出身地や好きな日本語などを簡単に自己紹介した後、学生代表のデイビッド・アンダーソンさんが「異文化交流を通じてより視野や見識を広げ、さまざまな視点から世界を捉えられる人材となれるよう、この岡山の地で充実した8週間を過ごします」とあいさつしました。

CLSプログラムでは、日本語・日本文化の授業のほか、本学が推進するSDGs(持続可能な開発目標)をテーマに、岡山県内の自治体・企業などの協力を得てさまざまな課外活動が行われるほか、県内の一般家庭への2泊3日のホームステイなども行われます。

●CLSプログラム
国家安全保障や経済発展の観点から重要な役割を果たす、ロシア語や中国語など世界15言語の人材養成を狙いに、米国務省が実施しています。国内では2010年に受け入れがスタートし、同プログラムは国際教育・交流を専門とする米非営利団体American Councils for International Education(アメリカン・カウンシルズ)によって運営されています。

【本件問い合わせ先】
グローバル人材育成院/国際部留学交流課
TEL:086-251-7045


【情報発信】巨大な集光アンテナをもつ光化学系Iの立体構造を解明~太陽光エネルギーの高効率利用に前進~

◆発表のポイント
  • 緑藻は巨大な集光アンテナタンパク質複合体を持ち、太陽の光エネルギーを効率的に利用することが知られていましたが、その詳細な構造は不明でした。
  • 緑藻の光化学系I-集光アンテナタンパク質超複合体の立体構造を、クライオ電子顕微鏡を用いて決定しました。
  • 本研究成果は、光合成が高い効率で光エネルギーを利用する仕組みの解明や、人工光合成実用化に不可欠な光エネルギーを効率的に利用する技術の開発に重要な知見を与えると期待されます。


岡山大学異分野基礎科学研究所の高橋裕一郎教授、菅倫寛准教授、小澤真一郎特任助教と大阪大学蛋白質研究所の宮崎直幸助教(現:筑波大学)らの共同研究グループは、光合成において、光エネルギーを効率的に吸収し二酸化炭素を糖に変換するために必要な還元力を作り出す、緑藻の光化学系I―集光アンテナタンパク質超複合体の立体構造を、クライオ電子顕微鏡を用いて原子レベルの解像度で決定することに成功。光合成において太陽光エネルギーを効率よく利用するために必要となる、集光色素とタンパク質の詳細な立体配置を明らかにしました。


本研究成果はResearch Articleとして6月10日(英国時間)、英国の科学雑誌「Nature Plants」に掲載されました。


光化学系I―集光アンテナタンパク質超複合体は、太陽光のエネルギーを極めて高い効率で吸収・利用しています。本研究成果は、弱い光でも効率的に光合成をする緑藻が光を巧みに利用する仕組みを明らかにしただけでなく、人工光合成実現のために必須な高効率の太陽光エネルギー利用技術を開発するための重要な知見を与えると期待されます。

◆研究者からのひとこと
この研究は試料調製の技術、最先端のクライオ電子顕微鏡の技術、光合成膜タンパク質の構造解析の技術の3つの技術が「三位一体」となり、はじめて達成することができました。また、研究では中国のグループと厳しい競争関係にありましたが、高橋教授らを含む研究者の20年間以上にわたる研究成果の蓄積があったので、何とか発表に間に合ってほっとしています。(菅、小澤)



 ■論文情報
論 文 名:“Structure of the green alga PSI supercomplex with a decameric LHCI”
「緑藻PSIと10量体LHCIとの超複合体の立体構造」
掲 載 紙:Nature Plants
著  者:Michihiro Suga, Shin-Ichiro Ozawa, Kaori Yoshida-Motomura, Fusamichi Akita, Naoyuki Miyazaki, and Yuichiro Takahashi
D O I:https://doi.org/10.1038/s41477-019-0438-4


<詳しい研究内容について>

巨大な集光アンテナをもつ光化学系Iの立体構造を解明~太陽光エネルギーの高効率利用に前進~


 <お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所
准教授 菅 倫寛 (すが みちひろ)
(電話番号)086-251-7877
(FAX) 086-251-8502

教授 高橋 裕一郎(たかはし ゆういちろう)
(電話番号)086-251-7861
(FAX) 086-251-7876





http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id632.html


【情報発信】FOCUS ON(Vol.19)「ウイルスの未知の生態を探る」 発行

岡山大学は6月7日、さまざまな分野のユニークな研究者に焦点を当て、研究内容やその人柄を紹介する「FOCUS ON」のVol.19を発行しました。

岡山大学は11学部・1プログラム、8研究科、3研究所を有しており、幅広い学問領域をカバーしています。

今回は、資源植物科学研究所の鈴木信弘教授の研究活動について紹介しています。

自分では殻をもたず、他のウイルスの殻を奪うウイルス―。さながらヤドカリのようなこのウイルスを発見したのは、資源植物科学研究所の鈴木信弘教授。ウイルスは単純な構造ながら増殖・感染の仕方や起源など未知の点が多く、鈴木教授はウイルスを利用して植物の病気を防除する研究を進めながら、その謎に満ちた生活環・生態を探っています。

FOCUS ON(Vol.19):ウイルスの未知の生態を探る

<Back Issues>
Vol.18:
超高温・高圧の再現実験で地球の内部に迫る
Vol.17:肝臓からみる心血管疾患へのアプローチ
Vol.16:実社会における法の「現場」を追う
Vol.15:老い・看取り・死と向き合う
Vol.14:『夢をつかむ力』を養う美術教育
Vol.13:光による生命現象の制御-「光をくすりに」を目指して-
Vol.12:AIがもたらす情報セキュリティの新時代
Vol.11:電気抵抗ゼロの物質「超電導体」を創り出す
Vol.10:アオコ問題解決の鍵を握るバイオ燃料電池
Vol.9:古墳に隠された背景


<参考:研究系web国際広報>
Okayama University e-Bulletin
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)

 【本件問い合わせ先】
総務・企画部広報課
TEL:086-251-7292


岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。





http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id8557.html