2019年9月30日月曜日

【情報発信】死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~

死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~

 
2019年09月30日
◆発表のポイント
  • 死にまね(死んだふり)は哺乳類、魚類、鳥類、両生類、爬虫類、甲殻類、ダニ類、昆虫と動物に広く普遍的にみられる行動で、天敵による捕食を回避するために動物が進化させた防衛戦略です。
  • 「死にまねの長さ」を制御する遺伝子群の探索を実施し、チロシン代謝系のドーパミン関連遺伝子が関与することを世界で初めて明らかにしました。
  • ドーパミン関連遺伝子を操作することで、生物の動きを決める仕組みの解明が期待できます。
 
 
岡山大学大学院環境生命科学研究科の宮竹貴久教授、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの矢嶋俊介教授、玉川大学農学部の佐々木謙教授の共同研究グループは、米・小麦類の世界的重要害虫であるコクヌストモドキにおいて、死にまね時間の異なる育種系統間で次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析1)を行いました。
 
その結果、死んだふりをする系統としない系統では、発現の異なる518個の遺伝子が存在し、このうちチロシン代謝経路に存在するドーパミン関連遺伝子群において、系統間で大きな発現の差が見られることを明らかにしました。これらの系統はもともと同じコクヌストモドキの数個体から、刺激を与えたときに死んだふりをする集団と、どれだけ刺激を与えても死にまねしない集団を育種したもので、両者では動きかたや歩行軌跡が大きく異なり、前者は天敵の攻撃回避に長け、後者は交尾に長けるため、野外では両者の共存が見られることがわかっています。
 
生物の動きや生き延びるための行動を支配する主要な遺伝子がドーパミンであることを、今回、世界に先駆けて明らかにしました。本研究成果は、9月30日英国時間午前10時(日本時間30日午後6時)に英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)に掲載されました。


◆研究者からのひとこと
アンリ・ルアール・ファーブルが昆虫記のなかで、死にまねは生物が陥る一種の仮死状態であり、適応的な意味はあるのかと疑問を投げかけて以来、百余年が経ちました。現代の生物学では、生物の行動を司る仕組みを遺伝子のレベルで解明できる時代になりました。なぜ生物は、こんな行動をするのか?その進化的な意味から体内で起きている仕組みや、ゲノムの変化までを統合的に理解する時代がやってきたのです。
宮竹教授


■論文情報
論文名:Transcriptomic comparison between beetle strains selected for short and long durations of death feigning.
邦題名「死んだふりを長くする系統としない系統間でのトランスクリプトームによる比較」
掲 載 誌:Scientific Reports著  者: Hironobu Uchiyama, Ken Sasaki, Shogo Hinosawa, Keisuke Tanaka, Kentatou Matsumura, Shunsuke Yajima, Takahisa MiyatakeD O I:10.1038/s41598-019-50440-5

<詳しい研究内容について>
死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~

 

<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
教授 宮竹 貴久
(電話番号)086-251-8339 

FAX番号)086-251-8388


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