医療ビッグデータを活用し、免疫チェックポイント阻害剤が誘発する副作用のハイリスク患者を明らかに
- 進行したがんへの治療効果が期待されている「免疫チェックポイント阻害剤(ICI:Immune Checkpoint Inhibitors」には、一部で重篤な副作用が報告されていましたが、その具体的な発生リスク因子は分かっていませんでした。
- 約 200万件の副作用症例を解析し、ICIは心筋炎の報告が他の薬剤に比べ高頻度であることと、75 歳以上の高齢者や女性で特に ICI 関連心筋炎の報告頻度が高い傾向が認められました。
- 今後の ICI 関連心筋炎に対する治療方針に有益な知見を与えると考えられます。
岡山大学医歯薬学総合研究科医薬品臨床評価学分野の小山敏広助教、徳島大学臨床薬理学分野の座間味義人准教授、新村貴博大学院生、石澤啓介教授、徳島大学病院薬剤部の岡田直人博士、生命薬理学分野の福島圭穣助教、AWA サポートセンターの石澤有紀准教授らの研究グループは、約 200 万症例の医療ビッグデータを解析することで、免疫チェックポイント阻害剤関連心筋炎のリスクが高い患者群を明らかにしました。この研究成果は日本時間 8 月 22 日付で米国医学雑誌 「JAMA Oncology」に掲載されました。
進行したがんへの治療効果が期待されている免疫チェックポイント阻害剤(ICI:Immune Checkpoint Inhibitors)の使用にあたっては、発症する頻度は非常に低いものの重篤な有害事象として心筋炎が生じる可能性が報告されていました。本研究は国際的に大規模な副作用データベースを分析したことにより、稀な心筋炎の発症頻度は他の薬剤より高いという知見を得ました。
さらに、ICI 使用者に関して、年齢や性別が心筋炎の発現に与える影響を評価したところ、75 歳以上の高齢者や女性で特に ICI 関連心筋炎の報告頻度が高い傾向が認められました。ICI 関連心筋炎のリスク因子に関する知見は少ないため、本研究結果は、今後の ICI 関連心筋炎に対する治療方針に有益な知見を与えるものであると考えられます。
今回の研究は国際的な副作用データベースを用いて、発症頻度の低い有害事象に関連する潜在的なリスク因子を明らかにしました。この成果は、より安全な薬物治療に貢献する知見を提供するものです。また、今後は他の医療データベースを用いた臨床研究や基礎科学研究と組合せることで、研究を発展させることを期待しています。 | 小山助教 |
■論文情報
論 文 名:Factors associated with immune checkpoint inhibitor-related myocarditis.
掲 載 紙:JAMA Oncology
論文種別:Research Letter
著 者:Yoshito Zamami, Takahiro Niimura, Naoto Okada, Toshihiro Koyama, Keijo Fukushima, Yuki Izawa-Ishizawa, Keisuke Ishizawa.D O I:10.1001/jamaoncol.2019.3113
Factors Associated With Immune Checkpoint Inhibitor–Related Myocarditis
<詳しい研究内容について>
医療ビッグデータを活用し、免疫チェックポイント阻害剤が誘発する副作用のハイリスク患者を明らかに
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
助教 小山敏広
(電話番号)086-235-6585
図:国際的な自発報告副作用データベースの解析から得られた副作用発症のリスク患者や医療関係者、製薬企業等から米国 FDA に報告された副作用症例約 200 万件を用いて、各 ICI の使用が心筋炎の発症に与える影響を解析しました。
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