2019年9月17日火曜日

【情報発信】イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明

イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明

 
2019年09月12日


◆発表のポイント
  • 植物は土壌環境の変化に対応するために、根にカスパリー帯と呼ばれる物理的なバリアーを形成し、無秩序なミネラルの流入や流出を抑制します。
  • イネの根のカスパリー帯形成に必要な遺伝子OsCASP1を発見し、長年不明だったカスパリー帯形成の分子機構を明らかにしました。
  • 植物の養分吸収機構の理解を深めることができ、ミネラルの過不足が生じる不良土壌での植物の生育の改善や、作物の栄養価の向上などに応用できます。


岡山大学資源植物科学研究所の馬建鋒教授らの研究グループは、イネの根のカスパリー帯の形成に必要な遺伝子を世界で初めて突き止め、選択的養分吸収における役割を解明しました。本研究成果は9月5日、米国の植物科学のトップジャーナル「The Plant Cell」にOnlineにて公開されました。

根にあるカスパリー帯は病原菌や有害ミネラルの流入阻止、選択的な養水分の吸収制御に重要な役割を果たしています。イネの場合、根の外皮と内皮に二つのカスパリー帯があり、本研究ではOsCASP1という遺伝子が、内皮のカスパリー帯の形成に関わることを発見。OsCASP1を破壊すると、内皮のカスパリー帯の形成が不完全となり、ミネラル吸収のコントロールができなくなって植物の生育が阻害されてしまいました。
 
本研究成果により、長年不明だったカスパリー帯形成の分子機構が明らかとなりました。これにより植物の養分吸収機構の理解を深めることができ、ミネラルの過不足が生じる不良土壌での植物の生育の改善や、作物の栄養価の向上などへの応用が期待されます。
 

 
◆研究者からのひとこと
中国のグループ(元教え子)との共同研究で、長年不明だったイネのカスパリー帯の形成機構を明らかにすることができ、うれしく思います。これまでカスパリー帯の存在自体は教科書にも書いてあり、知られていましたが、植物の最適な生育に必要な選択的養分吸収にとって非常に重要な役割を果たしていることを、自分たちの実験で証明できました。
馬教授

 


■論文情報
論 文 名:OsCASP1 is required for Casparian strip formation at endodermal cells of rice roots for selective uptake of mineral elements掲 載 紙:The Plant Cell著  者:Zhigang Wang, Naoki Yamaji, Sheng Huang, Xiang Zhang, Mingxing Shi, Shan Fu, Guangzhe Yang, Jian Feng Ma and Jixing XiaD O I:10.1105/tpc.19.00296U R L:http://www.plantcell.org/content/early/2019/09/04/tpc.19.00296.abstract


<詳しい研究内容について>
イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明


 <お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
教授  馬 建鋒 
(電話・FAX)086-434-1209


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id659.html

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