農業の現場では、さまざまなウイルスによって経済的・社会的な損失が発生しており、世界的に大きな問題となっています。これらの状況を打開するため、さまざまなウイルス感染から植物を守る早期診断法や感染防止の薬剤などの研究開発が強く求められています。
今回のプラットフォームは、昨年3月に開催した「第13回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム~園芸学とウイルス学の異分野融合から新たな研究開発を目指す~」に引き続き、近い研究分野である「園芸学」とのコラボで、植物防疫の異分野融合研究の加速を目的として開催されました。
講演では、はじめに農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」のコンソーシアム・プログラム・マネージャー(研究管理総括役)を務める佐藤法仁学長特命(研究担当)・URAが「わが国におけるウイルス病害の現状と異分野融合共同研究の取り組み」と題して、わが国の農林業のウイルス被害とその対策のための新しい取組である異分野融合研究について講演しました。
続いて、同事業の補完研究機関でもある琉球大学農学部の関根健太郎准教授が「網羅的ウイルス検出技術と高速ウイルス検出技術」について、同事業の取り組みの成果を踏まえて講演しました。
またウイルス対策の最新の知見を基に岩手県農業研究センター環境部の小山田早希技師が「岩手県における植物ウイルス病診断の取り組み」について、農研機構果樹茶業研究部門の八重樫元主任研究員が「果樹の病原糸状菌を病気にするウイルス」について、日本大学生物資源科学部の井村喜之准教授が「ウイルスを攻撃しない抵抗性のメカニズム」について、東京農工大学農学部の藤田尚子研究員が「ウイルスベクター入門~黒穂菌感染による花の性転換現象の解析を例に~」についてそれぞれ講演。参加したさまざまな分野の研究者や企業、自治体関係者などとともに議論を重ねました。
会の最後に静岡大学農学部の中塚貴司助教が「いろいろな研究が行われている中で周囲を見渡すと近い研究や連携すると研究が大きく進む、あるいは今までにない発想が生まれ、それが新しい研究として生まれることもある。異分野融合というキーワードをもとに日頃の研究を見てみる機会になれば幸いです」と取りまとめを行いました。会場からは、「異分野融合の大切さを実感できるとてもいい機会であり、ぜひ来年度も引き続きこのような異分野融合の会を開催してほしい」などの意見が出されました。
今後もさまざまな研究分野との活発な異分野融合研究を進め、そこで得られた叡智の普及と共に社会で問題となっているウイルス対策を精力的に押し進めて行きます。
なお、今回のプラットフォームは、「園芸学会平成29年度春季大会」の小集会との連携開催として行われました。
農林水産省革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究):http://www.okayama-u.ac.jp/user/ibunyapj/index.html
<参考:革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム(過去3回)>
第15回 日中の叡智でウイルスから動物と植物を守る
第16回 革新的技術で牛白血病ウイルス(BLV)から牛を守る
第17回 農工異分野融合研究開発によるウイルス対策の最前線
わが国におけるウイルス病害の現状と異分野融合共同研究の取り組みについて講演する佐藤法仁学長特命(研究担当)・URA
網羅的ウイルス検出技術と高速ウイルス検出技術について講演する琉球大学農学部の関根健太郎准教授
岩手県における植物ウイルス病診断の取り組みについて講演する岩手県農業研究センター環境部の小山田早希技師
果樹の病原糸状菌を病気にするウイルスについて講演する農研機構果樹茶業研究部門の八重樫元主任研究員
ウイルスを攻撃しない抵抗性のメカニズムについて講演する日本大学生物資源科学部の井村喜之准教授
黒穂菌感染による花の性転換現象の解析を例にウイルスベクター入門について講演する東京農工大学農学部の藤田尚子研究員
会の取りまとめを行う静岡大学農学部の中塚貴司助教
会場となった日本大学生物資源科学部(神奈川県藤沢市)
0 件のコメント:
コメントを投稿