岡山大学大学院自然科学研究科(工)ナノバイオシステム分子設計学研究室の妹尾昌治教授らの研究グループは、がん幹細胞が血管の細胞へ分化して腫瘍内で血管系を形成することを証明しました。がん幹細胞が宿主由来の血管内皮細胞を巻き込みながら、自らも血管内皮細胞や疑似血管を構成していくことは、従来の腫瘍血管が形成される概念を進化させる世界的にも新しい発見です。
本研究成果は9月末、がん研究の国際科学雑誌『American Journal of Cancer Research』に公開されます。
妹尾教授らの研究グループは2012年、iPS細胞からがん幹細胞を世界で初めて作成することに成功。多種多様ながん細胞を調整できることを示し、がん患者の組織内に存在する細胞との関連を研究しています。
本研究成果によって、腫瘍血管を標的とする新たな制がん剤の開発が進めば、より効果的な制がん剤開発につながると期待されます。
【本研究のポイント】
● 腫瘍細胞の血管内皮細胞への分化や疑似血管の構成に、がん幹細胞が関与していると推測されていたが、詳しい関連性は分かっていなかった。● 一つのがん幹細胞から血管内皮細胞と疑似血管細胞の両方が作り出され、腫瘍内での血管系が形成されることを、マウスのiPS細胞を用いて世界で初めて証明した。● 腫瘍の血管を標的とする新たな制がん剤開発の基盤を提供し、より効果的な制がん剤開発への応用が期待される。
【図】腫瘍内の血管系
がん幹細胞が、腫瘍周囲の血管の内皮 細胞の成長を促すだけでなく、血管内皮細胞や疑似血管に分化し、腫瘍内の血管ネットワークを構成している。
<詳しい研究内容について>
がん幹細胞は腫瘍内の血管を形成する~マウスiPS細胞により世界で初めて証明~
<論文情報>
タイトル:iPSC-derived Cancer Stem Cells Provide a Model of Tumor Vasculature著 者:Marta Prieto-Vila, Ting Yan, Anna Sanchez Calle, Neha Nair, Laura Hurley, Tomonari Kasai, Hiroki Kakuta, Junko Masuda, Hiroshi Murakami, Akifumi Mizutani, Masaharu Seno掲 載 誌:American Journal of Cancer Research (ISSN: 2156-6976)巻 号:Volume 6, Number 9
<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(工)
ナノバイオシステム分子設計学研究室
教授 妹尾 昌治
(電話番号)086-251-8216
(FAX番号)086-251-8216
(URL) http://www.cyber.biotech.okayama-u.ac.jp/senolab/
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id417.html
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