2019年6月7日金曜日

【情報発信】オレンジ色酸化鉄の開発に初めて成功―微生物が関与したプロセスを利用―

◆発表のポイント
  • 酸化鉄は赤色、黒色や褐色の顔料として古くから使われてきましたが、これらの色調以外は知られていませんでした。
  • 微生物が関与するプロセスを用いた従来とは全く異なる作製方法を開発することで、オレンジ色酸化鉄(ベンガラ)を世界で初めて作製することに成功しました。
  • 新色は色褪せしにくい無機顔料であり、かつ深みのある色調を示すことから、高級車塗装など画期的な新規顔料として広い利用が期待されます。
 
酸化鉄は赤色、黒色や褐色の顔料として古くから使われてきましたが、これらの色調以外は知られていませんでした。岡山大学の髙田潤名誉教授(岡山大学大学院自然科学研究科非常勤研究員)と同大大学院自然科学研究科の田村勝徳客員研究員、中西真助教、藤井達生教授の研究グループは、酸化鉄の従来とは全く異なる作製方法を開発。これを利用してアルミニウムと硫黄を含有する微小鞘状水酸化鉄を作製した後に、高温で加熱することによってオレンジ色酸化鉄(ベンガラ)を世界で初めて作製することに成功しました。2013年に発表した研究成果を発展させ、2018年に結実した研究です。
 
この水酸化鉄を作る新しい作製方法では、微生物が関与するプロセスを利用します。すなわち、微生物が作る有機質の鞘(さや)をテンプレート(鋳型)にして、これを鉄源、塩化アルミニウムおよび硫酸亜鉛を含む溶液中で保持することによって、アルミニウムと硫黄を含む鞘状水酸化鉄を作製するというものです。硫酸亜鉛の処理量に依存して、完成した酸化鉄の色調は赤色からオレンジ色へと変化します。このオレンジ色酸化鉄は、従来の常識とは異なる新規な色調を示すことから、高級車塗装など画期的な新規顔料として広い利用が期待されます。


◆研究者からのひとこと
古くから赤色顔料として使用されてきた酸化鉄は、柿右衛門の紅として広く世界に知られています。また国内の歴史的建造物の塗色にも使用され、日本人になじみ深い材料です。本成果は材料の起源に遡った研究成果からの一例ですが、活用範囲は顔料に留まらず植物を病害から守る消毒薬や高活性触媒、電池材料としても期待されています。
高田名誉教授

 
■論文情報(参考・本研究が本格化した時点での基本文献)
論文名:Acidic amorphous silica prepared from iron oxide of bacterial origin
掲載紙:ACS Applied Materials & Interfaces vol. 5, pp.518-523, 2013
著 者:Hideki Hashimoto, Atsushi Itadani, Takayuki Kudoh, Yasushige Kuroda, Masaharu Seno, Yoshihiro Kusano, Yasunori Ikeda, Makoto Nakanishi, Tatsuo Fujii, Jun Takada
D O I:10.1021/am302837p


<詳しい研究内容について>

オレンジ色酸化鉄の開発に初めて成功―微生物が関与したプロセスを利用―


<お問い合わせ>
岡山大学研究推進機構 産学連携・技術移転本部
本部長 渡邊 裕
(電話番号) 086-235-6675
(FAX) 086-235-6679
岡山大学 名誉教授 
髙田 潤




http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id624.html


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