- 歯周病に対する再生医療は、薬剤が投与部位から容易に流れてしまうことから、適応症が垂直性骨欠損に限られ、全ての症例に適応することは困難です。
- 創傷治癒に重要な役割をもつ塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)にコラーゲンに結合する能力を持たせた「CB-bFGF」を用いて、これまで困難であった水平性骨欠損に対する再生療法を行うことで、歯槽骨の再生を促進しました。
- これまでの再生医療では困難であった症例に対しても、CB-bFGFが有効に作用することが期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野の中村心大学院生・髙柴正悟教授、同研究科病原細菌学分野の松下治教授・美間健彦助教、北里大学医学部整形外科学の内田健太郎講師らの研究グループは、増殖因子の一つである塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)をコラーゲンに結合できるように改変した「CB-bFGF」が、bFGFと比較して失った歯槽骨の再生をより促進することを発見しました。
歯周病は口腔内細菌の感染によって、歯槽骨を始めとする歯の周囲の組織が破壊される病気です。破壊された歯周組織の再生のために再生療法が行われますが、薬剤や材料が投与部位から容易に流れてしまうために、これまでは全ての症例へ使用できず、特に水平性の歯槽骨欠損へ適応することは困難でした。
今回の研究成果では、ラットの水平性歯槽骨欠損モデルに対して、CB-bFGFをコラーゲン粉末と共に投与したところ、水平的に歯槽骨の再生を促進することが明らかになりました。本研究成果により、従来よりも再生療法の適応症を拡大できることが期待されます。
本研究成果は3月19日に、米国の国際学術誌「Journal of Periodontology」のオンライン版に掲載されました。
◆研究者からのひとこと
本研究を進めるにあたって、たくさんのご支援・ご指導をいただいた高柴教授をはじめ、研究チームのメンバーに感謝します。今後も研究を継続し、将来的に臨床の場へ届けることができるように頑張りたいと思います。 | 中村さん 髙柴教授 |
■論文情報
論文名:Acceleration of bone regeneration of horizontal bone defect in rats using collagen-binding basic fibroblast growth factor combined with collagen scaffolds
掲載紙:Journal of Periodontology
著者:Shin Nakamura, Takashi Ito, Kentaro Okamoto, Takehiko Mima, Kentaro Uchida, Yasir Dilshad Siddiqui, Masahiro Ito, Masako Tai, Keisuke Okubo, Keisuke Yamashiro, Kazuhiro Omori, Tadashi Yamamoto, Osamu Matsushita, Shogo Takashiba
D O I:10.1002/JPER.18-0674
<詳しい研究内容について>
コラーゲンに結合する増殖因子を用いて、歯槽骨の再生促進に成功 歯周病の再生医療の可能性拡大へ
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
教授 髙柴 正悟
(電話番号) 086-235-6675
(FAX) 086-235-6679
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id623.html
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