2019年1月15日火曜日

【情報発信】食道がんに対する放射線治療を併用した腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」の臨床研究の最終報告

◆発表のポイント 
食道がんに対する放射線併用「テロメライシン」ウイルス療法の臨床研究が終了しました。
大きな副作用もなく13例中8例で食道の腫瘍が消失し、安全性と有効性が確認できました。
手術や標準的な抗がん剤治療が難しい食道がん患者などに役立つことが期待されます。
米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO-GI)で発表予定です。
 
 
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学分野の藤原俊義教授、白川靖博准教授らの研究グループは、食道がんに対する腫瘍選択的融解ウイルス製剤「テロメライシン」(注1)を用いた放射線併用ウイルス療法の臨床研究を推進してきましたが、13例の食道がん患者に治療を実施して臨床研究を終了しました。
この度、その安全性と有効性に関する研究成果を、米国サンフランシスコで開催される「米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO-GI)」(期間:2019年1月17日(木)~19日(土))で発表いたします。
 
本臨床研究では、基礎研究で認められたテロメライシンが放射線治療の効果を強める現象が確認され、大きな副作用もなく13例中8例で食道の腫瘍が消失しました。現在、岡山大学発ベンチャー オンコリスバイオファーマ(株)(注2)の企業治験も進行中です。
 
テロメライシンは、手術や抗がん剤治療が難しい高齢の食道がん患者などで、低侵襲で安全な治療法となることが期待されます。


◆研究者からのひとこと
1992年に米国テキサス州のMDアンダーソンがんセンターでウイルスを使ったがん治療の研究に関わって25年以上になります。1999年には、岡山大学で日本初のウイルスによるp53遺伝子治療を開始しました。2002年から開発を始めたテロメライシンが、やっと患者さんに役立てるかもしれないところまで来ました。やさしい治療を待つ食道がん患者さんに、早く届けられるように頑張っていきます。引き続きよろしくお願いします!
藤原俊義教授


■補足・用語説明
注1:テロメライシンについて

「テロメライシン」は、風邪ウイルスの一種であるアデノウイルスのE1領域に、多くのがん細胞で活性が上昇しているテロメラーゼという酵素のプロモーターを遺伝子改変によって組込み、がん細胞中で特異的に増殖してがん細胞を破壊することができるようにしたウイルス製剤です。
「テロメライシン」がヒトのがん細胞に感染すると一日で10万~100万倍に増え、がん細胞を破壊します。一方、「テロメライシン」は正常組織細胞にも同様に感染はしますが、テロメラーゼ活性がないためウイルスは増殖せず、正常組織での損傷は少ないと考えられます。
オンコリスバイオファーマ(株)が米国で実施した、がん患者に対する「テロメライシン」単独の臨床試験においても、重篤な副作用は認められておらず、投与部位での腫瘍縮小効果などの有効性が認められました。

 

注2:オンコリスバイオファーマ社について
オンコリスバイオファーマ社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、腫瘍溶解ウイルスのプラットフォームをベースに、がんのウイルス療法テロメライシンとその次世代版の開発を進めると共に、がんの早期発見または術後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャン等を揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・術後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。
詳細はwww.oncolys.comをご覧ください。


<詳しい研究内容はこちら>

食道がんに対する放射線治療を併用した腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」の臨床研究の最終報告

 
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)消化器外科学
教授 藤原俊義
(電話番号)086-235-7257
(FAX番号)086-221-8775


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id593.html

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