・2013~2015年の3年間において、日本国内の急性咽頭炎による外来受診のうち、GAS迅速抗原検査が実施されたのは全体の5.6%でした。
・急性咽頭炎の59.3%に抗菌薬が処方され、処方された抗菌薬のうち第一選択薬であるペニシリン系抗菌薬が選ばれたのは10.8%でした。
・本研究における日本国内の急性咽頭炎治療における抗菌薬の使用状況に関する取り組みは、薬剤耐性菌対策の基礎的知見の一つとして活用されることにより、保健関連SDGsの達成にも貢献が期待されます。
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の狩野光伸教授と大学院医歯薬学総合研究科で岡山大学次世代研究育成グループ代表の小山敏広助教は、複数の研究機関と医療機関の研究者(札幌医科大学樋之津史郎教授、大阪大学萩谷英大助教、徳島大学病院座間味義人准教授、千葉大学病院三上奈緒子氏、岡山大学病院千堂年昭教授、北村佳久准教授、建部泰久氏)との共同研究において、これまで不明であった日本国内の咽頭炎に対する抗菌薬治療に関連する要因を明らかにしました。
急性の喉の痛みを主症状とする急性咽頭炎は臨床的に頻度の高い疾患です。細菌による急性咽頭炎の多くはA 群β 溶血性連鎖球菌(GAS) が起炎菌であり、この場合、適切な治療がなされないと重篤な続発症につながることがあり、迅速抗原検査によって判別することが重要です。また、治療にはペニシリン系抗菌薬が第一選択薬として推奨されています。
本研究では、2013~2015年の日本国内における127万回の急性咽頭炎による外来受診を調査しました。その結果、GAS迅速抗原検査が実施されたのは全体の5.6%であることが判明しました。
一方で、抗菌薬は全体の59.3%に処方され、そのうち第一選択薬であるペニシリン系抗菌薬が選択されたのは10.8%でした。
本研究成果は、2019年1月16日に日本の医学誌「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載されます。
◆研究者からのひとこと
今回の研究は国内5 大学・大学病院の研究者の協力を得て、薬剤耐性菌対策の基礎的知見の一つとして、現在の医療内容に関する知見を提供するものです。薬剤耐性菌対策は保健関連SDGs とも密接に連携して進められていますので、本研究の取り組みが国際的なSDGs の達成へ貢献することができることを期待しています。 | 小山助教 |
■論文情報
論文名:Association between rapid antigen detection tests and antibiotics for acute pharyngitis in Japan: A retrospective observational study.
掲載紙:Journal of Infection and Chemotherapy
著者:Yusuke Teratani, Hideharu Hagiya, Toshihiro Koyama*, Ayako Ohshima, Yoshito Zamami, Yasuhisa Tatebe, Ken Tasaka, Kazuaki Shinomiya, Yoshihisa Kitamura, Toshiaki Sendo, Shiro Hinotsu, Mitsunobu R. Kano.
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jiac.2018.12.005
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1341321X18304756?via=ihub
<詳しい研究内容はこちら>
喉の痛みをもたらす急性咽頭炎の抗菌薬治療における検査の実施状況を明らかに
<お問い合わせ>
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科
教授 狩野光伸
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
助教 小山敏広
(電話番号)086-235-6585
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id594.html
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