- 人工的に常在菌(注1)を欠いた無菌マウスから得られた骨芽細胞(骨を作る細胞)を培養したところ、過剰な石灰化(注2)を認めました。
- 通常マウスの骨芽細胞においては石灰化を抑制する遺伝子の発現が促進されていました。
- これは常在菌が骨芽細胞にエピジェネティック(注3)な変化を誘発し、遺伝子発現を制御することを示唆しています。
人為的に常在菌を欠損させた無菌マウスの骨格と、常在菌を持つ通常マウスを比較したところ、通常マウスの骨格は無菌マウスより顕著に大きく、一方で無菌マウスは過度な石灰化を伴っていることがわかりました。常在菌を持つ通常マウスでは活性化された破骨細胞が多く存在していました。また、これらのマウスから単離した骨芽細胞では、通常マウスにおいて石灰化を抑制するオステオカルシン遺伝子の発現が促進されていました。
本研究は、常在菌が骨芽細胞にエピジェネティックな変化を誘発し、遺伝子発現を制御することを示唆しており、常在菌が免疫応答だけでなく骨形成および骨代謝を促進していることを示しています。これらの研究成果は6月23日、スイスの生化学雑誌「Molecules」に掲載されました。
なかなか細胞培養が上手くいかなくて徹夜を繰り返すなど、とても大変だったのですが、大好きな骨に関する研究でしたし、多くの先生方のご助力もあり、やり遂げることができました。今回の経験を今後の研究に生かしていけたらと思います。 | 内田さん |
■論文情報
論 文 名:Commensal microbiota enhance both osteoclast and osteoblast Activities.
掲 載 紙:Molecules
著 者:Yoko Uchida, Koichiro Irie, Daiki Fukuhara, Kota Kataoka, Takako Hattori, Mitsuaki Ono, Daisuke Ekuni, Satoshi Kubota and Manabu Morita
D O I:10.3390/molecules23071517
■補足・用語説明
・(注1)常在菌:
身体に存在する多種多様な微生物であり、主に病原性を示さないものを指します。基本的に健康に影響を与えず、共生関係にあります。
・(注2)石灰化:組織にリン酸カルシウムが沈着することで、骨格形成を促進します。
・(注3)エピジェネティック:
DNAの塩基配列に変化がなくても、タンパク質などの分子の修飾現象によって、後天的に遺伝子発現が変化することです。
<詳しい研究内容について>
常在菌が正常な骨形成を促進するメカニズムを発見
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
教授 森田 学
(電話番号)086-235-6712
(FAX)086-235-6714
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id567.html
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