岡山大学は9月25日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.58を発行しました。
2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者等にニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)薬理学分野の江口傑徳助教と藤原敏史大学院生らのがん細胞が細胞外小胞を使い、分子標的抗体医薬を排出することを発見した研究成果について紹介しています。
江口助教らは、ハーバード大学医学部のスチュアート・カルダーウッド(Stuart K. Calderwood)博士らの共同研究チームとともに、口腔扁平上皮がん細胞が、分子標的抗体医薬の一種であるセツキシマブ(Cetuximab)を細胞外小胞(Extracellular Vesicles:EV)とともに分泌することを明らかにしました。
頭頚部がんや進行性大腸がんの多くは、上皮成長因子受容体(EGFR)の働きで進行します。このためEGFRを狙い撃ちできる抗体医薬であるセツキシマブが臨床で使われていますが、頭頚部がんの一種である口腔扁平上皮がん細胞にセツキシマブを作用させると、がん細胞の悪性形質転換を抑制できたものの、その抑制効果は不完全でした。
今回、この不完全抑制の原因を探ったところ、口腔扁平上皮がん細胞は、直径150 nm程度の小胞にセツキシマブを載せて細胞外へと分泌することが明らかになりました。
この研究によって明らかになった「がん細胞が、細胞外小胞を使って薬を排出する」という現象は、がん研究、創薬、がん医療に一石を投じるものであり、さらなる研究開発や新たな治療法への応用が期待されます。
岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある医療分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術として、より早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.58:Insights Into Mechanisms Governing the Resistance to the Anti-Cancer Medication Cetuximab
<Back Issues:Vol.50~Vol.57>
Vol.50:Iron removal as a potential cancer therapy (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)大原利章助教)
Vol.51:Potential of 3D nanoenvironments for experimental cancer (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)江口傑徳助教)
Vol.52:A protein found on the surface of cells plays an integral role in tumor growth and sustenance (大学院保健学研究科 廣畑聡教授)
Vol.53:Successful implantation and testing of retinal prosthesis in monkey eyes with retinal degeneration (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦准教授、大学院自然科学研究科(工学系)内田哲也准教授)
Vol.54:Measuring ion concentration in solutions for clinical and environmental research (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 紀和利彦准教授)
Vol.55:Diabetic kidney disease: new biomarkers improve the prediction of the renal prognosis (大学院医歯薬学総合研究科(医学系) 和田淳教授、三瀬広記医員)
Vol.56:New device for assisting accurate hemodialysis catheter placement (大学院医歯薬学総合研究科(医学系) 大原利章助教)
Vol.57:Possible link between excess chewing muscle activity and dental disease (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)皆木省吾教授、加藤聖也医員)
<参考>
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」
【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id7940.html
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