2019年3月5日火曜日

【情報発信】室温下、不活性なメタンを選択率94%でメタノールに変換 ―メタノール経済社会構築にもつながる新しい発見―

◆発表のポイント
  • 難酸化反応として知られるメタンの活性化(酸化)を室温で行い、94%の選択率でのメタノールの直接合成に成功しました。
  • ゼオライト(無機化合物)中にイオン交換した亜鉛(Zn)イオンを活性点として、一般には不安定なZn-O•ラジカル種を創出したことが特徴です。
  • エネルギー問題解決への指針となる可能性が示唆されます。
 
岡山大学大学院自然科学研究科客員研究員(JSTさきがけ研究員)の織田晃博士、同研究科の大久保貴広准教授、黒田泰重特任教授らの研究グループは京都工芸繊維大学の湯村尚史教授、小林久芳名誉教授らのグループと共同で、亜鉛イオン交換ゼオライトを利用することによって、室温という温和な条件下で反応不活性なメタンを活性化することによってメタノールを直接合成することに成功しました。
 
本研究の成果は米国化学会(ACS)誌「Inorganic Chemistry」のSupplementary Cover Arts の論文の一つとして1月7日、同誌のオンライン版に掲載されました。

酸素によるメタンの酸化反応は化学分野の難酸化反応の一つとして知られ、室温でのその活性化によるメタノールの合成は化学者にとって“夢の反応”の一つです。本研究では、天然にも存在し、洗剤などにも利用されているゼオライトという無機化合物に対して、よく知られている亜鉛イオンをイオン交換してこの試料を処理し、ラジカルであるZnO・(オキシル種)を創出した後、その種を活性点としてメタンからメタノールを室温で合成しました。
 
本研究により、メタンからメタノールを室温で合成可能な無機材料開発への指針が与えられます。このような研究によって、メタンからメタノールの室温合成が可能となれば、エネルギー問題解決への貢献も期待できます。
 
 
◆研究者からのひとこと
本研究はJSTさきがけ研究員の織田晃博士が10年ほど前(理学部4年生時)に見いだした現象がやっと日の目を見た研究成果です。その間に合計13報の論文が採択されました。一連の研究は今回のメタンの活性化を室温で行うという新規な方法の発見へとつながる画期的な研究成果となりました。彼は、この長い研究期間にストレスで酒を飲み過ぎ、こけて、骨折するなどの大事件も経験しました。一方でこの間に、仁科賞・研究科長賞の受賞や学振DC1、PDへの採用、さらにさきがけ研究として採択、さきがけ研究員(岡山大学自然研究科客員研究員)として採用などの栄誉を手にしました。また、2月1日付で名古屋大学に助教として採用されました。岡山大学で“世界に誇れる”研究ができることを示してくれました。これからのさらなる活躍を期待しています。
織田研究員

黒田特任教授


■論文情報
論 文 名:Room-Temperature Activation of the C–H Bond in Methane over Terminal ZnII–Oxyl Species in MFI Zeolite: A Combined Spectroscopic and Computational Study of the Reactive Frontier Molecular Orbitals and Their Origins

掲 載 紙:Inorganic Chemistry
著  者:Akira Oda, Takhiro Ohkubo, Takashi Yumura, Hisayoshi Kobayashi, and Yasushige Kuroda
D O I:10.1021/acs.Inorgchem.8b02425
U R L:
http://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.Inorgchem.8b02425


<詳しい研究内容はこちら>
室温下、不活性なメタンを選択率94%でメタノールに変換―メタノール経済社会構築にもつながる新しい発見―

<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(理学部化学科)
特任教授 黒田 泰重
TEL: 086-251-7844
FAX: 086-251-7853



http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id599.html



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