- ニワトリ胚の羽の伸長を遅らせる遅羽性遺伝子は、初生ヒナの雌雄鑑別を容易化する有用遺伝子として養鶏で広く利用されていますが、その作用機序や、摂食時に健康に影響を与えるかどうかは不明でした。
- 遅羽性遺伝子が、機能的なプロラクチン(ホルモンの一種)受容体量を変化させることで、羽の形成に影響を及ぼしている可能性を突き止めました。
- 本研究は、フロンティアサイエンティスト特別コース生の「先取りプロジェクト研究」・「サイエンス・インカレ応募研究」として、理学部の支援を受けて実施されました。
理学部フロンティアサイエンティスト特別コース生の岡村彩子さん(生物学科4年生)とコース修了生の増本絢音さんは、大学院自然科学研究科分子内分泌学研究室の竹内栄教授らの助言と協力、広島大学日本鶏資源開発プロジェクト研究センターの都築政起教授、竹之内惇博士らの協力を得て実施した「先取りプロジェクト研究」・「サイエンス・インカレ応募研究」において、遅羽性遺伝子の作用機序の解明に成功しました。
本研究成果は2018年12月27日、国際比較内分泌学会連合の機関誌「General and Comparative Endocrinology」のオンライン版に掲載されました。
ニワトリ初生ヒナの主翼羽の伸長には、生えそろうのが速い速羽性(野生型)と遅羽性の遺伝形質があります。計画的交配により、生まれてくるオスをすべて遅羽性に、メスをすべて速羽性にできることから、遅羽性遺伝子は雌雄鑑別を容易化する有用遺伝子として、養鶏において広く利用されています。しかし、この遺伝子が遅羽を引き起こす仕組みについては不明で、摂食時の安全性に影響を与えないかどうかの懸念もありました。
本研究では、遅羽性遺伝子が胚での羽伸長を抑制する一方で、孵化後には羽伸長を促進することに着目し、遅羽性遺伝子の働きの詳細を解析しました。その結果、遅羽性遺伝子が機能的なプロラクチン受容体量を変化させることで、羽伸長速度を変化させている可能性が示唆されました。
本研究成果は、羽形成や換羽の仕組みの解明、鶏肉の「食の安全・安心」につながることが期待されます。
◆研究者のたまごからのひとこと
クリスマスにはたくさんのローストチキンが食されます。「遅羽性遺伝子の働き方が分からないまま食べていて大丈夫なの?」と思ったのが、この研究を始めたきっかけでした。本研究では、鶏肉は大丈夫そうだという結論に達し、一安心しています。 研究生活では、早起きして実験に取り組んだりと大変なことも多いですが、実験データを基に仕組みを考えるのはとても楽しくウキウキします。大学院でも引き続き研究に励みたいと思います。 | 岡村さん |
■論文情報
論 文 名:Changes in prolactin receptor homodimer availability may cause late feathering in chickens
掲 載 紙:General and Comparative Endocrinology 272 (2019) pp. 109-116
著 者:Ayako Okamura, Ayane Masumoto, Atsushi Takenouchi, Toshiyuki Kudo, Sayaka Aizawa, Maho Ogoshi, Sumio Takahashi, Masaoki Tsudzuki, and Sakae Takeuchi
D O I:10.1016/j.ygcen.2018.12.011
U R L:https://doi.org/10.1016/j.ygcen.2018.12.011
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「研究者のたまご」がひよこの有用遺伝子の作用機序を解明~換羽の仕組み解明や食の安全・安心につながる発見~
<お問い合わせ>
大学院自然科学研究科(理学部)
教授 竹内 栄
(電話番号)086-251-7868
(FAX) 086-251-7876
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id602.html
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