- 米国が打ち上げた試料回収ミッションを担う宇宙探査機オシリス・レックス(OSIRIS-Rex)は小惑星ベンヌ(Bennu、101955)に接近し観測を行いました。観測によると、小惑星ベンヌに天然衛星は存在せず、塵の量も少ないことが判明しました。
- 小惑星ベンヌの回転速度は、太陽放射の散乱と熱放射の放出に起因するヤルコフスキー・オキーフ・ラジエフスキー・パダック(YORP)効果により、加速し続けていることを解明。
- 小惑星ベンヌに接近して得られた観測結果は、事前に地上で望遠鏡により測定した観測結果とほとんど差異が見られませんでした。
現在、NASAのサンプルリターン・ミッションを担っている宇宙探査機オシリス・レックス(OSIRIS-Rex、Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, and Security–Regolith Explorer)は、22世紀に地球と衝突する可能性のある地球近傍小惑星ベンヌ(101955)を周回しています。岡山大学惑星物質研究所のMatthew Izawa助教を含むオシリス・レックス研究チームは、宇宙探査機オシリス・レックスからの観測結果と望遠鏡による観測結果とを組み合わせた結果、ヤルコフスキー・オキーフ・ラジエフスキー・パダック(YORP)効果により、小惑星ベンヌが加速していることを明らかにしました。また、宇宙探査機オシリス・レックスは小惑星ベンヌ(Bennu、101955)に接近して観測した結果、小惑星ベンヌに天然衛星は存在せず、塵の量も少ないことを明らかにしました。ただし、後の航行画像は、小惑星近傍に微粒子の存在を示唆しており、今後のさらなる観測が必要と考えられます。
本研究成果は3月19日英国時間午後5時30分(日本時間20日午前2時半)、英国の学術誌「Nature Communications」のAdvance Online Publicationとして掲載されました。
◆研究者からのひとこと
小惑星ベンヌに対する宇宙探査機オシリス・レックスの接近観測は、地上観測と宇宙望遠鏡観測を検証するためのすばらしい機会になりました。また、YORP効果による加速が直接観測できたことなど、非常に興味深い成果もありました。太陽光と熱放射によるごくわずかな力が巨大な小惑星の動作を変化させているというのは、とても面白いですね。 | Matthew Izawa助教 |
■論文情報
論 文 名:The operational environment and rotational acceleration of asteroid (101955) Bennu from OSIRIS-REx observations(日本語:オシリス・レックスの観測による小惑星ベンヌ(101955)の動作環境と回転加速度)
掲 載 紙:Nature Communications
著 者:C.W. Hergenrother, C.K. Maleszewski, M.C. Nolan, J.-Y. Li, C.Y. Drouet d’Aubigny, F.C. Shelly, E.S. Howell, T.R. Kareta, M.R.M. Izawa, M.A. Barucci, E.B. Bierhaus, H. Campins, S.R. Chesley, B.E. Clark, E.J. Christensen, D.N. DellaGiustina, S. Fornasier, D.R. Golish, C.M. Hartzell, B. Rizk, D.J. 7 Scheeres, P.H. Smith, X.-D. Zou, D.S. Lauretta, and the OSIRIS-REx Team
D O I:10.1038/s41467-019-09213-x
<詳しい研究内容はこちら>
試料回収を担う宇宙探査機オシリス・レックスのデータを解析 小惑星ベンヌが加速していることを解明
<お問い合わせ>
岡山大学 惑星物質研究所
助教 Matthew Izawa
(電話番号)0858-43-1215(代表)
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