- 緑色蛍光タンパク質(GFP)は、遺伝子を導入することでさまざまな細胞につくらせることができ、生体分子の観察や分析の手段として生命科学研究に幅広く用いられています。
- 大腸菌でGFPを作らせると、性質と化学構造がわずかに異なる2種類のGFPができることを発見しました。
- GFPを用いる生命科学研究において、重要な基盤情報となります。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の中谷隆寛さん(17年まで大学院生)、安井典久准教授、山下敦子教授と薬学部の田村一晟さん(薬学科5年生)のグループは、緑色蛍光タンパク質 (Green Fluorescent Protein, GFP) を大腸菌につくらせると、性質がわずかに異なる2種類のGFPができ、両者の違いは、質量がわずか1グラムの6兆分の1のさらに1000億分の1 (1.66 × 10-27 kg, 1Da) だけ異なるGFPの化学構造にあることを明らかにしました。
これらの研究成果は3月18日英国時間午前10時(日本時間同日午後7時)、英国の国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されます。
GFPは、その遺伝子をさまざまな生物に導入すると、それらの生体内でGFPがつくられ蛍光観察できることから、生命科学研究に幅広く利用されています。研究グループは、大腸菌でGFPをつくらせると、表面荷電がわずかに異なり、電気泳動などの生化学的方法で分離される2種類のGFPができることを発見しました。詳しい解析により、それらのGFPは質量でわずか1 Daの違いしかなく、違いの原因として、GFPタンパク質の最後に位置する238番目のアミノ酸残基が遺伝情報どおりのリシンのものと、通常タンパク質を構成するアミノ酸には含まれない6-ヒドロキシノルロイシンのものがあることを明らかにしました。これらの違いは大腸菌でつくらせたときに生じたものと考えられます。
GFPを細胞でつくらせる実験は、さまざまな生命科学研究で行われています。本研究成果は、それらの実験を行うときにGFPが示しうる性質として把握しておくべき基盤情報となります。
◆研究者からのひとこと
この論文は、研究室第1期生で、とびきり実験が上手かった中谷さんが、わずかに違う2種類のGFPを見事に分離して解析、両者の違いを明らかにし、現所属生でやはり実験が上手い田村さんが、重要な詰めの実験であるGFPの蛍光分析を行ってまとまった研究成果です。(山下) | 中谷さん(左)、田村さん |
■論文情報
論 文 名:Specific modification at the C-terminal lysine residue of the green fluorescent protein variant, GFPuv, expressed in Escherichia coli
掲 載 紙:Scientific Reports
著 者:Takahiro Nakatani, Norihisa Yasui, Issei Tamura, Atsuko Yamashita
D o I:10.1038/s41598-019-41309-8
U R L:https://www.nature.com/articles/s41598-019-41309-8
<詳しい研究内容はこちら>
大腸菌に緑色蛍光タンパク質(GFP)をつくらせると、わずかな違いをもつ2種類のGFPができることを発見
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
准教授 安井 典久
教授 山下 敦子
(電話番号・FAX)086-251-7974(山下)
(メール)nyasui@okayama-u.ac.jp(安井)
a_yama@cc.okayama-u.ac.jp(山下)
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