- 歯の根の先端に炎症を起こし顎骨を破壊する根尖性歯周炎は、治療(歯内療法)が技術的に難しく、高い再発率が世界的に問題です。
- 抗炎症性脂質メディエーターのレゾルビンD2(注3)を用いた歯内療法を行うと、歯の根(歯根)の先の炎症を抑えるだけではなく、歯根の先端を閉鎖して顎骨を再生させることが分かりました。
- 本研究成果は、これまでの歯内療法とは異なる革新的な歯内療法の開発・発展につながる可能性があります。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野のYasir Dilshad Siddiqui大学院生・高柴正悟教授・山城圭介助教、岡山大学病院歯周科の大森一弘講師、岡山大学病院新医療研究開発センターの伊東孝助教(現厚生労働省)、米国Forsyth研究所のThomas E. Van Dyke教授らの研究グループは、抗炎症性脂質メディエーターの一つであるレゾルビン D2に歯の神経の病気である根尖性歯周炎の治癒を促進させる新たな効果があることを発見しました。
根尖性歯周炎は歯の根の先端(歯根尖)に炎症を起こして顎骨を破壊する病気の一つで、その治療(歯内療法)は技術的に非常に難しく、高い再発率が世界的に問題となっています。
今回の研究成果は、ラットの根尖性歯周炎モデルを用いて、歯内療法時にレゾルビン D2を根管内に作用させたところ、歯根尖の炎症を抑えるだけではなく、歯根尖の石灰化を誘導し閉鎖することによって、失われた顎骨を再生させることが明らかになりました。本研究成果は、これまでの歯内療法とは大きく異なる革新的な歯内療法の開発・発展につながる可能性を示しています。
本研究成果は2月6日に、スイスの国際学術誌「Frontiers in Immunology」のオンライン版に掲載されました。
本研究を進めるにあたって、たくさんの支援、そして助言をくれた高柴教授はじめ研究チームのメンバーに感謝します。さらなるメカニズムの解明を目指して、岡山大学、そしてパキスタン大学でも研究を続けていきたいと思います。(Yasir Dilshad Siddiqui) | Siddiquiさん(左) 高柴教授(右) |
■論文情報
論文名:Resolvin D2 Induces Resolution of Periapical Inflammation and Promotes Healing of Periapical Lesions in Rat Periapical Periodontitis
掲 載 紙:Frontiers in Immunology
著 者:Yasir Dilshad Siddiqui, Kazuhiro Omori, Takashi Ito, Keisuke Yamashiro, Shin Nakamura, Kentaro Okamoto, Mitsuaki Ono, Tadashi Yamamoto, Thomas E. Van Dyke, Shogo Takashiba
D O I:10.3389/fimmu.2019.00307
<詳しい研究内容について>
抗炎症性脂質メディエーターを用いた新たな歯の根の治療法を開発
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
教授 高柴 正悟
(電話番号)086-235-6675
(FAX)086-235-6679
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id596.html
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