2015年8月21日金曜日

【情報発信】農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」:公益財団法人岩手生物工学研究センターが簡便・迅速なウイルスRNAの検出技術の実用化に成功

公益財団法人岩手生物工学研究センターが簡便・迅速なウイルスRNAの検出技術の実用化に成功

岡山大学が研究拠点を担っている農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」について、本拠点研究分野の補完研究機関である公益財団法人岩手生物工学研究センター(研究計画名「高効率なウイルス・ウイロイドRNA検出技術の開発」)では、網羅的RNAウイルス検出技術「DECS法(DsRNA isolation Exhaustive amplification, Cloning and Sequencing)」(※)の洗練・普及を行い、植物ウイルス病害の感染拡大を未然に防ぎ、農林水産物・食品の安定供給の実現を目指しています。



今般、植物由来のDRBタンパク質(Double-stranded-RNA-Binding protein)の2本鎖RNA結合活性領域の利用により、簡便・迅速なウイルスRNAの検出技術が開発・実用化されました。既知のウイルスの検出だけでなく、検出が困難であった新規のウイルス検出に大きく貢献することが期待されます。

(※)DRBタンパク質を用いて植物ウイルス由来の2本鎖RNAを特異的に検出し、未知のウイルスも含めた感染の有無の判別や、その塩基配列情報を調べることにより、感染ウイルス種を同定する技術(図)。



図1. DRBタンパク質を用いたウイルス2本鎖RNAの検出方法 

<特徴>
・最短2時間でウイルス2本鎖RNAの検出が可能
・100mg(生重量)の試料からウイルス2本鎖RNAの検出が可能

ウイルスは微小であり、電子顕微鏡を用いなければ見ることができない病原体のため、観察による診断は大変困難です。植物に感染するウイルスの大部分は遺伝子暗号をRNAとして持つRNAウイルスであり、これらは植物体中で2本鎖状のRNAを作ります。このウイルス感染時に作られる2本鎖RNAを検出することで、ウイルス感染の有無を判別できます。



従来2本鎖RNAを感染組織から抽出するためには煩雑な操作が必要でした。岩手生物工学研究センターでは、植物の持つ2本鎖RNA結合タンパク質を活用して簡便・迅速に2本鎖RNAを抽出する手法を開発し(参考文献)、「革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム (拠点機関:国立大学法人岡山大学)」のもと、株式会社医学生物学研究所と共同で試薬キット化しました。

詳細は、下記の公益財団法人岩手生物工学研究センターのHPをご覧ください。

http://ppathol.ibrc.or.jp/home/diagnosis



参考文献 Atsumi, G., Sekine, K.-T. and Kobayashi, K. (2015) New method to isolate total dsRNA. Methods in Molecular Biology, 1236:27-37.

お問い合わせ
公益財団法人岩手生物工学研究センター
園芸資源研究部 主任研究員 関根健太郎
(電話番号)0197-68-2911(代表)



公益財団法人岩手生物工学研究センター
園芸資源研究部 植物病態分子研究チーム
(上段左 関根健太郎 主任研究員)




農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」理学・工学との連携による革新的ウイルス対策技術の開発:http://www.okayama-u.ac.jp/user/ibunyapj/index.html

2015年8月13日木曜日

【情報発信】日中の叡智でウイルス感染から家畜を守る「第2回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム」開催

岡山大学は、中華人民共和国黒竜江省ハルビン市にある中国農業科学院ハルビン獣医研究所(Harbin Veterinary Research Institute:HVRI)において、ウイルス感染から家畜を守る研究についてのワークショップ「第2回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム 革新的技術でウイルス感染から家畜を守る-日中叡智共有化ワークショップ-」を7月20~22日に開催しました。


家畜現場では、さまざまなウイルスによる被害により経済的・社会的損失が世界的に問題となっています。そのため、家畜をウイルス感染から守る早期診断や感染防止の研究開発が強く求められています。今回、高度な家畜感染制御技術を有するHVRIとともに、参加した日中双方の当該分野の研究者らが叡智を共有化することで、隣国同士の研究連携や技術開発、社会実装の強化促進を図りました。


日本側からは理化学研究所、農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所、そして本学が参加しました。農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」で、コンソーシアム・プログラム・マネージャー(研究管理総括役)を務める佐藤法仁学長特命(研究担当)・URAが事業説明と革新的なウイルス診断・防除法の研究開発と推進のあり方について紹介しました。


またワークショップ開催後には、HVRIの新研究所の研究施設や付属ワクチン製造企業等も視察し、研究者や企業関係者らと最新の当該分野叡智の共有化とより強力な共同研究や社会実装につながる意見交換を熱心に行いました。


なお、本ワークショップは本学が研究拠点(代表研究者:本学大学院自然科学研究科(工学系)の世良貴史教授を務める農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」において得られた最新研究の叡智を社会に広めるために実施する「革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム」の取り組みとして実施されました。今後も農林畜産水産分野や社会を革新する研究開発を精力的に押し進め、社会実装を目指します。


農林水産省革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究):http://www.okayama-u.ac.jp/user/ibunyapj/index.html


 <参考:革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム>
第1回 網羅的RNAウイルス検出技術DECS法(2015年5月28~29日)




 
ワークショップにおいて話題提供を行った日中の研究者ら
 
 
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話題提供に熱心に聴き入る参加者ら
 
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より強力な共同研究と社会実装の推進につい
てディスカスションする参加者ら
 
 
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ディスカッション参加者ら
 
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ハルビン獣医研究所の研究設備紹介と共同研究利用について意見交換を行う参加者ら
 
 
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会場となったハルビン獣医研究所
 
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ハルビン獣医研究所の新研究所
 
 
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ハルビン獣医研究所の付属ワクチン製造企業



農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」理学・工学との連携による革新的ウイルス対策技術の開発:http://www.okayama-u.ac.jp/user/ibunyapj/index.html

2015年8月6日木曜日

【情報発信】感染症から人類を守る術を見出す 岡山大学感染症制圧研究コア「感染症研究国際展開戦略プログラム」キックオフ・シンポジウム開催

本学は7月16日、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の平成27年度「感染症研究国際展開戦略プログラム」の採択を受けて、本事業の取り組み紹介と共に今後の展開について意見交換を行う岡山大学感染症制圧研究コア「感染症研究国際展開戦略プログラム」キックオフ・シンポジウムを本学鹿田キャンパスのJunko Fukutake Hall(岡山市北区)にて開催しました。

開催あたり森田潔学長から「長年、インド国コルカタ市を拠点に活動してきた岡山大学インド感染症共同研究センターを更に強化しつつ、本学の持つ基礎研究力と岡山大学病院の持つ臨床力の強みを融合し、感染症制圧に寄与していきたい」と挨拶。

来賓挨拶では、AMEDの神田忠仁プログラムスーパーバイザーと文部科学省の小林秀幸先端医科学研究企画官が本事業の方針と成果のあり方について紹介しつつ、本学への期待について述べました。

続いて、佐藤法仁学長特命(研究担当)・URAがモデレーターを務めつつ、岡山大学インド感染症共同研究センターの篠田純男センター長・特任教授がこれまでセンターが独立行政法人国際協力機構(JICA)と共に取り組んで来た下痢症制圧プロジェクトについて紹介。本学大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)の三好伸一教授からは、インド国を拠点とした下痢症感染症の予防・診断・創薬における国際協同研究について紹介しました。

またベトナムを拠点としている長崎大学熱帯医学研究所からは森田公一所長が蚊媒介感染症などの感染症制圧について紹介しました。講演の最後には、AMEDの創薬支援戦略部の榑林陽一執行役・部長からAMEDが進める創薬支援や本事業との協同体制について紹介しました。シンポジウムに参加した教職員、医療従事者、企業関係者などは、迅速かつ効果的な感染症制圧のあり方やそれに伴う人材育成などについて熱心に意見交換を行いました。

閉会の挨拶では、山本進一研究担当理事・副学長が「より効果的な感染症制圧を行うために本学が持つ強みある基礎研究力と臨床医学を融合しつつ、人類の感染症制圧の夢を実現していきたい」と述べ、キックオフ・シンポジウムを閉幕しました。

本学は平成19年9月に文部科学省の「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム」に採択されており、インド西ベンガル州のコルカタ市にあるインド国立コレラ及び腸管感染症研究所(NICED)に岡山大学インド感染症共同研究センターを設置。下痢症の積極的動向調査や安価な経口ワクチンの開発研究、コレラ菌の環境適応に関する研究、下痢原因微生物等の変異、病原性、薬剤耐性に関する研究などを進めています。また、今年は「日印科学技術協力協定締結30周年」であり、本学も国際研究力強化・推進のために連携を深めています。今後、本学の強みあるコア事業として育成しつつ、世界の医療・研究を先導し、人類の発展に全力で貢献していきます。

岡山大学インド感染症共同研究センター:http://wwwcid.ccsv.okayama-u.ac.jp/

開催の挨拶を述べる森田潔学長
 
 
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本事業の概要と方向性について述べるAMEDの神田忠仁プログラムスーパーバイザー
 
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文部科学省が取り組んで来た感染症制圧プログラムについて述べる小林秀幸先端医科学研究企画官
 
 
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岡山大学インド感染症共同研究センターの取り組みを紹介する篠田純男センター長・特任教授
 
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本プログラムで実施する下痢症制圧プロジェクトについて説明する三好伸一教授
 
 
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シンポジウムでモデレーターを務める佐藤法仁学長特命(研究担当)・URA
 
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ベトナムでの取り組みを紹介する長崎大学熱帯医学研究所の森田公一所長
 
 
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AMEDの創薬支援について紹介する榑林陽一執行役・創薬支援戦略部長
 
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熱心に講演に聴き入るシンポジウム参加者ら
 
 
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閉会の挨拶を述べる山本進一研究担当理事・副学長