2016年6月30日木曜日

【情報発信】Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.26 発行

岡山大学は6月22日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」をVol.26を発行しました。

2012年より本学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年4回発行。国際科学雑誌「Science」を扱うAAAS(米国科学振興協会)のメーリングリストを利用し、世界の研究者等にニュースやトピックスを交えて配信し、本学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上を推進しています。

OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、強みある医療系分野の更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行。
 

本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)システム生理学分野の片野坂友紀助教が、心不全の進行を抑制する分子を世界で初めて特定した研究成果を紹介しています。
 

片野坂助教らの研究グループは、心不全の発症・重篤化の過程でNa+/Ca2+交換体(NCX1)の活性が著しく低下していることを発見。低下したNCX1活性を回復させることで、心不全の進行を抑制できることを、遺伝子改変マウスを用いた実験により明らかにしました。今後、細胞外へのCa2+排出系として働くNCX1の活性低下を防ぐ薬剤の開発により、心不全の治療への応用が期待されます。
 

岡山大学は、平成25年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術としてより早く届けられるように研究を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.26:
Protein for preventing heart failure

<Back Issues:Vol.17~Vol.25>
Vol.17:
Cell research shows pathway for suppressing hepatitis B virus (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)加藤宣之教授)
Vol.18:
Therapeutic protein targets liver disease (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)和田淳教授)
Vol.19:
Study links signalling protein to osteoarthritis (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)窪木拓男教授)
Vol.20:
Lack of enzyme promotes fatty liver disease in thin patients (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)和田淳教授、中司敦子助教)
Vol.21:
Combined gene transduction and light therapy targets gastric cancer (大学病院香川俊輔准教授、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)石田道拡医師)
Vol.22:
Medical supportive device for hemodialysis catheter puncture Combined gene transduction and light therapy targets gastric cancer (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)大原利章助教)
Vol.23:
Development of low cost oral inactivated vaccines for dysentery (大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)三好伸一教授)
Vol.24:
Sticky molecules to tackle obesity and diabetes (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)和田淳教授、村上和敏医師)
Vol.25:
Self-administered aroma foot massage may reduce symptoms of anxiety (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)江口依里助教)

<参考>
Okayama University e-Bulletin
//www.okayama-u.ac.jp/user/kouhou/ebulletin/

【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
 



本号で紹介した研究成果を担当した片野坂友紀助教

【情報発信】腫瘍融解ウイルスが骨肉腫に対する抗がん剤治療効果を増強

岡山大学病院新医療研究開発センターの田澤大助教、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学分野の藤原俊義教授、整形外科学分野の尾崎敏文教授らの研究グループは、腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」が、がん細胞内のマイクロRNA-29を増加させ、細胞死を抑制するたんぱく質MCL1を阻害することで、骨肉腫に対する抗がん剤治療の効果を増強させる分子メカニズムを明らかにしました。
 
本研究成果は6 月30日(英国時間午前10時)、英国の科学雑誌『Scientific Reports』(Nature Publishing Group)電子版で公開されました。
骨肉腫に対する抗がん剤治療は、治療効果がある場合に患者の生命予後の改善が期待されます。しかし、治療効果がない場合は生命予後の改善が得られないために抗がん剤の治療効果を増強させることが重要な課題となっています。今後、「テロメライシン」と抗がん剤を用いた治療法の臨床開発を進めていくことで、将来的に骨肉腫患者の生命予後を改善できる新しい治療法の実現が期待されます。
 
 
図:腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」の投与によって、骨肉腫細胞内に転写因子E2F1が増加し、マイクロRNA-29が誘導される。このマイクロRNA-29が細胞死を抑制するたんぱく質MCL1の効果を阻害することで、骨肉腫細胞に対する抗がん剤治療のアポトーシス細胞死の誘導効果を増強させる。


 
<詳しい研究内容について>
腫瘍融解ウイルスが、骨肉腫に対する抗がん剤治療効果を増強~希少疾患の新たな治療法確立へ~

 

<論文情報>
タイトル:Ablation of MCL1 expression by virally induced microRNA-29 reverses chemoresistance in human osteosarcomas.

著  者:Shuhei Osaki, Hiroshi Tazawa, Joe Hasei, Yasuaki Yamakawa, Toshinori Omori,Kazuhisa Sugiu, Tadashi Komatsubara, Tomohiro Fujiwara, Tsuyoshi Sasaki, Toshiyuki Kunisada, Aki Yoshida, Yasuo Urata, Shunsuke Kagawa, Toshifumi Ozaki, and Toshiyoshi Fujiwara.掲 載 誌:Scientific Reports D O I:10.1038/srep28953

発表論文はこちらからご確認いただけます。

 
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
消化器外科学分野 教授 藤原 俊義
(電話番号)086-235-7257
(FAX番号)086-221-8775
(URL)
http://www.ges-okayama-u.com/

http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id403.html

【情報発信】果物輸出促進実証研究が始動

農林水産省が行う「革新的技術開発・緊急展開事業」地域戦略プロジェクトの実証研究型に採択されている、日本の果物を東アジア、東南アジアへ輸出するための生産技術・輸出技術研究プロジェクト(代表:本学大学院環境生命科学研究科の中野龍平准教授。共同実施者として5県、12機関が参加)のキックオフミーティングが6月23~24日、本学東京オフィスで開催され、当該プロジェクトの関係者が参加しました。


キックオフミーティングでは、プログラムオフィサーを務める東京農業大学の馬場正教授、生研支援センターの足立礎リーダーの下、各機関が白熱した議論を繰り広げました。輸出に関しては、相手国の規制などもあるため、農林水産省から農林水産技術会議事務局研究推進課、食料産業局輸出促進課、消費・安全局植物防疫課の担当者も参加し、最新情報の報告と質疑応答をするセミナーも併せて開催しました。


本プロジェクトは、各地域の競争力強化を図るための地域戦略に基づき、研究機関と地元関係者が共同で取り組むものです。先進技術を組み合わせ、生産現場における革新的技術体系の実証研究・普及を支援するとして実施します。


農林水産業の現場は、TPP合意による輸入品の増加などに危機感を抱いており、競争力強化が喫緊の課題とされています。本年5月19日に農林水産業・地域の活力創造本部(本部長:内閣総理大臣)で取りまとめられた「農林水産業の輸出力強化戦略」では、実践的な輸出戦略が挙げられており、官民一体となって競争力強化を進める機運が高まっています。


中野准教授と同研究科の福田文夫准教授は、“果物王国・岡山”を代表する「桃」の船舶輸送を、温度条件や特殊なパッキング材利用などを変化させ、最も適した条件を突き止め、軌道に乗せた実績があります。今回は、他に徳島県、和歌山県、石川県、山梨県も参加し、葡萄、柑橘、柿等さまざまな種類の果物で輸出に適した生産条件や輸出条件を探るという研究計画です。


大学などの研究機関だけでなく、レンゴー、SGシステム(佐川グループ)などの企業が参加し、日本郵船や相互運輸、デンソーなどの協力も得られる予定です。


今後も解決しなければならない課題は次々訪れると想定されるため、国内の生産地と組み、海外での実証をしながら研究大学としての役割を果たしていきます。アジアは、本学に多くの留学生を送り出している地域でもあることから、グローバル戦略の一環としても本プロジェクトに取り組みたいと考えています。


東京オフィスは、このような多様な機関が参加する研究打ち合せや研究計画立案のため、多くの研究者に利用されています。常駐するURAが支援を行いますので、今後も研究者をはじめ多くの方の利用をお待ちしています。

【本件問い合わせ先】
岡山大学東京オフィス URA
TEL: 03-6225-2905

 

研究計画の説明をする中野准教授(左奥)と福田准教授(右奥)
 


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id5881.html

【情報発信】卵管の組織再構築メカニズムを解明

帯広畜産大学 奥田潔学長 (岡山大学名誉教授)、岡山大学大学院環境生命科学研究科 (農) の伊藤さやか大学院生 (博士前期課程)、小林芳彦大学院生 (博士後期課程, 日本学術振興会特別研究員 (DC1))、木村康二教授らの研究グループは、ウシ卵管組織の更新メカニズムを明らかにしました。本研究成果は6月2日、国際専門誌『Cell and Tissue Research』オンライン電子版に掲載されました。
 
哺乳類において卵管は、受精の場であるとともに卵子および受精卵の輸送経路です。卵管の内側表面には、細胞表面に無数の繊毛を有する繊毛細胞と、受精卵発育に必要な物質を分泌する分泌細胞の主に2種類が存在します。今回奥田学長らのグループは、排卵周期を通じた繊毛・分泌細胞の割合の変化が、分泌細胞の増殖と分化により生じることを明らかにしました。
今回の成果は、卵管の機能異常が原因として生じる不妊の予防や治療法の確立への貢献が期待されます。
 
 
<詳しい研究内容について>
卵管の組織再構築メカニズムを解明~不妊の治療法開発へ期待~

<論文情報>
タイトル:Remodeling of bovine oviductal epithelium by mitosis of secretory cells.

著  者:Ito S, Kobayashi Y, Yamamoto Y, Kimura K, Okuda K.掲 載 誌: Cell and Tissue Research D O I:10.1007/s00441-016-2432-8
 
発表論文はこちらからご確認いただけます。

 <お問い合わせ>
岡山大学広報・情報戦略室
(電話番号)086-251-7293


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id402.html

2016年6月29日水曜日

【情報発信】第55回岡大サイエンスカフェ「シリコンバレーから見る米国医療の最前線」を開催

岡山大学研究推進産学官連携機構は6月20日、本学の研究者が最新の科学を分かりやすく説明する「第55回岡大サイエンスカフェ」を創立五十周年記念館で開催しました。
岡山大学シリコンバレーオフィス長の千田一貴教授が「シリコンバレーから見る米国医療の最前線」をテーマに講演。米国における罹患者を減らすための取り組み、病気を遺伝子レベルで理解し病気の予防や完治をさせる「正確な医療」、“Precision Medicine”について遺伝子の基礎的理解から遺伝子と病気・治療との関係を詳しく説明しました。米国政府などの医療政策についての解説に、参加した164人の市民らは熱心に聴き入っていました。


次回のサイエンスカフェは8月19日、「未来を変える炭素材料とエレクトロニクス」と題して、私たちの身近にあり生活を大きく変えようとしている「炭」を取り上げます。炭素繊維は、金属代替の軽くて強い材料として、飛行機や建物の基礎などに用いられようとしています。半導体の材料としても、エレクトロニクスの分野で研究開発が進められています。構造材料やエレクトロニクス材料として、「炭」をどのように使えるようにしているか、異分野基礎科学研究所の江口律子助教が分かりやすく解説する予定です。

【本件問い合わせ先】
研究推進産学官連携機構 社会連携本部
TEL:086-251-7112



http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id5880.html

2016年6月28日火曜日

【情報発信】「採択に至る科研費申請のノウハウ」 第1回科研費講演会を開催

岡山大学研究推進産学官連携機構は6月21日、八戸高等専門学校の岡田益男校長(元東北大学副学長)を招き、「科研費獲得キャンペーン」の本年度第1回目となる科研費書き方講習会を津島地区と鹿田地区それぞれで開催しました。講演題目は「採択に至る科研費申請のノウハウ」。津島会場には71人、鹿田会場には75人が参加し、講師の話に熱心に耳を傾けていました。

岡田校長は、大学評価・学位授与機構運営委会、国大協大学評価委員会、JSPS科研費運営委員会等の委員を歴任され、日本の科学技術研究を牽引された経験を踏まえ、申請の際のポイントなどについて助言。本学の科研費申請件数・採択件数の実績に基づいた科研費政策の提案もあり、参加者からは今後の申請に向けて非常に参考になったとの声も上がっていました。 

講演資料はこちら(学内限定ページ)

 

【本件お問い合わせ先】
研究推進産学官連携機構 森川、羽崎
TEL:086-251-8466

 

講師の岡田校長
 

2016年6月27日月曜日

【情報発信】ワークショップ「これからの日本が期待する大学院」を開催

岡山大学は5月19日、「大学院医療科学統合研究科(仮称)第1回ワークショップ『これからの日本が期待する大学院』」を創立五十周年記念館で開催しました。

岡山大学では「医学と工学の連携」と「文系と理系の融合」を網羅して、教育と研究を推進することを目標とした「大学院医療科学統合研究科(仮称)」の創設が検討されています。本ワークショップは、同大学院が超高齢化・少子化している日本の将来にどのように貢献できるのかを考えることを目的に実施しました。


ワークショップでは、森田潔学長によるあいさつの後、政策研究大学院大学(元文部科学省科学技術・学術政策局長)の有本建男教授が「グローバルに革新を迫られる大学と科学技術の方法」と題して基調講演しました。
妹尾昌治副学長から新研究科設置に向けた活動報告、関連する教育研究分野の教員4人から話題提供の後、有森教授や阿部宏史理事、荒木勝理事らによるパネルディスカッションも行われました。約230人の本学学生と教職員が参加。熱心な質疑応答が行われ、パネリストらとともに活発な議論が展開されました。

【本件問い合わせ先】
自然系研究科等事務部医療統合科学研究科設置準備室
 TEL: 086-251-8811


講演する有本教授
 

2016年6月20日月曜日

【情報発信】敗血症の治療法開発へ新たな道筋 血漿タンパク質HRGがカギ

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)薬理学の西堀正洋教授、和氣秀徳助教らの研究グループは、マウスの敗血症病態モデルの解析によって、複雑で重篤な敗血症病態を理解する上で重要な血漿タンパク質Histidine-rich glycoprotein (HRG)を同定し、HRGが循環血中の好中球と血管内皮細胞の静穏化維持に極めて重要な働きをする因子であることや、敗血症病態のカスケードが血中HRGの低下を起点として進行することを世界で初めて解明しました。
 
また、本研究グループはHRGを薬として補う新しい治療法を検討。敗血症時にHRGが著明に低下したマウスに、HRGを注射によって補充することで劇的な生存維持効果があることを見いだしました。本研究成果は6月10日、Cell誌とLancet誌が共同サポートする科学誌「EBioMedicine」電子版に掲載されました。
本研究により、世界で年間2000~3000万人が発症しているといわれるヒトの敗血症の治療にも応用できるものと期待されます。すでに、哺乳動物細胞を使ったヒト組み換えタンパクの製造にも成功し、新しい治療薬の開発に向けての研究が順調に進行しています。世界的に抗生物質以外の治療薬が存在しない現状から、今後の成果がさらに期待されます。
本研究は、厚生労働省科学研究費 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)(平成25-27年度)として実施されました。なお、同事業は平成27年度より国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に移行しています。
 
 


敗血症の治療法開発へ新たな道筋 血漿タンパク質HRGがカギ


<論文情報等>
タイトル:Histidine-Rich Glycoprotein Prevents Septic Lethality through Regulation of Immunothrombosis and Inflammation.著  者:Wake, H., Mori, S., Liu, K., Morioka, Y., Teshigawara, K., Sakaguchi, M., Kuroda, K., Gao, Y., Takahashi, H., Ohtsuka, A., Yoshino, T., Morimatsu, H., and Nishibori, M.掲 載 誌:EBioMedicine DOI:10.1016/j.ebiom.2016.06.003
URL:
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S235239641630247X


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
薬理学分野 教授 西堀 正洋
(電話番号)086-235-7140
(FAX番号)086-235-7140


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id401.html

2016年6月17日金曜日

【情報発信】日本学術振興会育志賞受賞者の呉さん(社会文化科学研究科)による学内発表

本学の役員政策会議が6月13日に開かれ、第6回(平成27年度)日本学術振興会育志賞受賞者の呉揚さん(大学院社会文化科学研究科博士後期課程3年)による学内発表を行いました。
呉さんは、受賞した研究テーマ「状態・存在・特性・関係を表す動詞についての記述的研究」に関し、「富士山がそびえる」など身近な用例を交え、自身の研究の特色を説明し、今後の研究への意気込みを述べました。

「日本学術振興会育志賞」
天皇陛下の御即位20年に当たり、社会的に厳しい経済環境の中で、勉学や研究に励んでいる若手研究者を支援・奨励するために、陛下から御下賜金を賜り創設された賞です。

【本件問い合わせ先】
学務部学生支援課 
TEL:086-251-7176



大学執行部を前に研究発表をする呉さん
 

2016年6月16日木曜日

【情報発信】「岡大農場出身『千屋牛』」市内の百貨店で販売開始

岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センター津高牧場で生まれ、新見市の有限会社哲多和牛牧場で肥育した「千屋牛」が6月15日、「岡大農場出身『千屋牛』」として天満屋岡山店精肉売場で販売開始されました。

津高牧場では、25年間にわたって外部からウシを導入することなく、岡山系雌ウシと雄ウシの交配にこだわり、優秀な系統の選抜を実施。優良な子牛を年間40頭程度、出荷しています。

「岡大農場出身『千屋牛』」は、津高牧場から出荷した子牛(生後8~9カ月)が、新見市にある哲多和牛牧場でオカラやエリンギの培地、県産もみ米等の発酵飼料など、こだわった方法によって20~22カ月肥育され、千屋牛の定義を満たした和牛です。今回、農学部附属山陽圏フィールド科学センターで生産された農産物や加工品を販売する際の統一ブランド「岡大農場」を付けて、継続的(毎月1頭程度)に販売されることになりました。

津高牧場で13日に開催された記者会見では、門田充司農学部長、環境生命科学研究科の舟橋弘晃教授が「岡大農場出身『千屋牛』」ついて説明。会見後には、同牧場の子牛の撮影も行いました。舟橋教授は「地域特産の「千屋牛」の振興に寄与し、さらに、岡山大学や「岡大農場」の更なるブランドイメージ向上を目指したい」と話しました。

ポスターはこちら


記者会見はこちら(学内限定)(ポスターをクリックすると記者会見の動画が始まります)


津高牧場:
津高牧場は昭和53年11月、地域特産の「千屋牛」の振興に寄与することを目的に開設されました。現在は、生産効率の高い省力型肉用牛生産牧場モデルとして黒毛和種子牛生産に特化した牧場として運営。岡山空港に隣接する31haの土地で、約70頭の和牛を飼育しています。中四国の大学では最大の和牛生産実習施設で、岡山大学農学部の学生だけでなく、中四国の学生が実習で利用しています。

【本件問い合わせ先】
大学院環境生命科学研究科 教授 舟橋 弘晃
TEL: 086-251-8329



津高牧場で生まれた子牛
 

【情報発信】国際基準の大学評価の在り方を考える~平成28年度第1回大学研究力強化ネットワーク・カンファレンスを開催~

文部科学省の「研究大学強化促進事業」に選定された機関のうち、自然科学研究機構(NINS)や本学などでつくる「大学研究力強化ネットワーク」が6月2日、筑波大学東京キャンパス文京校舎(東京都文京区)で、平成28年度第1回大学研究力強化ネットワーク・カンファレンス「国際基準の大学評価の在り方を考える」を開催しました。

今回のカンファレンスは、現在、世界的な大学改革の波が押し寄せている中で、海外における大学評価の在り方を学ぶことで、日本での大学評価の在り方について考えるものです。主催者であるNINSの小泉周特任教授の開催挨拶に続き、同ネットワークで大学・ランキング指標タスクフォース座長を務める本学の山本進一理事・副学長(研究担当)が「大学評価の今」と題して講演。さまざまな報道などで大きく取り上げられる世界大学ランキング指標の問題点に触れ、日本の大学が持つ独自性や多様性を失うことにもなりかねないとの危惧を表しつつ、定量的・定性的な両面を組み合わせた大学評価が必要であると述べました。

独立行政法人大学改革支援・学位授与機構研究開発部の林隆之教授は、「国立大学法人評価における研究評価-多様な研究活動の評価と根拠指標の設定」と題して講演。研究の水準に関する2つの分析項目のうち、特に「研究成果の状況」を取り上げ、その水準判定について言及。卓越した研究業績を示す根拠データを具体的に示すことの必要性、特に社会・経済・文化的に貢献できる根拠データの明示を強調しました。

エルゼビア社SciVal(サイバル)のモハメッド・アイサティ(M'hamed Aisati)コンテンツ分析ディレクターは、「大学評価:意味のある評価指標に向けての挑戦と機会(Measuring university performance: challenges and opportunities towards a meaningful assessment framework)」と題して講演。英国高等教育財政審議会(Higher Education Funding Council for England:HEFCE)の「研究における卓越性の枠組み2014(Research Excellence Framework:REF 2014)」など、世界的に評価機関が増加傾向にあることや大学ランキングが重要視されていることについて言及。一方で、現状の課題である評価基準のばらつき、社会にもたらすインパクトを計る困難さを指摘しました。このような課題に対処し、公平な評価をするための「共通言語」として、大学など高等教育・研究機関に必要と思われる主要な共通評価指標を定義した「スノーボールメトリックス(Snowball Metrics)」の取り組みも紹介されました。

参加した行政機関、各大学、研究機関、リサーチ・アドミニストレーター(URA)、研究推進担当の事務職員ら約40人は、海外における大学評価の在り方を学び、現状の課題である評価指標の透明性・公平性について、今後も行政機関、大学、研究機関などが協力していく必要性を認識しました。

岡山大学は同ネットワークの運営委員として参画。同ネットワークを構成するタスクフォース(プロジェクトのためのチーム)のひとつ「大学ランキング指標に関するタスクフォース」の幹事機関も務めています。日本の研究力強化の促進のため、各機関と密に連携しながら国内外に向けて効果的な研究大学運営の在り方についての提言を発信していきます。

大学研究力強化ネットワーク*
文部科学省「研究大学強化促進事業」に採択された22機関を中心として、大学の研究力強化を強く推進する機関に呼びかけ、賛同を得られた機関で構成(窓口:NINS)。各大学の個性・特徴を尊重しつつ、研究者-URA-事務担当者の三者の緊密な連携の下、大学・研究機関の枠を超えて、大学の研究力強化および支援機能の拡大を図る方策に関する議論と情報交換を行う。「共同して行うべきところは共同して行う」という発想の下、相互の連携の推進を図り、また、必要な施策について行政等に働きかけるなど、個々の大学の研究力強化に資する活動を行っている。
大学研究力強化ネットワークホームページ:
http://www.runetwork.jp/

【本件問い合わせ先】
岡山大学リサーチ・アドミニストレーター(URA)執務室
TEL:086-251-8919

 

「大学評価の今」と題して講演する本学の山本理事・副学長
 

2016年6月15日水曜日

【情報発信】Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.25 発行

岡山大学は6月8日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」をVol.25を発行しました。
2012年より本学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年4回発行。国際科学雑誌「Science」を扱うAAAS(米国科学振興協会)のメーリングリストを利用し、世界の研究者等にニュースやトピックスを交えて配信し、本学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上を推進しています。

OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、強みある医療系分野の更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行。
 

本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)公衆衛生学分野の江口依里助教、舟久保徳美大学院生、荻野景規教授らが報告した、アロマフットマッサージが血圧値改善や不安軽減に効果について紹介しています。
江口助教らの研究グループは、自身で実施するアロマフットマッサージが血圧値改善、不安の軽減、精神的健康の向上傾向に効果があることを世界で初めて明らかにしました。本研究は、クロスオーバー無作為化比較試験の手法にて、アロママッサージの血圧、不安、精神的健康への効果が同時に認められたのは初めてであり、他の生活習慣改善に比べて比較的実施しやすく、補完代替的な健康改善の手段として期待されます。
岡山大学は、平成25年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術としてより早く届けられるように研究を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.25:
Self-administered aroma foot massage may reduce symptoms of anxiety

<Back Issues:Vol.16~Vol.24>
Vol.16:
Epigenetics research traces how crickets restore lost legs  (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)板東哲哉助教)
Vol.17:
Cell research shows pathway for suppressing hepatitis B virus (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)加藤宣之教授)
Vol.18:
Therapeutic protein targets liver disease (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)和田淳教授)
Vol.19:
Study links signalling protein to osteoarthritis (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)窪木拓男教授)
Vol.20:
Lack of enzyme promotes fatty liver disease in thin patients (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)和田淳教授、中司敦子助教)
Vol.21:
Combined gene transduction and light therapy targets gastric cancer (大学病院香川俊輔准教授、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)石田道拡医師)
Vol.22:
Medical supportive device for hemodialysis catheter puncture Combined gene transduction and light therapy targets gastric cancer (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)大原利章助教)
Vol.23:
Development of low cost oral inactivated vaccines for dysentery (大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)三好伸一教授)
Vol.24:
Sticky molecules to tackle obesity and diabetes (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)和田淳教授、村上和敏医師)


<参考>
Okayama University e-Bulletin
//www.okayama-u.ac.jp/user/kouhou/ebulletin/

【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
 


2016年6月10日金曜日

【情報発信】心不全の進行を抑制する分子を特定

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の片野坂友紀助教、川崎医科大学の氏原嘉洋助教、毛利聡教授らの研究グループが、心不全の発症・重篤化の過程でNa+/Ca2+ 交換体 (NCX1) の活性が著しく低下していることを発見。低下したNCX1活性を回復させることで、心不全の進行を抑制できることを、遺伝子改変マウスを用いた実験により明らかにしました。
 
本研究成果は5月26日、ヨーロッパ心臓病学会誌「Cardiovascular Research」に公開されました。
 
今後、細胞外へのCa2+排出系として働くNCX1の活性低下を防ぐ薬剤の開発により、心不全の治療への応用が期待されます。
 
 


心不全の進行を抑制する分子を特定

 <論文情報>
タイトル:Induced NCX1 overexpression attenuates pressure overload-induced pathological cardiac remodeling.著  者:Yoshihiro Ujihara, Keiichiro Iwasaki, Satomi Takatsu, Ken Hashimoto, Keiji Naruse, Satoshi Mohri, Yuki Katanosaka.掲 載 誌:Cardiovascular ResearchD O I:10.1093/cvr/cvw113
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<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
助教 片野坂 友紀
(電話番号)086-235-7117
(FAX番号)086-235-7430


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id399.html

2016年6月3日金曜日

【情報発信】メスの目移りを防ぐオスメダカ 〜恋敵に奪われないための二重の戦略〜

異性を手に入れるために努力し、同性で競い合う、というのは人間の世界だけでなく広く動物界で観察される現象ですが、その行動の意義や行動発現のメカニズムに関しては、観察を越える実験的評価が難しいことなどから、まだ十分に明らかになっていません。
 
今回、基礎生物学研究所の横井佐織博士、岡山大学大学院自然科学研究科の竹内秀明准教授らの研究グループは、メダカの三角関係(オス、オス、メス)において、オスは配偶者防衛行動(ライバルオスとメスとの間の位置をキープし、両者の接近を防ぐ)により、メスがライバルオスを記憶することを妨害することを発見しました。これまで配偶者防衛行動の生態的意義として、ライバルオスとメスとの直接的な接触を防ぎ、配偶行動を妨害するという点が注目されてきましたが、それに加え、メダカの三角関係では「ライバルオスを記憶できないようにすることで、自らが配偶相手として選ばれる確率を上昇させる」という意義も存在することが実験的に示されました。
 
本研究は雌雄間の記憶を介した絆形成の過程を生態学、行動学、神経科学等の多くの側面から明らかにするモデル系になると期待されます。本研究成果は動物学専門誌「Frontiers in Zoology」に2016年6月2日付けで掲載されました。
 
 

メス(右)とライバルオス(左)の間の位置をキープするために割り込むオス(中央)

メスの目移りを防ぐオスメダカ 〜恋敵に奪われないための二重の戦略〜

 
【発表雑誌】
雑誌名:「Frontiers in Zoology

論文タイトル:”Mate-guarding behavior enhances male reproductive success via familiarization with mating partners in medaka fish”著者:Saori Yokoi*, Satoshi Ansai, Masato Kinoshita, Kiyoshi Naruse, Yasuhiro Kamei, Larry J. Young, Teruhiro Okuyama, Hideaki Takeuchi*

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【研究サポート】
本研究は、科学研究費補助事業(26290003, 26115508)・日本学術振興会特別研究員奨励費(15J06688, 13J01682)・ブレインサイエンス財団・山田科学振興財団、および基礎生物学研究所共同利用研究(15-331, 15-702)のサポートを受けて実施されました。

【問い合わせ先】
岡山大学大学院自然科学研究科 分子行動学研究室  
准教授 竹内秀明
TEL: 086-251-7860

【報道担当】
岡山大学 広報・情報戦略室
TEL: 086-251-7293
FAX: 086-251-7294


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id398.html

2016年6月1日水曜日

【情報発信】アジア最大のバイオ展「ライフサイエンス ワールド 2016」に出展

岡山大学は5月11~13日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されたアジア最大のバイオ展/国際会議「ライフサイエンス ワールド 2016(第13回アカデミックフォーラム)」に出展し、医療、創薬、生命医用工学など、8件の最先端研究成果を展示・発表しました。

本学大学院環境生命科学研究科の森田英利教授は、「ヒトマイクロバイオームによる俯瞰的ヒト健康評価法」と題して、現在取り組んでいるトップアスリートの腸内細菌叢の解析内容を紹介。糞便と唾液は非侵襲的かつ自宅でも採取できることから、自身での健康チェックに貢献できる可能性について発表しました。

本学大学院医歯薬学総合研究科(医学系)の大原利章助教は、自然科学研究科の妹尾昌治教授らによって研究・開発された「iPS細胞から誘導したがん幹細胞モデル」を使い、腫瘍の幹細胞化を可能にした新規腫瘍モデルと鉄コントロールによる新しいがん幹細胞治療法の開発について発表しました。

同研究科(医学系)の森田瑞樹准教授は、昨年4月、新しい医療技術や治療薬などの研究開発を推進するための研究基盤として、岡山大学病院に設立された日本人のヒト生体試料を提供する「岡山大学病院バイオバンク」の役割や事業内容について紹介しました。
会場内のパートナリング商談ルームでは、各研究やバイオバンクに興味を持った製薬企業や医療・医薬関係団体と、技術移転や共同研究の実施に向けて精力的に意見交換を行いました。
岡山大学研究推進産学官連携機構は、研究成果の普及やさらなる進展、企業への技術移転の促進を図るため、今後も展示会への出展を積極的に支援します。

【本件問い合わせ先】
研究推進産学官連携機構 産学官連携本部
TEL:086-251-7112