2019年9月30日月曜日

【情報発信】本学エグゼクティブ・アドバイザーの菅裕明氏が紺綬褒章を受章

7月30日、本学エグゼクティブ・アドバイザーの菅裕明氏(東京大学教授)が紺綬褒章を受章しました。これを受け9月3日、学長室で紺綬褒章の伝達式を挙行。菅誠治副学長(特命(理工学系改革)担当)、冨田栄二大学院自然科学研究科長、阿部匡伸工学部長の立会いのもと、槇野博史学長が菅氏に章記および銀飾版を手渡しました。

紺綬褒章は公益のために私財を寄付した方に対し授与されるもので、その授与基準は国や内閣府賞勲局が認定した公益団体に一定額以上の寄付を行った個人または団体とされています。今回は、大学院自然科学研究科への奨学としての寄付によって授与対象となりました。

 【本件問い合わせ先】
総務・企画部人事課
TEL:086-251-7032


【情報発信】異分野基礎科学研究所の沈建仁教授・副所長が、スウェーデン王立科学アカデミーより「グレゴリー・アミノフ賞」を受賞

岡山大学異分野基礎科学研究所の沈建仁教授・副所長が、カリフォルニア工科大学のDouglas Rees教授と共同で、スウェーデン王立科学アカデミーより結晶学の分野で優れた業績を上げた研究者に贈られる、2020年度のグレゴリー・アミノフ賞(Gregori Aminoff Prize)に選ばれました。授賞式と受賞記念講演は、2020年3月30・31日にストックホルムで開催される、同アカデミーの年会にて行われる予定です。

グレゴリー・アミノフ賞は、世界中で結晶学の分野で優れた業績を上げた研究者に、同アカデミーより年1件授与される賞です。今回、沈教授とRees教授は、「生物学における酸化還元金属クラスターの機能解明への根本的な貢献」により共同受賞が決定。沈教授は、これまで光合成における、光化学系II膜タンパク質複合体による水分解反応の触媒であるマンガンクラスターの構造と機能解明に取り組んでおり、これまでの業績が受賞対象となりました。

沈教授は受賞を受け、「グレゴリー・アミノフ賞に選ばれることは大変な名誉であり、これまでの成果は多くの共同研究者による共同研究の結果です。これまでの共同研究者に感謝するとともに、今後より大きな研究成果が得られるよう努力したい」と話しています。

◯本件については、スウェーデン王立科学アカデミーHPにも掲載されています。

 【本件問い合わせ先】
異分野基礎科学研究所 教授・副所長 沈建仁
TEL:086-251-8502



【情報発信】レチノイドX受容体に対する結合性分子の簡便な判定法を開発 創薬、機能性食品、内分泌撹乱物質探索を可能とする新たな手法に

レチノイドX受容体に対する結合性分子の簡便な判定法を開発 創薬、機能性食品、内分泌撹乱物質探索を可能とする新たな手法に

 
2019年09月27日
 
◆発表のポイント
  • レチノイドX受容体(RXR)に結合する分子としてはDHAなどの脂肪酸が知られ、さまざまな疾患との関連や生物の内分泌への影響が知られています。
  • 本研究では、RXR結合性分子の探索、結合能を簡便に検出する手法を開発しました。
  • 創薬や機能性食品の開発、湖沼、海水中の内分泌撹乱物質の探索などに役立つことが期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の加来田博貴准教授らは、静岡県立大学食品栄養科学部の中野祥吾助教らと、日本大学、立教大学、アイバイオズ株式会社の共同研究により、レチノイドX受容体(RXR)に対する結合物質の簡便な探索技術の開発とその作用機序の解明に成功しました。
RXRは、これに結合する低分子によって、標的とする遺伝子の発現を制御します。脂質・糖代謝に関わる受容体であることから、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、認知症やパーキンソン病などの治療を目的とした分子標的として創薬また機能性食品開発がされています。また、環境中のRXR結合性分子を不必要に摂取すると内分泌撹乱になりかねません。
しかしながら、これまでのRXR結合性分子の探索・検出法は、ラジオアイソトープ(放射性同位体)を用いる方法や細胞を用いる方法であり、法規制、特殊装置の必要性、時間を要するなど課題がありました。RXRと本研究で創出した蛍光性のRXR結合性分子を混合した溶液に、評価したい溶液を加え、汎用性の高い測定機器(蛍光プレートリーダー)を用いて蛍光を測定することで、その溶液中のRXR結合性分子の有無が数時間内に判定できます。この技術を使えば、創薬や機能性食品開発のみならず、湖沼水、海水中のRXR結合性分子の探索が容易に行え、RXRへ作用する環境汚染物質の探索が簡便になります。
また、この技術をもとに、エストロゲン受容体や甲状腺ホルモン受容体を対象とする結合性分子の探索技術への応用も期待されます。
本研究成果は9月5日、アメリカ化学会誌「Journal of Medicinal Chemistry」のJust acceptedとして公開されました。

◆研究者からのひとこと
本研究成果を論文発表するのに約10年の歳月を要しました。主に研究に携わった山田翔也君(博士後期課程満期退学)は、博士後期課程在学中に論文にできず、学位取得に至っていません。今回の成果をもとに、彼の学位取得へつなげられればと思います。また、本研究成果を、創薬・環境汚染物質探索へ応用し社会貢献したいです。
加来田准教授


■論文情報
論 文 名:Competitive Binding Assay with an Umbelliferone-based Fluorescent Rexinoid for Retinoid X Receptor Ligand Screening.掲 載 紙:Journal of Medicinal Chemistry
著  者:Yamada S, Kawasaki M, Fujihara M, Watanabe M, Takamura Y, Takioku M, Nishioka H, Takeuchi Y, Makishima M, Motoyama T, Ito S, Tokiwa H, Nakano S, Kakuta H.D O I:10.1021/acs.jmedchem.9b00995.
U R L:https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.jmedchem.9b00995


<詳しい研究内容について>
レチノイドX受容体に対する結合性分子の簡便な判定法を開発 創薬、機能性食品、内分泌撹乱物質探索を可能とする新たな手法に


<お問い合わせ>
大学院医歯薬学総合研究科(薬)
准教授  加来田 博貴
(電話番号)086-251-7963
(FAX)086-251-7926

【情報発信】がんを兵糧攻め!口腔がんの血管に発現する新たな標的物質を発見

がんを兵糧攻め!口腔がんの血管に発現する新たな標的物質を発見

 
2019年09月27日


◆発表のポイント
  • ヒトの口腔がんにおいて、腫瘍に栄養を供給する血管に、ケモカインレセプターの一種であるCXCR4が多数発現していることを発見しました。
  • CXCR4を阻害すると、特徴的な腫瘍壊死を起こすことが分かりました。
  • 新たな抗腫瘍血管治療や、薬剤耐性を獲得した腫瘍の治療につながることが期待されます。


岡山大学大学院医歯薬学総合研究科口腔病理学分野(長塚仁教授)の河合穂高助教と吉田沙織大学院生、および歯科薬理学分野(岡元邦彰教授)の江口傑徳助教の共同研究グループは、口腔がんに栄養を供給する血管に発現するケモカインレセプター・CXCR4を阻害することで、特徴的な腫瘍壊死(TAITN、Tumor Angiogenic Inhibition Triggered Necrosis)が引き起こされることを発見しました。

これらの研究成果は7月22日、スイスの学術誌「Cells」のResearch Articleとして掲載されました。

腫瘍組織は組織の維持、増殖のために多くの酸素や栄養が必要です。その酸素や栄養は、腫瘍組織の中を走る腫瘍血管から摂取しています。そのため近年では、腫瘍血管を標的とした抗腫瘍血管治療が行われていますが、腫瘍が薬剤耐性を獲得し効果がなくなってしまうことが問題で、これは腫瘍が複数の種類の腫瘍血管形成経路を駆使して自らの生存を図っているからだと考えられます。

本研究は、従来の抗腫瘍血管治療とは異なる血管新生の経路に着目した研究であり、非常にユニークな腫瘍壊死パターンを報告しています。また、得られた知見は今後の新たな抗腫瘍血管治療の足がかりになると共に、薬剤耐性を獲得した腫瘍に対する次の一手になる可能性を秘めた成果です。



◆研究者からのひとこと
薬剤を投与したマウスの組織に特徴的な壊死組織を発見できたことが、この研究の始まりでした。組織診断の技術が素晴らしいアイデアにつなげられたことがとてもうれしかったです。研究をさらに発展させ、少しでもがんに苦しむ患者さんの助けになるよう頑張ります。
河合助教

CXCR4を阻害する薬剤は連日投与する必要があり、実は動物に触るのが苦手な私は毎回冷や汗をかきながら頑張りました。標本作製や壊死領域の計測、血管形態の観察など、地道で丁寧な作業が研究に不可欠であることを改めて実感しました。腫瘍血管形成の詳細なメカニズムを明らかにすべく、これからも研究を続けていきたいです。

吉田大学院生


■論文情報
論文名:Tumor Angiogenic Inhibition Triggered Necrosis (TAITN) in oral cancer掲載誌:Cells著 者:Saori Yoshida, Hotaka Kawai*, Takanori Eguchi*, Shintaro Sukegawa, May Wathone Oo, Chang Anqi, Kiyofumi Takabatake, Keisuke Nakano, Kuniaki Okamoto, Hitoshi Nagatsuka.DOI: 10.3390/cells8070761
 
発表論文はこちらからご確認できます。


 <詳しい研究内容について>
がんを兵糧攻め!口腔がんの血管に発現する新たな標的物質を発見


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)
口腔病理学 助教 河合穂高
(電話番号) 086-235-6652


【情報発信】細胞内におけるタンパク質や脂質の集配所?! ゴルジ体での積荷仕分けシステムと形の関係が明らかになりました

細胞内におけるタンパク質や脂質の集配所?!  ゴルジ体での積荷仕分けシステムと形の関係が明らかになりました

 
2019年09月27日

 
◆発表のポイント
  • 細胞内におけるタンパク質や脂質の積荷集配所であるゴルジ体は、パンケーキが積み重なったような構造をしています。その構造部分には穴があいていて、積荷仕分けの効率を上げると考えられています。
  • Giantinというタンパク質をゴルジ体からなくしてしまうと、この穴がなくなってしまい、積荷仕分けがうまく行われなくなることを発見しました。
  • ゴルジ体には、なぜパンケーキのような構造をしているかなど、まだ解明されていないことがたくさんありますが、今回の発見はその解明の糸口になると期待されます。
 
 
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の佐藤あやの准教授と大阪大学産業科学研究所の西野美都子助教らの国際共同研究グループは、細胞内小器官の一つであるゴルジ体の構造の調節にGiantinというタンパク質が重要な役割を果たしていることを発見しました。
 
これらの成果は8月27日、スイスの科学誌「Frontiers in Cell and Developmental Biology」のオンライン版に掲載されました。
 
細胞内におけるタンパク質や脂質の積荷集配所であるゴルジ体は、パンケーキが積み重なったような特殊な構造をしています。その構造部分には穴があいていて、積荷仕分けの効率を上げると考えられています。今回、Giantinというタンパク質をゴルジ体からなくしてしまうと、この穴がなくなってしまい、積荷仕分けがうまく行われなくなることを発見しました。
 
ゴルジ体はなぜそのような特殊な構造をとることができるのか、わかっていない点が多いですが、今回の発見は、ゴルジ体の構造の理解と細胞内積荷集配所としてのゴルジ体の機能の関係をつなぐ重要な手がかりとなります。


◆研究者からのひとこと
大学院生「ん?(パンケーキが)なんかのっぺりしてるんです」私「えっ?それどうやって数値化するの?どうやって英語で言うのよー?」なんていう会話がありました。結局、「穴なしモデル」を作って数値化しました。
安定発現株を作ることを得意としています。共同研究、学生さん、大学院生さん、大歓迎です。

佐藤准教授

■論文情報
論 文 名:The golgin protein giantin regulates interconnections between golgi stacks
掲 載 紙:Frontiers in Cell and Developmental Biology
著  者:Ayano Satoh*, Mitsuko Hayashi-Nishino*, Takuto Shakuno, Junko Masuda, Mayuko Koreishi1, Runa Murakami, Yoshimasa Nakamura, Toshiyuki Nakamura, Naomi Abe-Kanoh, Yasuko Honjo, Joerg Malsam, Sidney Yu, Kunihiko Nishino
 D O I:10.3389/fcell.2019.00160
 U R L:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell.2019.00160/abstract



<詳しい研究内容について>
細胞内におけるタンパク質や脂質の集配所?! ゴルジ体での積荷仕分けシステムと形の関係が明らかになりました


<お問い合わせ>
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科
准教授 佐藤あやの
(電話番号)086-251-8163

 

【情報発信】「岡山大学研究・産学共創活動のありたい未来の姿」についての学内講演会を開催

岡山大学は、2013年8月に文部科学省が日本のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)の一つであり、「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」としての高い研究力を有しています。

今回、今年4月に着任した那須保友理事(研究担当)・副学長兼研究推進機構長の発案による「岡山大学研究・産学共創活動のありたい未来の姿」と題した学内講演会を7月30日、本学本部棟にて開催しました。

講演会は、研究事務・マネジメントを担う研究協力部と研究推進機構の全職員が本学の研究・産学共創活動の現状を把握し、短・中期的な将来を見据えた際により良い変化を引き起こすために、自分自身が日々の業務で何を行うべきなのかなどについて考える場とすることを目的としています。「何のために、誰のために岡山大学で仕事をするのか」という問いかけからはじまり、本学のこれまでの歩みを俯瞰しつつ、築き上げてきた研究・産学共創の強みと、まだ手が十分につけられていない分野への対応などについて話しました。

また、那須理事がこれまでの教員、研究者、医師、ベンチャー経営者、研究室主宰者、部局長などの経験から学んだことや、辛い状況下では自身と周囲とが力を合わせ最良と思う道を見つけ出して進んできた実体験などについて紹介。「岡山大学で働くとワクワクすることができる。一人一人が当事者となれる人文知・人間力を身に付けてもらいたい」などと研究協力部と研究推進機構の全職員に語り掛け、参加者らは熱心に聞き入りました。

岡山大学本年5月31日に創立70周年を迎えました。今後ますます教育研究と社会貢献を通じて、地球と人類社会におけるSustainability(持続可能性)とWell-being(幸福)を追究し、地域とともに、岡山から世界に、新たな価値を創造し続ける大学として多方面で精力的に活動していきます。その中で研究・産学共創活動は重要な一翼を担うものであり、担当全職員が未来を見据えつつ一丸となって日々の歩みを確実に進めていきます。今後の本学における研究・産学共創活動にご期待ください。

 【本件問い合わせ先】
岡山大学研究推進機構 リサーチ・アドミニストレーター(URA)室
TEL:086-251-8919



【情報発信】神経細胞でのオートファジーを治療標的とするための候補分子を発見新しい神経細胞保護薬の開発へ

神経細胞でのオートファジーを治療標的とするための候補分子を発見新しい神経細胞保護薬の開発へ

 
2019年09月27日

 
◆発表のポイント
  • 細胞質内のタンパク質を分解するシステムの一つであるオートファジーは、特定部位のみで活性を制御することができれば、各種神経疾患やがんの治療へ活用が可能ですが、その手法はまだ確立していません。
  • 神経細胞でのオートファジーを制御するアミノ酸トランスポーター[2] (SNAT1)を同定し、その機能を抑えることで、神経細胞死が抑制できることを発見しました。
  • 新規の神経保護薬の開発に応用されることが期待されます。
 
 
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の山田大祐助教と宝田剛志研究教授の研究グループは、脳内の神経細胞に発現するアミノ酸トランスポーターの一つであるSNAT1(Sodium-coupled neutral amino acid transporter 1、Slc38a1)を阻害することで、神経細胞でのオートファジーが活性化され、神経細胞死の抑制につながることを見出しました。
 
成果は9月18日、国際科学誌「Communications Biology」のResearch Articleとして掲載されました。今回見出した研究成果が、新規の神経保護薬の開発に応用されることが期待されます。


◆研究者からのひとこと
神経細胞に多く存在しているアミノ酸トランスポーターの活性化が、酸素欠乏時の神経細胞死を引き起こすことが分かりました。神経細胞のみを標的にした神経疾患の治療が将来的に可能になるかもしれません。今後も、副作用の少ない疾患治療の開発に応用できるような研究を行っていきたいと考えています。
山田助教


■論文情報
論 文 名:Inhibition of the glutamine transporter Slc38a1 confers neuroprotection by modulating the mTOR-autophagy system掲 載 紙:Communications Biology
著  者:Daisuke Yamada, Kenji Kawabe, Ikue Tosa, Shunpei Tsukamoto, Ryota Nakazato, Miki Kou, Koichi Fujikawa, Saki Nakamura, Mitsuaki Ono, Toshitaka Oohashi, Mari Kaneko, Shioi Go, Eiichi Hinoi, Yukio Yoneda and Takeshi TakaradaD O I:10.1038/s42003-019-0582-4
U R L:
https://www.nature.com/articles/s42003-019-0582-4


<詳しい研究内容について>
神経細胞でのオートファジーを治療標的とするための候補分子を発見新しい神経細胞保護薬の開発へ


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
組織機能修復学分野 研究教授 宝田 剛志
(電話番号) 086-235-7407
(FAX) 086-235-7412
 

図1
(A) マウス大脳皮質でのSNAT1、NeuN(神経細胞)、S100β(グリア細胞)、CD11b(ミクログリア)の発現。脳組織には主に神経細胞、グリア細胞、ミクログリアといった細胞が存在しているが、神経細胞のみにSNAT1が存在していることがわかる。
(B) 脳梗塞後の壊死部分の比較。白色の箇所が脳梗塞によって細胞死が起きている場所を示す。SNAT1欠損マウスでは、壊死部分が小さくなっていることに注目。
(C) 脳梗塞後のマウス大脳皮質におけるmTORC1活性の比較。赤色の箇所は、mTORC1が活性化されている箇所を示す。SNAT1欠損マウスでは、梗塞巣でのmTORC1活性が低下していることに注目。

【情報発信】医療ビッグデータを活用し、免疫チェックポイント阻害剤が誘発する副作用のハイリスク患者を明らかに

医療ビッグデータを活用し、免疫チェックポイント阻害剤が誘発する副作用のハイリスク患者を明らかに

 
2019年09月27日

◆発表のポイント
  • 進行したがんへの治療効果が期待されている「免疫チェックポイント阻害剤(ICI:Immune Checkpoint Inhibitors」には、一部で重篤な副作用が報告されていましたが、その具体的な発生リスク因子は分かっていませんでした。
  • 約 200万件の副作用症例を解析し、ICIは心筋炎の報告が他の薬剤に比べ高頻度であることと、75 歳以上の高齢者や女性で特に ICI 関連心筋炎の報告頻度が高い傾向が認められました。
  • 今後の ICI 関連心筋炎に対する治療方針に有益な知見を与えると考えられます。
 
 
岡山大学医歯薬学総合研究科医薬品臨床評価学分野の小山敏広助教、徳島大学臨床薬理学分野の座間味義人准教授、新村貴博大学院生、石澤啓介教授、徳島大学病院薬剤部の岡田直人博士、生命薬理学分野の福島圭穣助教、AWA サポートセンターの石澤有紀准教授らの研究グループは、約 200 万症例の医療ビッグデータを解析することで、免疫チェックポイント阻害剤関連心筋炎のリスクが高い患者群を明らかにしました。この研究成果は日本時間 8 月 22 日付で米国医学雑誌 「JAMA Oncology」に掲載されました。
 
進行したがんへの治療効果が期待されている免疫チェックポイント阻害剤(ICI:Immune Checkpoint Inhibitors)の使用にあたっては、発症する頻度は非常に低いものの重篤な有害事象として心筋炎が生じる可能性が報告されていました。本研究は国際的に大規模な副作用データベースを分析したことにより、稀な心筋炎の発症頻度は他の薬剤より高いという知見を得ました。
 
さらに、ICI 使用者に関して、年齢や性別が心筋炎の発現に与える影響を評価したところ、75 歳以上の高齢者や女性で特に ICI 関連心筋炎の報告頻度が高い傾向が認められました。ICI 関連心筋炎のリスク因子に関する知見は少ないため、本研究結果は、今後の ICI 関連心筋炎に対する治療方針に有益な知見を与えるものであると考えられます。
 
 
 
◆研究者からのひとこと
今回の研究は国際的な副作用データベースを用いて、発症頻度の低い有害事象に関連する潜在的なリスク因子を明らかにしました。この成果は、より安全な薬物治療に貢献する知見を提供するものです。また、今後は他の医療データベースを用いた臨床研究や基礎科学研究と組合せることで、研究を発展させることを期待しています。
小山助教

 

■論文情報
論 文 名:Factors associated with immune checkpoint inhibitor-related myocarditis.
掲 載 紙:JAMA Oncology
論文種別:Research Letter

著  者:Yoshito Zamami, Takahiro Niimura, Naoto Okada, Toshihiro Koyama, Keijo Fukushima, Yuki Izawa-Ishizawa, Keisuke Ishizawa.D O I:10.1001/jamaoncol.2019.3113

Factors Associated With Immune Checkpoint Inhibitor–Related Myocarditis


<詳しい研究内容について>
医療ビッグデータを活用し、免疫チェックポイント阻害剤が誘発する副作用のハイリスク患者を明らかに

<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
助教 小山敏広
(電話番号)086-235-6585
 

図:国際的な自発報告副作用データベースの解析から得られた副作用発症のリスク患者や医療関係者、製薬企業等から米国 FDA に報告された副作用症例約 200 万件を用いて、各 ICI の使用が心筋炎の発症に与える影響を解析しました。

【情報発信】脳梗塞後に神経細胞を新たに生み出すことに成功!~脳内グリア細胞から神経細胞を誘導する新技術を開発~

脳梗塞後に神経細胞を新たに生み出すことに成功!~脳内グリア細胞から神経細胞を誘導する新技術を開発~

 
2019年09月27日

◆発表のポイント
  • 脳梗塞後、神経細胞が死滅してしまうことで起こる運動麻痺などの後遺症には、現状根本的治療法がなく、寝たきりの大きな原因の一つとなっています。
  • 脳内グリア細胞に3つの転写因子を発現させることで、脳梗塞後の脳内に神経細胞を新たに供給することに成功しました。
  • 脳梗塞後の後遺症に苦しむ多くの患者を救う新たな治療法開発につながることが期待されます。
 
 
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の阿部康二教授と山下徹講師の研究グループは、脳梗塞後の脳内で神経細胞を新たに生み出すことに成功しました。
 
脳梗塞で一旦失われた神経細胞は再生されず、根本的治療がないのが現状です。今回3つの転写因子(Ascl1, Sox2, NeuroD1)を脳内に発現させることで、脳内に豊富に存在するグリア細胞という細胞から神経細胞を直接誘導することに成功しました。本研究成果は、脳梗塞後の運動麻痺などの後遺症に苦しむ多くの患者を救う新たな治療法開発につながることが期待されます。
 
これらの研究成果は7月29日、英国科学誌「Scientific Reports」のResearch Articleとして掲載されました。


◆研究者からのひとこと
脳梗塞の後遺症で苦しむ患者さんにむけて、新しい治療を提案できる可能性が出てきました。今後実用化にむけた研究を進める予定です。共同研究も大歓迎です。
阿部教授
実験当初、脳梗塞モデル作成やウイルス精製など実験過程で、様々なトラブルに見舞われましたが、ようやく成果が出て喜びで一杯です。患者さんに役立つ治療法に繋げるよう、今後とも頑張ります。
山下講師


■論文情報
論 文 名: In vivo direct reprogramming of glial linage to mature neurons after cerebral ischemia
邦題名「脳梗塞脳内グリア細胞を用いた神経細胞の誘導」
掲 載 紙: Scientific Reports著   者: Yamashita T, Shang J, Nakano Y, Morihara R, Sato K, Takemoto M, Hishikawa N, Ohta Y, Abe KD O I: 10.1038/s41598-019-47482-0発表論文はこちらからご確認できます。

<詳しい研究内容について>
脳梗塞後に神経細胞を新たに生み出すことに成功!~脳内グリア細胞から神経細胞を誘導する新技術を開発~


 <お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学
教授 阿部康二
(電話番号)086-235-7365
(FAX)  086-235-7368

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学
講師 山下徹
(電話番号)086-235-7365
(FAX)  086-235-7368


【情報発信】死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~

死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~

 
2019年09月30日
◆発表のポイント
  • 死にまね(死んだふり)は哺乳類、魚類、鳥類、両生類、爬虫類、甲殻類、ダニ類、昆虫と動物に広く普遍的にみられる行動で、天敵による捕食を回避するために動物が進化させた防衛戦略です。
  • 「死にまねの長さ」を制御する遺伝子群の探索を実施し、チロシン代謝系のドーパミン関連遺伝子が関与することを世界で初めて明らかにしました。
  • ドーパミン関連遺伝子を操作することで、生物の動きを決める仕組みの解明が期待できます。
 
 
岡山大学大学院環境生命科学研究科の宮竹貴久教授、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの矢嶋俊介教授、玉川大学農学部の佐々木謙教授の共同研究グループは、米・小麦類の世界的重要害虫であるコクヌストモドキにおいて、死にまね時間の異なる育種系統間で次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析1)を行いました。
 
その結果、死んだふりをする系統としない系統では、発現の異なる518個の遺伝子が存在し、このうちチロシン代謝経路に存在するドーパミン関連遺伝子群において、系統間で大きな発現の差が見られることを明らかにしました。これらの系統はもともと同じコクヌストモドキの数個体から、刺激を与えたときに死んだふりをする集団と、どれだけ刺激を与えても死にまねしない集団を育種したもので、両者では動きかたや歩行軌跡が大きく異なり、前者は天敵の攻撃回避に長け、後者は交尾に長けるため、野外では両者の共存が見られることがわかっています。
 
生物の動きや生き延びるための行動を支配する主要な遺伝子がドーパミンであることを、今回、世界に先駆けて明らかにしました。本研究成果は、9月30日英国時間午前10時(日本時間30日午後6時)に英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)に掲載されました。


◆研究者からのひとこと
アンリ・ルアール・ファーブルが昆虫記のなかで、死にまねは生物が陥る一種の仮死状態であり、適応的な意味はあるのかと疑問を投げかけて以来、百余年が経ちました。現代の生物学では、生物の行動を司る仕組みを遺伝子のレベルで解明できる時代になりました。なぜ生物は、こんな行動をするのか?その進化的な意味から体内で起きている仕組みや、ゲノムの変化までを統合的に理解する時代がやってきたのです。
宮竹教授


■論文情報
論文名:Transcriptomic comparison between beetle strains selected for short and long durations of death feigning.
邦題名「死んだふりを長くする系統としない系統間でのトランスクリプトームによる比較」
掲 載 誌:Scientific Reports著  者: Hironobu Uchiyama, Ken Sasaki, Shogo Hinosawa, Keisuke Tanaka, Kentatou Matsumura, Shunsuke Yajima, Takahisa MiyatakeD O I:10.1038/s41598-019-50440-5

<詳しい研究内容について>
死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~

 

<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
教授 宮竹 貴久
(電話番号)086-251-8339 

FAX番号)086-251-8388


【情報発信】「災害医療マネジメント学から見た災害シンポジウム ~平成30年7月豪雨被災後1年~」を開催

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科災害医療マネジメント学講座(鳥取市寄附講座 代表者:中尾博之教授)は8月11日、講座の開設1年を記念して「災害医療マネジメント学から見た災害シンポジウム ~平成30年7月豪雨被災後1年~」を岡山大学Junko Fukutake Hallで開催しました。岡山県下の医療従事者・行政関係者など約190人が出席しました。

本シンポジウムは、近年増加する災害に対してDMATをはじめとする救護体制の充実が図られるなか、縦割り体制から脱却してさまざまな体制・組織が責務を全うするための、災害医療マネジメント学の構築を図るために企画。中尾教授が平成26年に企画・開催したシンポジウム「国立大学病院と省庁の災害時における連携」の続編でもあります。

開会にあたり、同研究科の大塚愛二研究科長があいさつ。羽場恭一鳥取市副市長、金澤右岡山大学病院長が祝辞を述べました。

シンポジウムは2部構成で実施しました。第1部「災害医療を俯瞰する体制」では4人のシンポジストが登壇し、災害時における医療機関の防災体制、事業計画について討論。独立行政法人労働健康安全機構有賀徹理事長が地域におけるHealthcare BCPの重要性について、同機構の伊藤弘人氏が災害に強い地域づくりに寄与する災害拠点病院の第三者評価の動向について発表しました。東京都中央区保健所の山本光昭所長は、災害医療体制整備の経緯と今後の展開について、戸田建設株式会社竹村和晃氏は病院建築におけるBCP(MCP)についてそれぞれ発表。巨大災害に対応するために、地域単位での長期対策が必要になることでシンポジストの意見が一致し、各領域間のつながりを今後も構築していく仕組みとその評価方法の課題が指摘されました。

厚生労働省DMAT事務局の近藤久禎次長による記念講演もあり、「西日本豪雨対応について」と題して西日本豪雨災害での岡山県、広島県などの医療対応についての総括がなされました。

第2部「平成30年7月豪雨での災害医療を俯瞰する」では、岡山県における豪雨災害対応について、岡山県医師会の榊原敬理事、川崎医科大学救急総合診療医学講座の家永慎一郎氏、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科救命救急・災害医学講座の内藤宏道氏が、それぞれ自身の体験に基づいて報告。初期医療体制、保健医療調整本部での活動を振り返り、今後の災害医療体制のあるべき姿として、平時からの災害医療体制の在り方や多組織間での連携方法、災害医療モード発令のタイミング(意思決定)、外部への救援要請について課題の指摘と提案がなされました。

最後に中尾教授が「それぞれの人材・組織が能力を十分に発揮できる仕組みを、学問的視点から災害医療マネジメント学で探求していく」と抱負を述べ、閉会あいさつとしました。

【本件問い合わせ先】
大学院医歯薬学総合研究科災害医療マネジメント学講座
TEL:086-235-7427



2019年9月23日月曜日

【情報発信】自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功-超精密「原子核時計」実現に大きく前進-

自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功 -超精密「原子核時計」実現に大きく前進-

 
2019年09月12日
 
◆発表のポイント
  • 自然界最小の励起エネルギーを持つ原子核状態(アイソマー状態)を、世界で初めて人工的に生成することに成功しました。
  • 大型放射光施設(SPring-8)の高輝度X線を用いた原子核共鳴散乱技術により、アイソマー状態を大量かつ自在に生成することが可能になりました。
  • これによりアイソマー状態の研究が進展し、超精密原子核時計の実現に向けて大きく前進するものと期待されます。
 
自然界には約3300種以上の原子核が存在しますが、この中で最小の励起エネルギーをもつ原子核がトリウム229です。この励起状態(アイソマー状態と呼ばれる)は、レーザーを用いて励起することができる唯一の原子核励起状態であり、これとレーザーを組み合わせることにより超精密時計(”原子核時計”)を実現することが可能となります。またトリウム229は宇宙膨張の謎の解明など、基礎物理研究の舞台(プラットフォーム)としても有益であると予想されています。
 
トリウム229アイソマー状態に関する研究は40年以上にわたる歴史を持ちますが、大まかなエネルギー準位はわかっているものの、いまだレーザー励起には成功していません。困難な理由の一つが、この状態の生成方法にありました。すなわち、これまではウランからの放射線に伴う複雑な崩壊を利用する以外にその生成手段が存在しませんでした。
 
岡山大学、産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所、大阪大学、京都大学、東北大学、ウィーン工科大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)の共同研究グループは、世界で初めてアイソマー状態を人工的に生成することに成功しました。本方法は大型放射光施設(SPring-8)の高輝度X線を用いるもので、放射線の少ないクリーンな環境下でアイソマー状態を自在に生成できるという利点があります。これによりアイソマー状態の研究が進展し、原子核時計の実現に向けて大きく前進するものと期待されます。
 
本研究成果は英国時間9月11日午後6時(日本時間9月12日午前2時)、英国学術雑誌「Nature」のオンライン版に掲載されました。


◆研究者からのひとこと
この研究は大型放射光施設による高輝度X線、高速X線検出器、高性能トリウム標的、高精度角度検出技術など日本が誇る先端技術を結集し、オールジャパンの研究体制でようやく成功することができました。今後は、世界初の原子核時計の実現を目指し、一層強力な共同研究を推進する所存です。
吉村教授

 
■論文情報
 論 文 名:X-ray pumping of the 229Th nuclear clock isomer
 掲 載 紙:Nature

 著  者:Takahiko Masuda1, Akihiro Yoshimi1, Akira Fujieda1, Hiroyuki Fujimoto2, Hiromitsu Haba3, Hideaki Hara1, Takahiro Hiraki1, Hiroyuki Kaino1, Yoshitaka Kasamatsu4, Shinji Kitao5, Kenji Konashi6, Yuki Miyamoto1, Koichi Okai1, Sho Okubo1, Noboru Sasao1*, Makoto Seto5, Thorsten Schumm7, Yudai Shigekawa4, Kenta Suzuki1, Simon Stellmer7,10, Kenji Tamasaku8, Satoshi Uetake1, Makoto Watanabe6, Tsukasa Watanabe2, Yuki Yasuda4, Atsushi Yamaguchi3, Yoshitaka Yoda9, Takuya Yokokita3, Motohiko Yoshimura1 & Koji Yoshimura1*
1Research Institute for Interdisciplinary Science, Okayama University, Okayama, Japan.
2National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Tsukuba, Japan.
3RIKEN, Wako, Japan.
4Graduate School of Science, Osaka University, Toyonaka, Japan.
5Institute for Integrated Radiation and Nuclear Science, Kyoto University, Kumatori-cho, Japan.
6Institute for Materials Research, Tohoku University, Higashiibaraki-gun, Japan.
7Institute for Atomic and Subatomic Physics, TU Wien, Vienna, Austria.
8RIKEN SPring-8 Center, Sayo-cho, Sayo-gun, Hyogo, Japan.
9Japan Synchrotron Radiation Research Institute (JASRI), Sayo-cho, Sayo-gun, Hyogo, Japan.
 D O I:10.1038/s41586-019-1542-3


<詳しい研究内容について>
自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功-超精密「原子核時計」実現に大きく前進-


<お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所
教授 吉村 浩司
(電話番号)086-251-8499
(FAX)086-251-7811

<SPring-8/SACLAに関すること>
高輝度光科学研究センター
利用推進部 普及情報課
(電話番号)0791-58-2785
(FAX)0791-58-2786


2019年9月18日水曜日

【情報発信】平井国務大臣が来学 槇野学長と懇談し、工学部を視察

9月4日、平井卓也国務大臣(IT政策担当)が本学を訪れ、槇野博史学長と懇談し、工学部の情報処理関係の研究を視察しました。

平井大臣は、9月3~5日に本学で開催された、国内最大級の情報関係の全国大会である第18回情報科学技術フォーラム(FIT)に合わせて来学。岡山商工会議所の松田久会頭と学長室を訪れ、槇野学長からSDGs関係を中心に最近の岡山大学の活動について説明を受けました。

続けて平井大臣はFITで、「社会全体のデジタル化とその先の日本」と題して、IT担当大臣として進めている政策について講演。スタートアップ戦略として大学を中心としてエコシステムを強化することや、ムーンショット型(従来の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な)研究開発制度などの新しい施策について熱弁いただきました。

工学部では、顔写真を用いた2次元コード作成の技術や、舌を摘出した患者の声を音声合成によって聞き取りやすくする技術など、情報処理関係の3つのデモンストレーションを視察。技術的な質問や、貴重なご意見をいただきました。

◯工学部視察の詳細についてはこちら(工学部新着ニュース)


 【本件問い合わせ先】
総務・企画部広報課
TEL:086-251-7013



【情報発信】国内最大規模の産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2019」に出展

岡山大学は8月29・30日、東京ビッグサイトで開催された国内最大規模の産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2019 ~大学見本市&ビジネスマッチング~」に出展しました。

今回は医療分野、ライフサイエンス分野でそれぞれ1テーマをブース展示するとともに、各テーマの担当教員が自らの研究について紹介する「ショートプレゼンテーション」を2日間にわたり行いました。

ショートプレゼンテーションでは初日、岡山大学病院心臓血管外科の逢坂大樹技術専門職員(共同研究者:大学院医歯薬学総合研究科 大澤晋講師)が「Diamond like carbon技術を用いた狭窄しない人工血管の開発」と題し、従来製品と比べて優れた生体適合性を発揮するダイヤモンドライクカーボン(極薄高耐久性カーボン膜)の人工血管への応用研究について紹介。

2日目は、大学院ヘルスシステム統合科学研究科の世良貴史教授が「人工核酸結合タンパク質の医療・農業への応用」と題し、遺伝情報の発現量の人為的な調節を可能にし、医療や農業へ応用できる人工核酸結合タンパク質のデザイン・創出手法について講演しました。

会場に設けたブースにも多数の方が来訪し、教員らと活発な意見交換を行いました。

それぞれの研究の詳細についてはこちらをご覧ください。

・大澤講師(共同研究者:逢坂技術専門職員)
・世良教授


 【本件問い合わせ先】
研究推進機構産学連携・技術移転本部
TEL:086-251-7112




2019年9月17日火曜日

【情報発信】イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明

イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明

 
2019年09月12日


◆発表のポイント
  • 植物は土壌環境の変化に対応するために、根にカスパリー帯と呼ばれる物理的なバリアーを形成し、無秩序なミネラルの流入や流出を抑制します。
  • イネの根のカスパリー帯形成に必要な遺伝子OsCASP1を発見し、長年不明だったカスパリー帯形成の分子機構を明らかにしました。
  • 植物の養分吸収機構の理解を深めることができ、ミネラルの過不足が生じる不良土壌での植物の生育の改善や、作物の栄養価の向上などに応用できます。


岡山大学資源植物科学研究所の馬建鋒教授らの研究グループは、イネの根のカスパリー帯の形成に必要な遺伝子を世界で初めて突き止め、選択的養分吸収における役割を解明しました。本研究成果は9月5日、米国の植物科学のトップジャーナル「The Plant Cell」にOnlineにて公開されました。

根にあるカスパリー帯は病原菌や有害ミネラルの流入阻止、選択的な養水分の吸収制御に重要な役割を果たしています。イネの場合、根の外皮と内皮に二つのカスパリー帯があり、本研究ではOsCASP1という遺伝子が、内皮のカスパリー帯の形成に関わることを発見。OsCASP1を破壊すると、内皮のカスパリー帯の形成が不完全となり、ミネラル吸収のコントロールができなくなって植物の生育が阻害されてしまいました。
 
本研究成果により、長年不明だったカスパリー帯形成の分子機構が明らかとなりました。これにより植物の養分吸収機構の理解を深めることができ、ミネラルの過不足が生じる不良土壌での植物の生育の改善や、作物の栄養価の向上などへの応用が期待されます。
 

 
◆研究者からのひとこと
中国のグループ(元教え子)との共同研究で、長年不明だったイネのカスパリー帯の形成機構を明らかにすることができ、うれしく思います。これまでカスパリー帯の存在自体は教科書にも書いてあり、知られていましたが、植物の最適な生育に必要な選択的養分吸収にとって非常に重要な役割を果たしていることを、自分たちの実験で証明できました。
馬教授

 


■論文情報
論 文 名:OsCASP1 is required for Casparian strip formation at endodermal cells of rice roots for selective uptake of mineral elements掲 載 紙:The Plant Cell著  者:Zhigang Wang, Naoki Yamaji, Sheng Huang, Xiang Zhang, Mingxing Shi, Shan Fu, Guangzhe Yang, Jian Feng Ma and Jixing XiaD O I:10.1105/tpc.19.00296U R L:http://www.plantcell.org/content/early/2019/09/04/tpc.19.00296.abstract


<詳しい研究内容について>
イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明


 <お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
教授  馬 建鋒 
(電話・FAX)086-434-1209


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id659.html

2019年9月10日火曜日

【情報発信】「岡山大学新技術説明会」を開催し、本学の最先端の研究成果を公開

岡山大学は9月5日、「岡山大学新技術説明会」を国立研究開発法人科学技術振興機構との共催で、東京都内で開催しました。

本説明会は、本学で生まれた研究成果の実用化を目的として、研究者自身が企業関係者らに向けて技術説明を行い、広く実施企業・共同研究パートナーを募るもので、エネルギー、材料、医療・福祉、創薬分野の7件の研究成果を公開しました。

本説明会にはのべ145人の企業関係者が参加。担当教員は多くの参加者と名刺交換を行い、希望者と個別相談を行いました。

 【当日のプログラム】
1)次世代の洋上風力発電と海洋状況把握(MDA)のための自律高空帆走プラットフォームの開発
  大学院環境生命科学研究科 社会基盤環境学専攻 准教授 比江島 慎二
2)短繊維強化複合材料の破壊予測技術
  大学院自然科学研究科 産業創成工学専攻 先端機械学講座 教授 多田 直哉
3)長尺細管素材に対するDiamond like carbonプラズマ成膜技術
  岡山大学病院 心臓血管外科 講師 大澤 晋
4)マラリア軟膏製剤は新しい発想のマラリア治療剤である
  大学院医歯薬学総合研究科 国際感染症制御学分野 准教授 金 惠淑
5)遺伝子編集技術を用いたRNAミサイル療法実用化への開発研究
  大学院医歯薬学総合研究科 公衆衛生学 客員研究員 伊藤 達男
6)専門医に学ぶ AIを用いた透析管理システムの開発
  大学院医歯薬学総合研究科 病理学(免疫病理) 助教 大原 利章
7)整形外科疾患における荷重位誘導装置の開発
  岡山大学病院 医療技術部 放射線部門 診療放射線技師長 本田 貢


 
「岡山大学新技術説明会」の発表内容詳細及び資料はこちらからご覧いただけます。
 

 【本件問い合わせ先】
研究推進機構 産学連携・技術移転本部
TEL:086-251-8463