2019年9月30日月曜日

【情報発信】神経細胞でのオートファジーを治療標的とするための候補分子を発見新しい神経細胞保護薬の開発へ

神経細胞でのオートファジーを治療標的とするための候補分子を発見新しい神経細胞保護薬の開発へ

 
2019年09月27日

 
◆発表のポイント
  • 細胞質内のタンパク質を分解するシステムの一つであるオートファジーは、特定部位のみで活性を制御することができれば、各種神経疾患やがんの治療へ活用が可能ですが、その手法はまだ確立していません。
  • 神経細胞でのオートファジーを制御するアミノ酸トランスポーター[2] (SNAT1)を同定し、その機能を抑えることで、神経細胞死が抑制できることを発見しました。
  • 新規の神経保護薬の開発に応用されることが期待されます。
 
 
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の山田大祐助教と宝田剛志研究教授の研究グループは、脳内の神経細胞に発現するアミノ酸トランスポーターの一つであるSNAT1(Sodium-coupled neutral amino acid transporter 1、Slc38a1)を阻害することで、神経細胞でのオートファジーが活性化され、神経細胞死の抑制につながることを見出しました。
 
成果は9月18日、国際科学誌「Communications Biology」のResearch Articleとして掲載されました。今回見出した研究成果が、新規の神経保護薬の開発に応用されることが期待されます。


◆研究者からのひとこと
神経細胞に多く存在しているアミノ酸トランスポーターの活性化が、酸素欠乏時の神経細胞死を引き起こすことが分かりました。神経細胞のみを標的にした神経疾患の治療が将来的に可能になるかもしれません。今後も、副作用の少ない疾患治療の開発に応用できるような研究を行っていきたいと考えています。
山田助教


■論文情報
論 文 名:Inhibition of the glutamine transporter Slc38a1 confers neuroprotection by modulating the mTOR-autophagy system掲 載 紙:Communications Biology
著  者:Daisuke Yamada, Kenji Kawabe, Ikue Tosa, Shunpei Tsukamoto, Ryota Nakazato, Miki Kou, Koichi Fujikawa, Saki Nakamura, Mitsuaki Ono, Toshitaka Oohashi, Mari Kaneko, Shioi Go, Eiichi Hinoi, Yukio Yoneda and Takeshi TakaradaD O I:10.1038/s42003-019-0582-4
U R L:
https://www.nature.com/articles/s42003-019-0582-4


<詳しい研究内容について>
神経細胞でのオートファジーを治療標的とするための候補分子を発見新しい神経細胞保護薬の開発へ


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
組織機能修復学分野 研究教授 宝田 剛志
(電話番号) 086-235-7407
(FAX) 086-235-7412
 

図1
(A) マウス大脳皮質でのSNAT1、NeuN(神経細胞)、S100β(グリア細胞)、CD11b(ミクログリア)の発現。脳組織には主に神経細胞、グリア細胞、ミクログリアといった細胞が存在しているが、神経細胞のみにSNAT1が存在していることがわかる。
(B) 脳梗塞後の壊死部分の比較。白色の箇所が脳梗塞によって細胞死が起きている場所を示す。SNAT1欠損マウスでは、壊死部分が小さくなっていることに注目。
(C) 脳梗塞後のマウス大脳皮質におけるmTORC1活性の比較。赤色の箇所は、mTORC1が活性化されている箇所を示す。SNAT1欠損マウスでは、梗塞巣でのmTORC1活性が低下していることに注目。

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