2013年11月14日木曜日

【産学官・異分野】イノベーションの未来を拓く処方箋5 ーシリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出現場(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動ー)

「岡山大学シーズ・ニーズ創出強化イノベーション対話プログラム2013」では、事業の名前が意味するように「イノベーション(Innovation)」がひとつの“鍵”となっています。しかし、「イノベーション」とはどのようなものでしょうか。「イノベーション」という言葉をヨーゼフ・シュンペーターが形作ってから1世紀が経過しましたが、その時間の中でイノベーションを創出する環境はさまざまに入れ替わりました。その環境の中でイノベーションの“鍵”となるキーワードついて対話を行う会「イノベーションの未来を拓く処方箋」(第5回)を本学津島キャンパスで開催しました。

話題提供者は、本事業実施責任者である岡山大学学長特命(研究担当)・URAの佐藤法仁が務めました。今回の対話は、「シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出現場(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動)」と題して行われました。

本対話のその1では「シリコンバレーのハブ機能」と題して、カリフォルニア州の北部ベイエリアにあるシリコンバレー(Silicon Valley)の取組について紹介し、その2では「シリコンビーチ台頭の兆し」と題して、南カリフォルニアのロサンゼルス周辺としたシリコンビーチ(Silicon Beach)のイノベーション創出環境について対話する会を行いました。今回はその3として、「イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動」と題して、中東に位置するイスラエルのイノベーション創出活動に注目する会となりました。

話題提供者の佐藤法仁URAは、イスラエルが位置する中東の国際情勢とともに、自国の防衛意識の高さ、それに比例する即戦力となるテクノロジーの強化、産業資源として新産業創出に至るスタートアップ活動の充実さなどについて紹介し、同じく資源に乏しいわが国との対比も行い、話題を提供しました。
また、イスラエルの中核都市であるテルアビブ(TelAviv)で2011年から開催されているイノベーション創出の祭典「デジタル・ライフ・デザイン(Digital Life Design:DLD)」についても紹介。シリコンバレーなどで飛躍するベンチャー企業(元ベンチャー企業含む)がこぞってテルアビブに集結し、シーズとニーズのマッチングや新技術の披露など、オープンイノベーションに即した取組を積極的に行っている事例について、詳細に紹介しました。

佐藤URAは、「イスラエルは四国ほどの国土面積で、人口も800万人程度の小さな国だが、世界を動かす頭脳がある。歴史的背景、特に第二次世界大戦後の関係でドイツの資本が多くつぎ込まれているが、このドイツのものつくりの過程をうまく吸収している。また大学で言えば、1912年に設立されたテクニオン工科大学(イスラエル工科大学とも呼ばれる)における起業家育成プログラムは凄い勢いがあり、スタートアップ資金もこれまでに軽く3,000億円以上になる。一度起業した人が会社を売却して再び企業するシリアルアントレプレナー(Serial Entrepreneur)も多く、これがイノベーションのエコ循環にもなっている。この起業家精神にあふれた大学の取組はわが国にはないものであり、非常に参考となる。他方でDLDは、街を巻き込んでのイノベーション創出の展示会であり、わが国などで行われている“箱もの”での展示会とは大きく異なる。街を巻き込んだ取組が行われることは重要であり、この取組が“文化”となる。この文化への取組はイノベーション創出環境において極めて重要なポイントではないか」と語りかけ、イスラエスが持つ歴史的背景から、イノベーション大国へと成長を進める過程について、さまざまな情報や事例を示しながら対話を行いました。

国を挙げてのイノベーション創出に取り組んでいるわが国においては、イスラエルの取組は参考になる点が多いです。また、テクニオン工科大学の取組も制度は違えど、参考になる点が数多くあります。近い将来、イスラエルがアメリカに代わり世界のイノベーション創出の頭脳を輩出する重要な国となるかもしれません。その取り組みを注視しつつ、取り込めるものを吸収していく活動が必要だと思われます。今後もイスラエルの活動に注目です。

<過去開催>
第1回 オープンイノベーション(Open Innovation) 大学と企業の関係:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/09/open-innovation.html
第2回 大学発ベンチャーの“企業”としての自立化:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_25.html
第3回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(1.シリコンバレーのハブ機能):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_30.html
第4回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(2.シリコンビーチ台頭の兆し):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

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