2022年3月14日月曜日

【情報発信】地球深部における水/水素の循環メカニズムに新たな知見:アルミニウムを含有した高密度水酸化マグネシウム珪酸塩の安定性と単結晶構造物性を解明

山口大学と熊本大学、広島大学、岡山大学の共同研究成果です!

 



<研究のポイント>
  • 地球深部における水/水素の貯蔵庫の一つと期待されるD相と呼ばれる高密度水酸化マグネシウム珪酸塩にアルミニウムを導入することによって、水素含有量が増加するとともに、その安定領域がこれまで考えられてきたよりも高温高圧領域にまで拡張することを明らかにしました。
  • この安定性の向上に、珪素をアルミニウムが置換することで生じる陽イオン間斥力の緩和効果が大きく影響していることを明らかにしました。
  • 沈み込む海洋プレート(スラブ)によって下部マントルへ運ばれた含水素鉱物相の分解で放出された自由水と周囲のブリッジマナイトとの反応で生成したアルミニウムを含有したD相が、地球深部での水/水素の循環メカニズムに重要な役割を果たしていると期待されます。


◆概 要
 山口大学大学院創成科学研究科の中塚晃彦准教授は、熊本大学大学院先端科学研究部の吉朝朗教授、広島大学大学院先進理工系科学研究科の大川真紀雄助教、岡山大学の伊藤英司名誉教授(研究当時、岡山大学地球物質科学研究センター教授)との共同研究において、D相と呼ばれる高密度水酸化マグネシウム珪酸塩にアルミニウム(Al)を導入することによって、水素含有量が増加するとともに、その安定領域がこれまで考えられてきたよりも高温高圧領域にまで劇的に拡張することを明らかにしました。

 さらに、本高圧実験で得られたAlを含有したD相(Al-D相)の単結晶試料を用いた精密なX線結晶構造解析から、Alと水素の導入メカニズムとそれによる安定性向上のメカニズムを結晶化学的見地から明らかにしました。

 この結果から、下部マントル へ運ばれた含水素鉱物相の分解で放出された自由水と周囲のブリッジマナイトとの反応で生成したAl-D相が、地球深部での水/水素の循環メカニズムに重要な役割を果たしていると期待されます。

 この研究成果は、2022年3月4日にSpringer Nature社が発行する英国の科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

 

図1.(a)Al-D相の単結晶の走査型電子顕微鏡写真。(b)この単結晶を用いて決定したAl-D相の結晶構造。マグネシウム(Mg)が中心にある配位多面体(M-八面体)と珪素(Si)/アルミニウム(Al)/マグネシウム(Mg)が中心にある配位多面体(S-八面体)の結合を描いている。
 

図2.本研究で推察されたMgSiO3系(灰色の点線)とAl2O3成分を含有したMgSiO3系(青色の実線)の水の飽和条件下での可能な安定関係。D:D相,Brg:MgSiO3ブリッジマナイト,Al-D:Al-D相,Al-Brg:Al含有MgSiO3ブリッジマナイト,Liq:液相,MSH:残存したMgO-SiO2-H2O成分。( )付きと( )無しの安定領域は、それぞれAl2O3成分を含有していない系と含有している系の領域を示している。IW(Ito & Weidner, Geophys. Res. Lett. 13, 464–466, 1986)およびOh(Ohtani et al., Phys. Chem. Miner. 27, 533–544, 2000)は文献から引用したデータである。赤色の✕印、●印、↓印は、それぞれ本研究での高圧結晶成長実験における最高保持温度、急冷温度、徐冷パスを示している。青色の長い点線矢印と短い点線矢印は、それぞれD+MSHとBrg+H2O間の相境界および液相線がAl2O3成分を含有することによって高温側へ移動することを示している。


◆論文情報
 題  目:Aluminous hydrous magnesium silicate as a lower-mantle hydrogen reservoir: a role as an agentfor material transport
 著  者:Akihiko Nakatsuka, Akira Yoshiasa, Makio Ohkawa & Eiji Ito
 雑  誌:Scientific Reports
 D  O  I:https://doi.org/10.1038/s41598-022-07007-8
 U  R  L:https://www.nature.com/articles/s41598-022-07007-8


◆詳しいプレスリリースについて
 地球深部における水/水素の循環メカニズムに新たな知見:アルミニウムを含有した高密度水酸化マグネシウム珪酸塩の安定性と単結晶構造物性を解明
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id928.html
 



◆本件お問い合わせ先
<研究に関すること>
 山口大学大学院創成科学研究科 准教授  中塚晃彦
 熊本大学大学院先端科学研究部 教授  吉朝 朗
 広島大学大学院先進理工系科学研究科 助教  大川真紀雄
 岡山大学 名誉教授  伊藤英司

<報道に関すること>
 山口大学 総務企画部 広報室 新井 翼
 TEL:083-933-5319
 FAX:083-933-5013

 熊本大学 総務部 総務課 広報戦略室 山下貴菜
 TEL:096-342-3269

 広島大学 財務・総務室 広報部 広報グループ  上脇 薫
 TEL:082-424-3749

 岡山大学 総務・企画部 広報課
 TEL:086-251-8415

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

 岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
 岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
 岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
 岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
 「岡大TV」(YouTube):https://www.youtube.com/channel/UCi4hPHf_jZ1FXqJfsacUqaw
 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2022年3月期共創活動パートナー募集中:
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000528.000072793.html

 岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
 岡山大学『大学ブランド・イメージ調査2021~2022』「SDGsに積極的な大学」中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
 岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています

 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000553.000072793.html

0 件のコメント:

コメントを投稿