2019年9月23日月曜日

【情報発信】自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功-超精密「原子核時計」実現に大きく前進-

自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功 -超精密「原子核時計」実現に大きく前進-

 
2019年09月12日
 
◆発表のポイント
  • 自然界最小の励起エネルギーを持つ原子核状態(アイソマー状態)を、世界で初めて人工的に生成することに成功しました。
  • 大型放射光施設(SPring-8)の高輝度X線を用いた原子核共鳴散乱技術により、アイソマー状態を大量かつ自在に生成することが可能になりました。
  • これによりアイソマー状態の研究が進展し、超精密原子核時計の実現に向けて大きく前進するものと期待されます。
 
自然界には約3300種以上の原子核が存在しますが、この中で最小の励起エネルギーをもつ原子核がトリウム229です。この励起状態(アイソマー状態と呼ばれる)は、レーザーを用いて励起することができる唯一の原子核励起状態であり、これとレーザーを組み合わせることにより超精密時計(”原子核時計”)を実現することが可能となります。またトリウム229は宇宙膨張の謎の解明など、基礎物理研究の舞台(プラットフォーム)としても有益であると予想されています。
 
トリウム229アイソマー状態に関する研究は40年以上にわたる歴史を持ちますが、大まかなエネルギー準位はわかっているものの、いまだレーザー励起には成功していません。困難な理由の一つが、この状態の生成方法にありました。すなわち、これまではウランからの放射線に伴う複雑な崩壊を利用する以外にその生成手段が存在しませんでした。
 
岡山大学、産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所、大阪大学、京都大学、東北大学、ウィーン工科大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)の共同研究グループは、世界で初めてアイソマー状態を人工的に生成することに成功しました。本方法は大型放射光施設(SPring-8)の高輝度X線を用いるもので、放射線の少ないクリーンな環境下でアイソマー状態を自在に生成できるという利点があります。これによりアイソマー状態の研究が進展し、原子核時計の実現に向けて大きく前進するものと期待されます。
 
本研究成果は英国時間9月11日午後6時(日本時間9月12日午前2時)、英国学術雑誌「Nature」のオンライン版に掲載されました。


◆研究者からのひとこと
この研究は大型放射光施設による高輝度X線、高速X線検出器、高性能トリウム標的、高精度角度検出技術など日本が誇る先端技術を結集し、オールジャパンの研究体制でようやく成功することができました。今後は、世界初の原子核時計の実現を目指し、一層強力な共同研究を推進する所存です。
吉村教授

 
■論文情報
 論 文 名:X-ray pumping of the 229Th nuclear clock isomer
 掲 載 紙:Nature

 著  者:Takahiko Masuda1, Akihiro Yoshimi1, Akira Fujieda1, Hiroyuki Fujimoto2, Hiromitsu Haba3, Hideaki Hara1, Takahiro Hiraki1, Hiroyuki Kaino1, Yoshitaka Kasamatsu4, Shinji Kitao5, Kenji Konashi6, Yuki Miyamoto1, Koichi Okai1, Sho Okubo1, Noboru Sasao1*, Makoto Seto5, Thorsten Schumm7, Yudai Shigekawa4, Kenta Suzuki1, Simon Stellmer7,10, Kenji Tamasaku8, Satoshi Uetake1, Makoto Watanabe6, Tsukasa Watanabe2, Yuki Yasuda4, Atsushi Yamaguchi3, Yoshitaka Yoda9, Takuya Yokokita3, Motohiko Yoshimura1 & Koji Yoshimura1*
1Research Institute for Interdisciplinary Science, Okayama University, Okayama, Japan.
2National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Tsukuba, Japan.
3RIKEN, Wako, Japan.
4Graduate School of Science, Osaka University, Toyonaka, Japan.
5Institute for Integrated Radiation and Nuclear Science, Kyoto University, Kumatori-cho, Japan.
6Institute for Materials Research, Tohoku University, Higashiibaraki-gun, Japan.
7Institute for Atomic and Subatomic Physics, TU Wien, Vienna, Austria.
8RIKEN SPring-8 Center, Sayo-cho, Sayo-gun, Hyogo, Japan.
9Japan Synchrotron Radiation Research Institute (JASRI), Sayo-cho, Sayo-gun, Hyogo, Japan.
 D O I:10.1038/s41586-019-1542-3


<詳しい研究内容について>
自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功-超精密「原子核時計」実現に大きく前進-


<お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所
教授 吉村 浩司
(電話番号)086-251-8499
(FAX)086-251-7811

<SPring-8/SACLAに関すること>
高輝度光科学研究センター
利用推進部 普及情報課
(電話番号)0791-58-2785
(FAX)0791-58-2786


2019年9月18日水曜日

【情報発信】平井国務大臣が来学 槇野学長と懇談し、工学部を視察

9月4日、平井卓也国務大臣(IT政策担当)が本学を訪れ、槇野博史学長と懇談し、工学部の情報処理関係の研究を視察しました。

平井大臣は、9月3~5日に本学で開催された、国内最大級の情報関係の全国大会である第18回情報科学技術フォーラム(FIT)に合わせて来学。岡山商工会議所の松田久会頭と学長室を訪れ、槇野学長からSDGs関係を中心に最近の岡山大学の活動について説明を受けました。

続けて平井大臣はFITで、「社会全体のデジタル化とその先の日本」と題して、IT担当大臣として進めている政策について講演。スタートアップ戦略として大学を中心としてエコシステムを強化することや、ムーンショット型(従来の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な)研究開発制度などの新しい施策について熱弁いただきました。

工学部では、顔写真を用いた2次元コード作成の技術や、舌を摘出した患者の声を音声合成によって聞き取りやすくする技術など、情報処理関係の3つのデモンストレーションを視察。技術的な質問や、貴重なご意見をいただきました。

◯工学部視察の詳細についてはこちら(工学部新着ニュース)


 【本件問い合わせ先】
総務・企画部広報課
TEL:086-251-7013



【情報発信】国内最大規模の産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2019」に出展

岡山大学は8月29・30日、東京ビッグサイトで開催された国内最大規模の産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2019 ~大学見本市&ビジネスマッチング~」に出展しました。

今回は医療分野、ライフサイエンス分野でそれぞれ1テーマをブース展示するとともに、各テーマの担当教員が自らの研究について紹介する「ショートプレゼンテーション」を2日間にわたり行いました。

ショートプレゼンテーションでは初日、岡山大学病院心臓血管外科の逢坂大樹技術専門職員(共同研究者:大学院医歯薬学総合研究科 大澤晋講師)が「Diamond like carbon技術を用いた狭窄しない人工血管の開発」と題し、従来製品と比べて優れた生体適合性を発揮するダイヤモンドライクカーボン(極薄高耐久性カーボン膜)の人工血管への応用研究について紹介。

2日目は、大学院ヘルスシステム統合科学研究科の世良貴史教授が「人工核酸結合タンパク質の医療・農業への応用」と題し、遺伝情報の発現量の人為的な調節を可能にし、医療や農業へ応用できる人工核酸結合タンパク質のデザイン・創出手法について講演しました。

会場に設けたブースにも多数の方が来訪し、教員らと活発な意見交換を行いました。

それぞれの研究の詳細についてはこちらをご覧ください。

・大澤講師(共同研究者:逢坂技術専門職員)
・世良教授


 【本件問い合わせ先】
研究推進機構産学連携・技術移転本部
TEL:086-251-7112




2019年9月17日火曜日

【情報発信】イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明

イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明

 
2019年09月12日


◆発表のポイント
  • 植物は土壌環境の変化に対応するために、根にカスパリー帯と呼ばれる物理的なバリアーを形成し、無秩序なミネラルの流入や流出を抑制します。
  • イネの根のカスパリー帯形成に必要な遺伝子OsCASP1を発見し、長年不明だったカスパリー帯形成の分子機構を明らかにしました。
  • 植物の養分吸収機構の理解を深めることができ、ミネラルの過不足が生じる不良土壌での植物の生育の改善や、作物の栄養価の向上などに応用できます。


岡山大学資源植物科学研究所の馬建鋒教授らの研究グループは、イネの根のカスパリー帯の形成に必要な遺伝子を世界で初めて突き止め、選択的養分吸収における役割を解明しました。本研究成果は9月5日、米国の植物科学のトップジャーナル「The Plant Cell」にOnlineにて公開されました。

根にあるカスパリー帯は病原菌や有害ミネラルの流入阻止、選択的な養水分の吸収制御に重要な役割を果たしています。イネの場合、根の外皮と内皮に二つのカスパリー帯があり、本研究ではOsCASP1という遺伝子が、内皮のカスパリー帯の形成に関わることを発見。OsCASP1を破壊すると、内皮のカスパリー帯の形成が不完全となり、ミネラル吸収のコントロールができなくなって植物の生育が阻害されてしまいました。
 
本研究成果により、長年不明だったカスパリー帯形成の分子機構が明らかとなりました。これにより植物の養分吸収機構の理解を深めることができ、ミネラルの過不足が生じる不良土壌での植物の生育の改善や、作物の栄養価の向上などへの応用が期待されます。
 

 
◆研究者からのひとこと
中国のグループ(元教え子)との共同研究で、長年不明だったイネのカスパリー帯の形成機構を明らかにすることができ、うれしく思います。これまでカスパリー帯の存在自体は教科書にも書いてあり、知られていましたが、植物の最適な生育に必要な選択的養分吸収にとって非常に重要な役割を果たしていることを、自分たちの実験で証明できました。
馬教授

 


■論文情報
論 文 名:OsCASP1 is required for Casparian strip formation at endodermal cells of rice roots for selective uptake of mineral elements掲 載 紙:The Plant Cell著  者:Zhigang Wang, Naoki Yamaji, Sheng Huang, Xiang Zhang, Mingxing Shi, Shan Fu, Guangzhe Yang, Jian Feng Ma and Jixing XiaD O I:10.1105/tpc.19.00296U R L:http://www.plantcell.org/content/early/2019/09/04/tpc.19.00296.abstract


<詳しい研究内容について>
イネの選択的養分吸収に必要なカスパリー帯の形成機構を解明


 <お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
教授  馬 建鋒 
(電話・FAX)086-434-1209


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id659.html

2019年9月10日火曜日

【情報発信】「岡山大学新技術説明会」を開催し、本学の最先端の研究成果を公開

岡山大学は9月5日、「岡山大学新技術説明会」を国立研究開発法人科学技術振興機構との共催で、東京都内で開催しました。

本説明会は、本学で生まれた研究成果の実用化を目的として、研究者自身が企業関係者らに向けて技術説明を行い、広く実施企業・共同研究パートナーを募るもので、エネルギー、材料、医療・福祉、創薬分野の7件の研究成果を公開しました。

本説明会にはのべ145人の企業関係者が参加。担当教員は多くの参加者と名刺交換を行い、希望者と個別相談を行いました。

 【当日のプログラム】
1)次世代の洋上風力発電と海洋状況把握(MDA)のための自律高空帆走プラットフォームの開発
  大学院環境生命科学研究科 社会基盤環境学専攻 准教授 比江島 慎二
2)短繊維強化複合材料の破壊予測技術
  大学院自然科学研究科 産業創成工学専攻 先端機械学講座 教授 多田 直哉
3)長尺細管素材に対するDiamond like carbonプラズマ成膜技術
  岡山大学病院 心臓血管外科 講師 大澤 晋
4)マラリア軟膏製剤は新しい発想のマラリア治療剤である
  大学院医歯薬学総合研究科 国際感染症制御学分野 准教授 金 惠淑
5)遺伝子編集技術を用いたRNAミサイル療法実用化への開発研究
  大学院医歯薬学総合研究科 公衆衛生学 客員研究員 伊藤 達男
6)専門医に学ぶ AIを用いた透析管理システムの開発
  大学院医歯薬学総合研究科 病理学(免疫病理) 助教 大原 利章
7)整形外科疾患における荷重位誘導装置の開発
  岡山大学病院 医療技術部 放射線部門 診療放射線技師長 本田 貢


 
「岡山大学新技術説明会」の発表内容詳細及び資料はこちらからご覧いただけます。
 

 【本件問い合わせ先】
研究推進機構 産学連携・技術移転本部
TEL:086-251-8463