2014年2月19日水曜日

【産学官・異分野】イノベーションの未来を拓く処方箋8 ー 共用スペース?いえ違います“コワーキングスペース”です ー

「岡山大学シーズ・ニーズ創出強化イノベーション対話プログラム2013」では、事業の名前が意味するように「イノベーション(Innovation)」がひとつの“鍵”となっています。しかし、「イノベーション」とはどのようなものでしょうか。「イノベーション」という言葉をヨーゼフ・シュンペーターが形作ってから1世紀が経過しましたが、その時間の中でイノベーションを創出する環境はさまざまに入れ替わりました。その環境の中でイノベーションの“鍵”となるキーワードついて対話を行う会「イノベーションの未来を拓く処方箋」(第8回)を本学津島キャンパスで開催しました。

話題提供者は、本事業実施責任者である岡山大学学長特命(研究担当)・URAの佐藤法仁が務めました。今回の対話は、「共用スペース?いえ違います“コワーキングスペース”ですと題して行われました。

本対話では、これまでに様々なキーワードやイノベーション創出環境事例についてスポットを当ててきました。その中で、「シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(4.ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦)」の回において、ニューヨークにおける「コワーキングスペース(Coworking Spaces)」の利用について紹介し、対話のポイントともなりました。今回は、その深堀として、コワーキングスペースを取り上げる会となりました。

話題提供者の佐藤法仁URAは、前述の「ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦」の振り返りとともに、コワーキングスペースについて説明。働く場の共同利用という視点から異分野交流が生まれ、かつ加速されている点やコワーキングスペースをビジネスとして用いることで利益を得る点などについて、事例をもとに紹介しました。さらには日本の大学、特に研究環境で流行っている「共用スペース」との大きな違いや研究環境の閉鎖性、小さく細かく仕切った間取りのデメリットなどについても話題を提供しました。

佐藤URAは、「ニューヨーク、特に中心地であるマンハッタン島は地価が高いため賃料が高騰しており、ベンチャー企業には手が届かない。しかし働く場を共同利用化することでベンチャー企業や数人で起業を目指すグループなどが、中心地でオフィスを利用することができる。このコワーキングスペースの利点は、単に労働を行う場という点ではなく、さまざまな人と共に創造性のある議論を交わせたり、またそのような人たちが交わることができる“異分野融合の場”が実践形成されている点にある。ただ、自然科学系の実験などを行うものには向かず、ITなどクリエイティブ関係やデータ関係の仕事に向いている。中にはフリーの人たちが資金を出し合ってコワーキングスペースを利用する場合もある。他方で、単に不動産会社がコワーキングスペースをビジネスとして提供するのではなく、一般のお店(飲食店)がコワーキングスペースを提供する場合もある。例えば夜から開業するお店は、日中はお店を閉めているため、この時間帯を利用してコワーキングスペースとして開放している。もともと食事ができる設備が整っている飲食店であり、昼食などもその場で提供、とることができる。時にはイベントをそのまま夜のお店でやることある。コワーキングスペースの利用者も提供者もWin-Winの関係である」など、事例をもとに紹介しました。

また、「共用スペースはメリットもあるが、個となる狭い空間から出て来て、一時的に開放空間に触れるというものであり、その開放空間で誰かと共に作業(仕事)をするという流れにはならず、また再び個となる狭い空間に戻る。また日本の大学の多くの実験室や研究室というものが、いくつもの壁で細かく分断されている。○○研究室、××研究室のように一室一室持つことのメリットはもう失われており、共同・共創というイノベーションの芽を摘んでいるかもしれない」と話題を提供しました。
参加者からは、実験を行う際の環境のあり方やコワーキングスペースが大学で作ることができるのかなど、さまざまな視点で対話。まだアメリカでも都市部にしか浸透していないコワーキングスペースについて、わが国でもどのようにすれば使いこなせるかなどの意見を出し合いました。

コワーキングスペースは、研究者や教員などの従来の働き方を変える“種”となるかもしれません。この種がイノベーション創出環境の強化促進につながるのかは、まだ未知数の点があり今後もコワーキングスペースだけではなく、従来の働き方を含めたあり方について考えていく必要があると思われます。

<過去開催>

第1回 オープンイノベーション(Open Innovation) 大学と企業の関係:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/09/open-innovation.html

第2回 大学発ベンチャーの“企業”としての自立化:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_25.html
第3回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(1.シリコンバレーのハブ機能):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_30.html
第4回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(2.シリコンビーチ台頭の兆し):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html
第5回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/3.html
第6回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(4.ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/4.html
第7回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(5.ドイツIndustry4.0の挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/01/5industrie40.html

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

0 件のコメント:

コメントを投稿