2018年7月15日日曜日

【情報発信】血液検査でANCA血管炎の再発が予測可能に!~MPO-ANCAの陽転に着目して~

好中球(白血球の一種)を標的とする異常免疫物質ANCAが引き起こすANCA関連血管炎は、細い血管を傷つけ、多臓器不全を引き起こすこともある難病で、高齢者を中心に増加しています。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の渡辺晴樹助教と佐田憲映准教授、東京女子医科大学医学部の針谷正祥特任教授らは、このANCA関連血管炎の予後改善において、好中球の細胞質に含まれる酵素タンパク質ミエロペルオキダーゼ(myeloperoxidase、MPO)に対する自己抗体MPO-ANCAを測定することの重要性を明らかにしました。

MPO-ANCAは医療機関において血液検査で測定でき、本研究ではANCA関連血管炎の経過中にMPO-ANCAが陽性になる患者は、陰性のままの患者に比べて約26倍、病気の再発が多いことが明らかになりました。

本研究成果は5月22日、米国リウマチ学会の機関紙「Arthritis & Rheumatology」のOriginal Articleとして掲載され、Wileyのニュースweb(Wiley’s Research Headlines)でも紹介されました。
本研究成果は、MPO-ANCAの定期的な測定によってANCA関連血管炎の再発が予測できることを示唆するものであり、患者の生命予後や生活の質の改善に役立つ可能性が期待されます。


◆発表のポイント
  • 細い血管を傷つけるANCA関連血管炎が高齢者を中心に増加しています。
  • 同疾患の治療中に、血液中の特定の酵素タンパク質に対する自己抗体MPO-ANCAが陽性になった患者は、陰性のままの患者に比べ再発が多く認められました。
  • 血液検査によるMPO-ANCAの定期的な測定が、ANCA関連血管炎患者の予後改善につながる可能性があります。


今回の我々の研究結果はANCA関連血管炎診療の一助になると思います。
診療データを提供くださいました患者さんおよび研究にご協力くださいました各施設のスタッフの皆様に御礼申し上げます。
引き続き患者さんのための研究を続けていきたいと思います。

渡辺晴樹 助教


■論文情報
論 文 名:Association between reappearance of myeloperoxidase‐antineutrophil cytoplasmic antibody and relapse in antineutrophil cytoplasmic antibody‐associated vasculitis: Subgroup analysis of nationwide prospective cohort studies掲 載 紙:Arthritis & Rheumatology著  者:Haruki Watanabe, Ken-Ei Sada, Yoshinori Matsumoto, Masayoshi Harigai, Koichi Amano, Hiroaki Dobashi, Shouichi Fujimoto, Joichi Usui, Kunihiro Yamagata, Tatsuya Atsumi, Shogo Banno, Takahiko Sugihara, Yoshihiro Arimura, Seiichi Matsuo, Hirofumi Makino, For Japan Research Committee of the Ministry of Health Labour,Welfare for Intractable Vasculitis (JPVAS) Research Committee of Intractable Renal Disease of the Ministry of Health Labour, Welfare of JapanD O I:10.1002/art.40538.
U R L:Association between reappearance of myeloperoxidase‐antineutrophil cytoplasmic antibody and relapse in antineutrophil cytoplasmic antibody‐associated vasculitis: Subgroup analysis of nationwide prospective cohort studies


<詳しい研究内容について>
血液検査でANCA血管炎の再発が予測可能に!~MPO-ANCAの陽転に着目して~


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
腎・免疫・内分泌代謝内科学
助教 渡辺 晴樹
(電話番号)086-235-7235
(FAX)086-222-5214


http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id549.html

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