2020年5月12日火曜日

【情報発信】非常時に大学の研究者はどのような研究を行ったのか? 『帝国大学における研究者の知的基盤 ―東北帝国大学を中心として』刊行

◆発表のポイント
  • 大学の研究者たちが戦時研究という形で戦争遂行のために協力をしていたことが明らかになってきていますが、どのような思想背景のもとに協力してきたのかは明らかでありませんでした。
  • 本書は戦前・戦時期という非常時に研究者はどのような研究を行ったのか?その思想的背景は何だったのか?を〈知的基盤〉という視座から解き明かした論考です。
 
 
第二次世界大戦下に実施された学徒出陣、学徒動員や科学技術動員のもとで、帝国大学の研究者・学生、教育・研究環境すべてが戦時研究体制に取り込まれて行ったという状況の解明は深化してきています。しかしこれまでの研究では、戦時期という非常時において、研究者たちがいかなる思想的背景のもとに対応していたのか、明らかになっていませんでした。

この研究状況を踏まえ、本学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の吉葉恭行教授、本村昌文教授、東北大学学術資源研究公開センター史料館の加藤諭准教授を中心としたプロジェクトチームは、戦時期という非常時に研究者たちはどのような対応を取り、それらはいかなる思想的背景によっていたのか、「知的基盤」という視座から明らかにすることを試みました。そしてその研究成果をとりまとめた論文集『帝国大学における研究者の知的基盤――東北帝国大学を中心として』を編集し、こぶし書房から3月31日に刊行しました。

今、大学とその研究者たちは、「軍事研究」といかに向き合うべきかという問題に直面しています。また東日本大震災時の福島原発事故を契機として、原発との向き合い方についての議論が再燃したことも記憶に新しいところです。非常な事態において大学の研究者はいかなる判断・行動をすべきなのか。「知的基盤」という新たな視座から研究者の思想的背景を解き明かす本書の試みは、この古くて新しい問いを再考するうえで有用なものと考えられます。
 
 
◆研究者からのひとこと
本書は、科学史、日本史、日本思想史、教育史といったさまざまな分野の研究者が、大学の研究者の「知的基盤」というキーワードを軸として論考をまとめた学際研究の成果です。今回は東北帝国大学の事例が中心ですが、今後は対象とする大学を増やし、時期も戦前・戦後と広げ、「知的基盤」がいかに変容してきたのか(しなかったのか)、さらなる展開を目指しています。
吉葉教授


<詳しい研究内容について>
非常時に大学の研究者はどのような研究を行ったのか? 『帝国大学における研究者の知的基盤――東北帝国大学を中心として』刊行


<お問い合わせ>
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科
教授 吉葉 恭行
(電話番号)086-251-7440 (FAX)同左



https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id719.html

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