2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行して来ました。またAAAS(American Association for the Advancement of Science)が提供する、世界最大規模のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」を利用し、世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、岡山大学異分野基礎科学研究所の墨智成准教授らの脳の学習や記憶に関係する海馬興奮性シナプスにおける長期増強/長期抑制発現機構の統一的理解について紹介しています。
これまで、脳の学習や記憶の形成に関わる海馬興奮性シナプスの長期増強(LTP)と長期抑制(LTD)を統一的に説明する分子機構は未解明でした。墨准教授らは、海馬興奮性ニューロンの後シナプスにおけるAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)の「能動的」輸送過程を正確に再現した大規模数理モデルを提案し、それに基づくシミュレーション実験を行いました。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体を介して後シナプスに流入するカルシウムイオン濃度の多寡に依存した「シナプトタグミン1/7によるエキソサイトーシス」および「PICK1によるエンドサイトーシス」の競合が、シナプス後膜上のAMPAR数を増減させ、その結果としてLTPおよびLTDが誘導されることを明らかにしました。
今回の研究成果は、LTPおよびLTDへの関与が特定されているタンパク質(並びに複合体)の、AMPAR輸送システムにおける役割や、1分子計測によって観測されているさまざまな側面を、包括的に理解・説明するための分子基盤となることが期待されます。
岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示すリサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学を構築し、「岡山から世界に新たな価値を創造し続けるSDGs推進研究大学」となるため、強みある医療系分野などの国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も本学から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場が求める革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。
Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.82:Making memories—the workings of a neuron revealed.
<Back Issues:Vol.74~Vol.81>
Vol.74:Rising from the ashes-dead brain cells can be regenerated after traumatic injury (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授、山下徹講師)
Vol.75:More than just daily supplements-herbal medicines can treat stomach disorders (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)高原政宏医員)
Vol.76:The molecular pathogenesis of muscular dystrophy-associated cardiomyopathy (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)片野坂友紀講師)
Vol.77:Green leafy vegetables contain a compound which can fight cancer cells (大学院環境生命科学研究科(農学系)中村宜督教授)
Vol.78:Disrupting blood supply to tumors as a new strategy to treat oral cancer (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)河合穂高助教)
Vol.79:Novel blood-based markers to detect Alzheimer's disease (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授)
Vol.80:A novel 3D cell culture model sheds light on the mechanisms driving fibrosis in pancreatic cancer (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 狩野光伸教授&大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)田中啓祥助教)
Vol.81:Innovative method for determining carcinogenicity of chemicals using iPS cells (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 妹尾昌治教授&杜娟博士)
<参考>
・「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
・岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」
【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
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