2024年6月10日月曜日

入れ子状にした物質への光照射で生じる新しいエネルギー現象を観測〔筑波大学、岡山大学、広島工業大学、レンヌ大学、東京工業大学、名古屋大学、東北大学、JST〕

 

国立大学法人筑波大学、国立大学法人岡山大学、学校法人鶴学園広島工業大学、レンヌ大学、国立大学法人東京工業大学、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学、国立大学法人東北大学、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の共同研究成果プレスリリースです。
 

 

 

 

<発表のポイント>

  • カーボンナノチューブを窒化ホウ素ナノチューブで包んで入れ子状にした筒形の構造体に光を照射すると、両者の間に電子の抜け道が発現することを発見しました。超高速光デバイスの開発や光照射で生じる電子などの超高速操作、デバイスの効率的排熱など、幅広い分野への応用が期待できます。

 

 

◆概 要

 近年、厚さが1原子分しかない層状や筒状の材料(低次元材料)を重ねると、新しい性質が発現することが報告されています。こうした構造体の静的な性質、例えば電気伝導特性などは数多く調べられていました。しかし、光を照射することで生じる層間の電子移動や、その後に続く原子の運動など動的な性質については、ほとんど調べられていませんでした。


 本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)を窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)で包み、入れ子にした筒状の構造体を合成し、そこに光を照射した時に生じる電子と原子の運動を観測しました。電子の運動については、光の照射によって生じる瞬間的な分子構造や電子構造の変化を10兆分の1秒の精度で捉えられる広帯域の超高速過渡透過率測定で観測しました。また原子の運動については、1兆分の1秒の精度で観測可能な超高速時間分解電子線回折法を用いて観測しました。


 その結果、異種の低次元材料を重ね合わせると、電子の抜け道(チャネル)が発現することを発見しました。さらに、CNTに光を当てることで生じた電子が、このチャネルを通してBNNT中に移動することが分かりました。この励起された電子のエネルギーは、BNNTの中で熱エネルギーへと速やかに変わるため、熱エネルギーを極めて速く輸送することが可能となります。


 本研究により、二つの異なる物質の界面で生じる新しい物理現象が明らかになりました。この現象は、熱エネルギーの超高速輸送に加え、超高速の光デバイス開発や、光照射で生じた電子や正孔の超高速操作などさまざまな新技術に応用できる可能性があります。

 

 本内容は、2024年6月3日に公開されました。

 

カーボンナノチューブ(CNT)と窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)のファンデルワールスヘテロ構造体とそのエネルギー輸送現象(内側がCNT、外側がBNNT)

カーボンナノチューブ(CNT)と窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)のファンデルワールスヘテロ構造体とそのエネルギー輸送現象(内側がCNT、外側がBNNT)

 

 

◆研究代表者
 筑波大学数理物質系/エネルギー物質科学研究センター  羽田 真毅 准教授
 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域  鈴木 弘朗 研究准教授
 広島工業大学工学部環境土木工学科  大村 訓史 准教授
 レンヌ大学理学部物理学科  ロマン ベルトーニ 准教授

 


◆論文情報
【題 名】Photoinduced dynamics during electronic transfer from narrow to wide bandgap layers in one-dimensional heterostructured materials.(光照射によって生じる一次元ヘテロ構造体のナローギャップ層からワイドギャップ層への電子移動に伴う動的構造計測)
【著者名】齋田 友梨(研究当時 筑波大学大学院生)、トマ ゴーティエ(レンヌ大学大学院生)、鈴木 弘朗(岡山大学 研究准教授)、大村 訓史(広島工業大学 准教授)、四方 諒(研究当時 筑波大学大学院)、岩崎 ゆい(筑波大学大学院生)、野山 豪大(筑波大学大学院生)、岸淵 美咲(研究当時 岡山大学大学院)、田中 祐一郎(同)、矢嶋 渉(研究当時 筑波大学大学院生)、二コラ ゴダン(レンヌ大学)、ゲール プリバール(研究当時 レンヌ大学)、徳永 智春(名古屋大学 助教)、小野 頌太(研究当時 東北大学 准教授)、腰原 伸也(東京工業大学 教授)、鶴田 健二(岡山大学 教授)、林 靖彦(岡山大学 教授)、ロマン ベルトーニ(レンヌ大学 准教授)、羽田 真毅(筑波大学 准教授)
【掲載誌】Nature Communications
【掲載日】2024年5月30日
【DOI】10.1038/s41467-024-48880-3

 

 

◆研究資金
 本研究は、科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業<JPMJFR211V>「高コヒーレンス・極短パルス電子線創出によるナノ構造体の動的構造解析の新展開(代表者:羽田 真毅)」、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金基盤研究(B)「THz波ポンプ電子線回折プローブ実験系の開発と物質の強電場誘起現象の開拓的研究(代表者:羽田 真毅)」、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))「超高速回折法と分光法の相補利用で見るファンデルワールスヘテロ構造のエネルギー輸送(代表者:羽田 真毅)」、特別推進研究「光と物質の一体的量子動力学が生み出す新しい光誘起協同現象物質開拓への挑戦(代表者:腰原 伸也)」などの支援を受けて行われました。

 

 

◆詳しい研究内容について
 入れ子状にした物質への光照射で生じる新しいエネルギー現象を観測

 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r6/press20240603-2.pdf

 

 

 

 

◆本件お問い合わせ先

<研究に関すること>
 羽田 真毅(はだ まさき)
 筑波大学数理物質系/エネルギー物質科学研究センター 准教授
 TEL: 029-853-5289
 URL: https://hadamasaki.com

<取材・報道に関すること>
 筑波大学広報局
 TEL: 029-853-2040

 岡山大学総務・企画部広報課
 TEL: 086-251-7292

 広島工業大学鶴学園広報部
 TEL: 082-921-3128

 東京工業大学総務部広報課
 TEL: 03-5734-2975

 東海国立大学機構名古屋大学広報課
 TEL: 052-558-9735

 東北大学金属材料研究所情報企画室広報班
 TEL: 022-215-2144

 科学技術振興機構広報課
 TEL: 03-5214-8404

<JST事業に関すること>
 加藤 豪(かとう ごう)
 科学技術振興機構創発的研究推進部
 TEL: 03-5214-7276

 

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

 

 岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
 岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
 岡山大学統合報告書2023:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001926.000072793.html

 岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
 岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
 岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/RWn63i20xIw

 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2024年4月期共創活動パートナー募集中:
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002079.000072793.html
   
 岡山大学「THEインパクトランキング2021」総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
 岡山大学『大学ブランド・イメージ調査2021~2022』「SDGsに積極的な大学」中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
 岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください

 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002248.000072793.html

 

0 件のコメント:

コメントを投稿