2014年3月28日金曜日

【産学官・異分野】イノベーションの未来を拓く処方箋12 ー クラウドファンディング(Crowdfunding)と知的財産ー

イノベーション創出が強く求められている中で、その環境の中でイノベーションの“鍵”となるキーワードついて対話を行う会「イノベーションの未来を拓く処方箋」を本学津島キャンパスで開催しました。

前回の第11回では、「共感から共創へ 夢を実現するクラウドファンディング(Crowdfunding)”という方法と題して対話会が開催され、わが国ではまだまだ知られていない「クラウドファンディング(Crowdfunding)」についての対話を行いました。
この対話の中では、研究や実験などの社会の人達にとっては難しいキーワードをクラウドファンディングのプロジェクトに上げ、共感を生み、資金を集める中で共創(プロジェクト共創)へと牽引する効果的なプロセスについて対話が行われました。また対話の中では、クラウドファンディングのプロジェクトにおける知的財産の取扱についても対話が広がり、第11回内では収まりきらなかったため、今回の第12回「クラウドファンディング(Crowdfunding)と知的財産」として継続して対話を行うことになりました。ファシリテーターは前回に引き続き、本学の佐藤法仁学長特命(研究担当)・URAが務めました。

対話会のはじめに佐藤URAからクラウドファンディングに関係する知的財産の概要について紹介を行いました。「クラウドファンディングのプロジェクトをWeb上で公開した際、その時点でプロジェクトのアイデアは公開情報となる。つまり、特許の権利を主張することができなくなる。クラウドファンディングにおける特許、例えばアイデア特許などはプロジェクト公開前に行っておくことが原則である。またこのプロジェクトのアイデアは自分が考えたと思っていても、すでに誰かが考えており、既に特許にしているかもしれない。その場合は、相手から訴えられることもある。特に商標権の場合は厄介である」とクラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げる前の知的財産の確認の重要性を説明しました。


その後の対話では、一般的なクラウドファンディングのプロジェクトから大学における、特に自然科学系研究のクラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げる際の課題について議論が行われました。
議論の中では、創薬などの部分を除いたものつくり分野について検討。前回で紹介したクラウドファンディングの実施方法(寄付型、購入型、投資型、貸付型)において条件が異なることなどにも触れつつ、プロジェクトを立ち上げる際の諸規定をしっかりと明記しておく重要性について、さまざまな意見が出されました。さらには、これらの諸規定について、大学の契約担当組織・者がクラウドファンディングに対応した仕事の進め方(制度改革)を行う必要についても意見が出されました。

会の最後に挨拶した佐藤法仁URAは、「クラウドファンディングの対話会は1回で終わると思っていたが、2回シリーズとなり今回の知的財産の話だけでも、数多くの意見、対話が行われた。それだけクラウドファンディングに対する関心が高いと言えるかもしれない。クラウドファンディングはお手軽さがあるので、研究者でも手を出しやすいが、プロジェクトが成立すれば約束履行の義務が生じる。研究の場合、どこまですれば約束履行の義務が果たせたのかはプロジェクト概要に明記することだけではなく、資金を投じる多くの人たちの理解が必要である。人によっては、約束履行を果たしていないと感じる人も出てくる。そのため大学、あるいは研究者がクラウドファンディングを行う際は、大学組織として統一した取り決めなどを整備し、構成員がそれを理解しておく必要がある」と挨拶し、今後の制度改革の必要性についても述べました。

クラウドファンディングに関する対応は、岡山大学でもまだ議論がされていません。アメリカではクラウドファンディング企業であるKickstarterなどに注目が集まり、多額の投資資金を集めながら大きな成長を遂げており、その波は近いうちにわが国にも波及することでしょう。また、本格的に始動しはじめた日本のクラウドファンディング企業も触発され、わが国におけるクラウドファンディングは大きな市場となり、誰もが手軽にプロジェクトを立ち上げらえるものとなると思われます。クラウドファンディングは、本シリーズで取り上げた「オープン・イノベーション(Open Innovation)」の流れにもリンクする点ですが、今回の対話でも出された大学としてきちんとした取り決めやバックオフィスの整備が必要だと思われます。また、クラウドファンディングを行う企業との包括連携協定などを結ぶ可能性も十分に視野に入れて対応を進めることも考えられらます。今後、継続してクラウドファンディングの議論は行う必要があると思われます。

クラウドファンディングの知的財産の取扱について、事例をもとに説明する話題提供者の佐藤法仁学長特命(研究担当)・URA。大学組織と教職員のクラウドファンディングに対する理解と制度改革の必要性についても紹介しました。


<過去開催>

第1回 オープンイノベーション(Open Innovation) 大学と企業の関係:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/09/open-innovation.html

第2回 大学発ベンチャーの“企業”としての自立化:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_25.html
第3回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(1.シリコンバレーのハブ機能):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_30.html
第4回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(2.シリコンビーチ台頭の兆し):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html
第5回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/3.html
第6回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(4.ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/4.html
第7回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(5.ドイツIndustry4.0の挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/01/5industrie40.html
第8回 共用スペース?いえ違います“コワーキングスペース”です:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/02/blog-post_37.html
第9回 社会問題をイノベーションで解決 “ソーシャル・イノベーション(Social Innovation)という方法:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/03/social-innovation.html
第10回 IPOやM&Aがゴールではない 持続可能なベンチャーを目指して:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/03/ipom.html
第11回 共感から共創へ 夢を実現するクラウドファンディング(Crowdfunding):https://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/03/crowdfunding.html

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html

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