2014年3月3日月曜日

【産学官・異分野】イノベーションの未来を拓く処方箋9 ー 社会問題をイノベーションで解決 “ソーシャル・イノベーション(Social Innovation)”という方法 ー

「岡山大学シーズ・ニーズ創出強化イノベーション対話プログラム2013」では、事業の名前が意味するように「イノベーション(Innovation)」がひとつの“鍵”となっています。しかし、「イノベーション」とはどのようなものでしょうか。「イノベーション」という言葉をヨーゼフ・シュンペーターが形作ってから1世紀が経過しましたが、その時間の中でイノベーションを創出する環境はさまざまに入れ替わりました。その環境の中でイノベーションの“鍵”となるキーワードついて対話を行う会「イノベーションの未来を拓く処方箋」(第9回)を本学津島キャンパスで開催しました。

第9回目となる今回の対話のお題目は、「社会問題をイノベーションで解決 “ソーシャル・イノベーション(Social Innovation)”という方法と題して行われました。
「ソーシャル・イノベーション(Social Innovation)」とは、社会が抱えている課題をターゲットにして、その課題解決のために従来の課題解決方法を用いるのではなく、まったく異なる発想のもと、革新的技術、思考、政策などを用いてドラスティックに解決する過程を指します。特に企業活動においては、利益第一主義ではなく、利益が少なくとも先ずは社会課題を解決することで企業価値を高め、解決した社会を新たなマーケットとして開拓して行く企業活動も含まれます。今回の対話では、この「ソーシャル・イノベーション(Social Innovation)」の可能性と大学での活用について対話する場となりました。

会の話題提供者は、自らも社会課題解決に重きを置いた案件に投資を行っている投資家(社会投資家)としての側面を持つ、本学学長特命(研究担当)・URAの佐藤法仁が務めました。
はじめの話題提供として佐藤URAは、企業がその価値を高めるための活動について、社会貢献やフィランソロピー活動などの事例を紹介。また社会投資家がどのような判断で社会投資をするのかなどについて、個人の多様な経験をもとにしたひとつの見方を話題として提供。さらには発展途上国に目が向けられがちなソーシャル・イノベーションですが、実は日本やアメリカなどの先進国に対しても行われるべきものであることを、国内外の事例をもとに紹介しました。

佐藤URAは、「社会課題を解決するという行動は、何も企業に限ったことではなく、社会投資家からすると大学の研究開発も十分にその対象となる。また対大学である場合は、自然科学系や医歯薬学系だけに偏らず、人文・社会科学系に対しても魅力的な投資対象となる。これまでODA(政府開発援助)では企業だけではなく、研究機関も多大な協力をして来た実績がある。また日本やアメリカ、EUなどの先進国においても社会課題は山積しており、そのためソーシャル・イノベーションの対象は全世界となる。大学がソーシャル・イノベーションという方法を理解し、うまく活用することで大学の価値を高めるだけではなく、外部資金の獲得、学生の社会起業家(Social Entrepreneur)や社会投資家(Social Investor)としての育成貢献、多様な国内外ネットワークの構築など、多くのメリットを生む。もちろん課題もあり、ソーシャル・イノベーションを行う教員の評価方法や投資対象としての大学、特に国立大学は認められない制度的課題などがある」と、国内外の事例をもとに話題を提供し、参加者らと対話を行いました。

参加者らは、特に教員評価が論文のインパクト・ファクター(Impact Factor:IF)やh-Index、学会などの学術界での評価など、狭い範囲でのものであり、社会課題を解決するという行動、あるいは研究活動に対して評価を高める重要性について議論がおこなわれました。また、現行の国立大学法人法の制度の課題の洗い出しの必要性や高度な専門人材の育成を担う大学・大学院において、社会起業家や社会投資家を育成することの重要性と、そのあり方などについても広く対話が交わされました。

社会課題を解決するという行動は、学術の歴史と重なり、また科学においては、その多くが社会課題を解決することに専念されてきた歴史があります。実は大学は企業よりもソーシャル・イノベーションのシーズを数多く抱えている組織であるかもしれません。このシーズをソーシャル・イノベーションに導くデザイン思考をより研ぎ澄ますシステムを大学が持つことで、イノベーション創出の大きな担い手となるかもしれません。現在、国連でも社会課題解決に向けた議論が行われており、また世界各国・地域でも同様の議論や活動が行われています。これらの動きと連動することで、大学の存在価値を高め、未来に継ぐ機関になると思われます。

投資家(Social Investor)としての活動経験から、ソーシャル・イノベーション(Social Innovation)の可能性と大学が社会課題解決に挑むために取り組むべき制度改革について事例をもとに話題提供を行う佐藤法仁学長特命(研究担当)・URA。学問と科学は社会課題の解決と高い親和性があり、ソーシャル・イノベーションとの連動は大学の存在価値を高める重要なキーワードになると紹介しました

<過去開催>

第1回 オープンイノベーション(Open Innovation) 大学と企業の関係:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/09/open-innovation.html

第2回 大学発ベンチャーの“企業”としての自立化:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_25.html
第3回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(1.シリコンバレーのハブ機能):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/10/blog-post_30.html
第4回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(2.シリコンビーチ台頭の兆し):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html
第5回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(3.イノベーション大国になりつつあるイスラエルの活動):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/3.html
第6回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(4.ニューヨークのイノベーション好循環への挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2013/11/4.html
第7回 シリコンバレーだけじゃない世界のイノベーション創出(5.ドイツIndustry4.0の挑戦):http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/01/5industrie40.html
第8回 共用スペース?いえ違います“コワーキングスペース”です:http://okayama-univ-ura-sn2013.blogspot.jp/2014/02/blog-post_37.html

国立大学法人岡山大学:http://www.okayama-u.ac.jp/index.html


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