2020年6月23日火曜日

【情報発信】光合成能力を高めるマグネシウム輸送体を世界で初めて発見

◆発表のポイント
  • マグネシウム(Mg)は植物の必須元素で、特に光合成の維持に重要です。今回の研究で、イネにおいて葉緑体にマグネシウムを輸送する輸送体OsMGT3を同定しました。
  • OsMGT3は主に葉肉細胞の葉緑体の内膜に局在し、細胞内のマグネシウムを葉緑体に輸送する役割を担います。光合成のカギ酵素であるルビスコと同調して、発現の日周性を示します。
  • OsMGT3を過剰発現させると、光合成活性が向上しました。将来作物生産性の向上に応用できます。


岡山大学資源植物科学研究所馬建鋒教授の研究グループと福建農林大学の陳志長教授の研究グループは共同で、イネの葉緑体へのマグネシウム輸送を司る遺伝子OsMGT3を世界で初めて突き止め、光合成の活性維持に必要なマグネシウムの輸送機構を解明しました。本研究成果は6月15日ロンドン時間16:00(日本時間16日0:00)、植物科学のトップジャーナル「Nature Plants」にOnlineにて公開されました。

マグネシウムは植物の必須元素で、さまざまな生理機能を持っています。特に全マグネシウムの15-35%が葉緑体に局在し、光合成色素であるクロロフィルの中枢に含まれます。また光合成のカギ酵素であるルビスコをはじめ、多くの酵素の活性発揮に必要な補助因子としての機能を持っています。
本研究ではイネの葉緑体へのマグネシウム輸送を担う輸送体OsMGT3を同定しました。
OsMGT3が葉肉細胞の葉緑体内膜に局在し、マグネシウムを細胞質から葉緑体へ輸送することを突き止めました。さらに、OsMGT3の発現は日周性を示し、ルビスコの活性変動と一致していることを見出しました。この遺伝子を過剰発現すると、イネの光合成活性が向上することも分かりました。
本研究成果は、植物の光合成能力向上のための新たなアプローチを提示しました。将来作物の生産性の向上などへの応用が期待されます。
 
◆研究者からのひとこと
今回報告したOsMGT3に関する研究は元教え子が在学中に始めた仕事です。10年近くかかり、OsMGT3が光合成の活性維持に必要であることを突き止め、大変うれしく思います。今後この遺伝子を活用して、作物の光合成の能力の向上、ひいては収量の増加につなげることを期待しています。
馬 建鋒教授


■論文情報
論 文 名:Diel magnesium fluctuations in chloroplasts contribute to photosynthesis in rice掲 載 紙:Nature Plants著  者:Jian Li, Kengo Yokosho, Sheng Liu, Hong Rui Cao, Naoki Yamaji, Xin Guang Zhu, Hong Liao, Jian Feng Ma* and Zhi Chang Chen* (*共同責任著者)D O I:doi:10.1038/s41477-020-0686-3U R L:https://www.nature.com/articles/s41477-020-0686-3


<詳しい研究内容について>
光合成能力を高めるマグネシウム輸送体を世界で初めて発見


<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
教授  馬 建鋒
(電話・FAX)086-434-1209



http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id729.html


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