- 過去20年間(1997-2016年)の死亡統計データより、日本国内における非結核性抗酸菌感染症の死亡率動向を算出しました。
- 60歳以上の高齢者では、女性の粗死亡率が年々増加傾向であることを明らかにしました。
- 特に、研究期間の最後の3年間(2014-2016年)においては、女性は結核感染症よりも非結核性抗酸菌感染症の死亡数が上回ることを解明しました。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科総合内科学の萩谷英大准教授の研究グループは、これまで未解明であった日本国内における非結核性抗酸菌感染症の死亡率動向を、死亡統計データに基づき明らかにしました。
本研究は、同講座の大塚文男教授および同大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科 狩野光伸教授の指導の元、岡山市立市民病院の原田洸医師(研究当時は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科総合内科学所属)、同大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の舩橋智子大学院生、同大学大学院医歯薬学総合研究科の小山敏広助教との共同研究で行われました。
結核菌感染症は、世界三大感染症としてよく知られており、疫学調査や診断技術/治療薬の開発対象として注目されてきました。一方で、非結核性抗酸菌感染症はいまだ不可解な部分が多く、現代における日本人の死亡原因にどの程度関与するかが分かっていませんでした。
本研究グループは、過去20年間(1997-2016年)における日本国内の非結核性抗酸菌感染症による死亡者数を調査し、統計学的に解析しました。その結果、男性に比べて女性の死亡率が際立って増加傾向であることを明らかにしました。さらに、近年においては、女性における非結核性抗酸菌感染症の死亡者数は、結核感染症による死亡者数を上回ることが分かりました。
本研究成果は、6月18日に米国の医学誌「Clinical Infectious Diseases」(Impact Factor 9.117)に掲載されました。
◆研究者からのひとこと
統計学や感染症、性差に注目した内分泌学的視点から考察を行ったことで臨床的に意義深い論文となり、感染症のトップジャーナルへの掲載に繋がったと思います。各分野のスペシャリストの先生方にご指導を頂けたことを大変ありがたく思います。 | 原田洸医師 |
今回は多くの研究者とのコラボレーションが重要だったと思います。また、データサイエンスという新たな武器で臨床的な課題に関する知見を世界に発信できたことをうれしく思います。 | 小山敏広助教 |
普段は総合内科・感染症を専門として患者さんの診療を行う傍ら、感染症に関係する様々な研究を行っております。2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的アウトブレイクは感染症の脅威と感染対策の重要性を私たちに知らしめました。これからも感染症の領域で世界に役立つ情報を発信し続けたいと思います。 | 萩谷英大准教授 |
■論文情報
論文名:Trends in the nontuberculous mycobacterial disease mortality rate in Japan: A nationwide observational study, 1997-2016掲載紙:Clinical Infectious Diseases著 者:Ko Harada, Hideharu Hagiya, Tomoko Funahashi, Toshihiro Koyama, Mitsunobu R. Kano, Fumio OtsukaDOI:10.1093/cid/ciaa810
<詳しい研究内容について>
日本国内における非結核性抗酸菌感染症の死亡率動向を解明~高齢女性における死亡率が上昇傾向~
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
総合内科学 准教授 萩谷 英大
(電話番号 086-235-7342
(FAX)086-235-7345
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id738.html
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