岡山大学研究推進機構は9月29日、「第76回岡大SDGsサイエンスカフェ」をオンラインで開催しました。
岡山大学では、2006年から本学の研究者が最新の科学を分かりやすく解説する「岡大サイエンスカフェ」を10年以上にわたって開催。現在では、毎回100人を超える来場者でにぎわう人気イベントとなっています。
76回目となる今回は、前回に引き続き、「岡大SDGsサイエンスカフェ」と題し、SDGsに関連しかつ市民の方の関心が高いと考えられるテーマを取り上げました。より多くの研究に触れていただくため、2部構成とし、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、オンラインで開催しました。
第1部は、「『ゲノム編集』作物が開く未来の可能性」をテーマとし、岡山大学資源植物科学研究所(IPSR)の久野裕准教授が登壇。講演では、(1)ゲノム編集は、目的のDNA配列・遺伝子を変更することが可能な技術であり、医療や農業など幅広く活用されていること、(2)ゲノム編集技術を用いれば、短期間で目的の品種を作ることができること、(3)外来のDNA配列を除去することも可能であるため、ゲノム編集技術で作られた作物は、突然変異で自然発生した作物と本質的には変わらないことなどを解説しました。
自身が現在、ビールなどの原料となる大麦について、種子休眠の長短のバランスを調節する遺伝子をゲノム編集技術によって変更し、穂発芽等の農業被害を防ぎ、品質を向上させる研究に取り組んでいることも紹介。今後、地球温暖化などの影響により、持続的な農業の実施や陸上環境の保全のためには、迅速な植物改良技術が必要とされており、それにはゲノム編集技術が大きな可能性を持つと指摘しました。
第2部は、「遺伝子パネル検査とは?-がんゲノム医療最前線-」と題して、岡山大学病院ゲノム医療総合推進センターの冨田秀太准教授が講演。2015年1月、当時のオバマ米国大統領が一般教書演説でがん細胞を遺伝子レベルで解析し、最適な治療を行う「がんゲノム医療」に取り組むことを表明した「プレシジョン・メディシン・イニシアチブ」を発表して以降、わが国でもがんゲノム医療推進の機運が高まり、2018年には岡山大学病院が「がんゲノム医療中核拠点病院」に選定され、2019年11月からは同病院において、保険診療による「がん遺伝子パネル検査」の受付を開始したことを紹介。がんの原因は遺伝やウイルス、紫外線などにより遺伝子・ゲノムの変異が引き起こされ、細胞が無秩序に増殖・転移することにあり、「がんは患者ごと・細胞ごとに多様であり、同じがんであっても原因となる遺伝子はさまざまで、対応する治療法も異なるが、がんゲノム医療により、原因となる遺伝子を特定しより効果の高い治療法を選択することが可能となった」と説明しました。
さらに、岡山大学病院では、がん遺伝子パネル検査に携わる多職種のスタッフの人材育成に取り組んでいることなどに触れ、今後、がんゲノム医療が進歩し、すべての遺伝子を検査できるようになれば、さらに適切な治療法を選択できるようになると話しました。
講演は、一般の方や学生など約200人の申込みがあり、初のオンライン開催となりましたが、チャットを用い、講演者と参加者の間で、従来よりも活発な質疑応答が行われました。
【参考】
●岡山大学×SDGs
●岡山大学×SDGs
「遺伝子改変技術でストレスに強いオオムギを作り出す」
●久野准教授の所属する資源植物科学研究所ゲノム多様性グループのホームページ
●岡山大学×SDGs
「ゲノム医療従事者の養成とゲノム医療の普及」
●岡山大学病院 臨床遺伝子診療科 がんゲノム医療外来
●ひと目で分かるがんゲノム医療の流れ
●がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会 報告書
●「国内完結型マルチプレックスがん遺伝子パネル検査」が厚生労働省の先進医療に承認され、岡山大学病院で12月1日から開始されています。詳しくはこちら(11月26日付プレスリリース)
【本件問い合わせ先】
岡山大学研究推進機構
TEL:086-251-7112
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id9879.html
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