◆発表のポイント
- 先天性の筋疾患である中心核ミオパチーは、骨格筋の収縮に必要な筋組織の構造(T管)に生まれつき異常があり、筋力や筋緊張の低下が起こる難病です。
- 本研究では、T管の形成が異常になるプロセスを試験管内および細胞内再構成系を用いて解析し、ミオパチーの発症機構を明らかにしました。
- 本研究の成果は、難病である中心核ミオパチーの新たな治療法や創薬開発に役立つことが期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科生化学分野の藤瀬賢志郎大学院生、竹田哲也助教、竹居孝二教授らと、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部の大久保真理子研究員、野口悟室長、西野一三部長の共同研究グループは、先天性筋疾患である中心核ミオパチーにおいて、骨格筋の収縮に必要な筋組織の構造である「T管」の形成異常が起こる仕組みを解明しました。本研究の成果は11月13日、米国生化学分子生物学会(The American Society for Biochemistry and Molecular Biology)の国際科学誌「Journal of Biological Chemistry」に掲載されました。
中心核ミオパチーは、骨格筋の先天的な構造異常により筋力が低下する筋疾患で、根治的な治療法がありません。骨格筋は高度に組織化された器官で、神経細胞を介して脳からのシグナルが伝達され、筋収縮が起こります。T管は、神経細胞からのシグナルを筋細胞深部にまで伝える役割を持ちますが、中心核ミオパチーの患者で、T管の形成異常が起こるメカニズムは明らかになっていませんでした。
研究グループは、試験管内や培養細胞内でT管構造を再構成する実験系を確立し、中心核ミオパチーでT管の形成異常が起こる仕組みを解析しました。その結果、細胞膜を「切る」機能を持つダイナミンが、細胞膜を「曲げる」機能を持つBIN1と相互作用し、T管を安定化する新たな機能を発見しました。
一方、中心核ミオパチー型のダイナミン変異体は、細胞膜を切る活性が高まり、T管が正常に形成されなくなることを明らかにしました。本研究で用いた研究手法や得られた研究成果は、中心核ミオパチーの早期診断法や治療法、創薬開発に役立つことが期待されます。
◆研究者からのひとこと
| 藤瀬大学院生 竹田助教 竹居教授 |
■論文情報
論 文 名:Mutant BIN1-Dynamin 2 complexes dysregulate membrane remodeling in the pathogenesis of centronuclear myopathy
掲 載 紙:Journal of Biological Chemistry
著
者:Kenshiro Fujise, Mariko Okubo, Tadashi Abe, Hiroshi Yamada, Ichizo
Nishino, Satoru Noguchi, Kohji Takei* and Tetsuya Takeda*
(*Corresponding authors)
D O I:10.1074/jbc.RA120.015184
U R L:https://www.jbc.org/content/early/2020/11/13/jbc.RA120.015184.long
<詳しい研究内容について>
先天性ミオパチーの発症メカニズムを分子レベルで解明!~骨格筋の難病の診断・治療法開発に光~
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
助教 竹田哲也
(電話番号)086-235-7125
(FAX)086-235-7126
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
教授 竹居孝二
(電話番号)086-235-7120
(FAX)086-235-7126
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター総務課 広報係
(電話番号)042-341-2711(代表)
(FAX)042-344-6745
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id797.html
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