2020年12月30日水曜日

【情報発信】「消えては結ぶ磁気の渦」ノーベル賞予言に迫る渦と反渦の観察 磁気模様の直接観察に世界で初めて成功

◆発表のポイント

  • 2次元性の強い磁性結晶K2CuF4で渦と反渦の磁気模様が対を成して現れる様子を観察しました。
  • 電界放出透過型電子顕微鏡を用いて超高感度の磁気構造解析を摂氏-269度近くの極低温で行いました。実施可能な施設は我が国にしかありません。
  • 観察結果は2次元系物質が示す相転移現象の特徴と整合していますが、更なる検証が必要です。
  • この物理現象は1970年代に理論予言され2016年にノーベル物理学賞が授けられましたが、理論模型となった磁性体では実験報告がありませんでした。

 

岡山大学異分野基礎科学研究所の秋光純特任教授、大阪府立大学の戸川欣彦教授、放送大学の岸根順一郎教授らの研究チームは、株式会社日立製作所と共同で、2次元性の強い磁性結晶において渦と反渦の磁気模様が対を成して現れる様子を直接観察することに世界で初めて成功しました。

“消えては結ぶ磁気の渦”は結晶が磁性を示すようになる温度をまたいで観察されます。この観察結果は、半世紀前に理論予言され2016年にノーベル物理学賞が授けられながらも、これまで実験が報告されていなかった“磁性体における2次元系特有の相転移現象”を示している可能性があります。

物質が示す多彩な相転移現象に潜む普遍的な性質を明らかにする基礎学術的に重要な研究成果であり、日本物理学会が発刊する「Journal of the Physical Society of Japanl」誌に12月7日に掲載されました。


◆研究者からのひとこと

なかなか、ambitious なテーマで、まだ議論の余地のある結論なのですが、大きな橋頭保の一歩を築いたと思っています。出来たらこのgroup でゆるぎない結論にまでもっていきたいと思っています。
秋光純教授
物質評価・試料作製・観察・データ解析・物理的解釈の各段階で大変な苦労があり共同研究者の総力を結集した研究成果となっています。どの研究でも同じですが、喜びもひとしおです。御礼申し上げます。
戸川
欣彦教授
磁性体における「渦と反渦が織りなす相転移現象」は、実験的な検証がないまま誰もが信じる現象として“確立”しています。今回、この不思議な渦の形成を直視できたことは大きな進歩だと思います。
岸根
順一郎教授


■論文情報
論 文 名:「Formations of Narrow Stripes and Vortex-Antivortex Pairs in a Quasi-Two-Dimensional Ferromagnet K2CuF4
掲 載 紙:日本物理学会誌「Journal of the Physical Society of Japanl
著  者:Yoshihiko Togawa, Tetsuya Akashi, Hiroto Kasai, Gary Paterson, Stephen McVitie, Yusuke Kousaka, Hiroyuki Shinada, Jun-ichiro Kishine, and Jun Akimitsu
D O I:10.7566/JPSJ.90.014702
U R L:https://doi.org/10.7566/JPSJ.90.014702

<詳しい研究内容について>
「消えては結ぶ磁気の渦」ノーベル賞予言に迫る渦と反渦の観察 磁気模様の直接観察に世界で初めて成功

<お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所 
特任教授 秋光 純
(電話番号)086-251-8632



https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id793.html

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